「情報を先取り、タブーに挑戦」を編集方針とし、生活者・企業経営者に
最新かつ有益な情報価値をご提供する、北海道の地域政治・経済誌

ロゴ

トップページ > インタビュー

Interview

このエントリーをはてなブックマークに追加

「ホップ・ステップ・肉離れ」の“菅おけ”内閣に
国政は任せられない
掲載号:2011年3月

photo

田中康夫 新党日本代表 衆議院議員

 革新的だった「脱ダム宣言」からはや10年余。常にものごとの本質を突き、切れ味鋭い発言で注目される新党日本代表の田中康夫氏。日増しに混迷の度が深まる民主党政権について、さらに今春おこなわれる道知事選をバッサリ斬る。

労働組合と政経塾は極めて似ている

――新党日本は昨年6月から、亀井静香代表の国民新党と衆議院で統一会派を結成しています。与党の一員ではありますが、民主党政権には一定の距離をおいていますね。この間の民主党のさまざまな変節をどう見ていますか。
田中 できないならできない理由を明らかにし、まずは国民に謝る。そして、こうしたいという話をしなければならないのに、ホップ・ステップ・肉離れという不思議な三段活用をやっていた人たちは、まったくそういう感覚がない。
私は改造前の菅直人内閣を“仙・菅ヤマト内閣”と呼んでいましたが、改造ではお年寄りばかりが出てくる。みんなの党の渡辺喜美さんは「廃材内閣」と名づけていましたが、私は「菅おけ内閣」ではないかと思いますね。
――迷走する菅内閣ですが、どこに起因していると思われますか。
i2田中 私は政権が変わる以前から、労働組合の人と政経塾の人というのは、水と油なのではなく、極めて似通っているなと感じていました。労組の人は、現場からの積み上げだとおっしゃるけれども、実は現場に出ていない、官僚と同じような体質の人が決めた方針を、さも下から積み上げたかのように、形骸化した手続きを踏んできて「異議なし」となさる。政経塾の人も、ビジネススクールのようにケース・スタディというけれども、その通りに世の中が動くわけがない。
その意味でいうと、両者とも実態に即していない「ノーメンクラツーラ」(旧ソビエト連邦における指導者選出のための人事制度を指す言葉:編集部注)であると。ノーメンは、まさに「能面」。人間の体温や心の機微を感じさせない。
――菅さんの言葉も国民には響きません。
田中 菅さんは1月13日の民主党大会の挨拶(あいさつ)で、毎年200億円をかけて待機児童をゼロにすると話しました。でも国民のみなさんはそれを聞いても絵が浮かばないと思うんですね。
私は長野県知事のときに宅老幼所というものをやりました。どうしてお年寄りのデイサービスの建物は、みんな新築で田んぼの中にあるのか。新築でなければ国はお金を出さないからです。しかし、駅前には空いた店舗がある。農村の集落には空き家がある。なぜバスに揺られて遠くの施設まで行かねばならないのか。空き家を直すには、100平方メートル以上だと避難用の緑のランプをつけなければいけないとか、台所は防火にしなければいけないとか、何だかんだと600万円くらいかかると。ならば国が出さなくても県が800万円出すことで宅老所にしよう。そこに保育士の資格を持った人がいれば宅老幼所だと。つまり子育てが終わって、もう一度保育士をやろうと思っている人の雇用の場になる。最寄りの集落で小さい子どもとお年寄りが一緒にご飯を食べて昼寝をすれば、これこそ世代分断型ではない姿です。これは絵に浮かぶ。ところが菅さんがいくら「200億円かけます」と言っても何も見えないわけです。そこに国民の落胆があると思う。
――国民新党と新党日本はどんな国づくりを。
田中 大平正芳さんが言っていた「田園都市国家」のような哲学が必要だと思います。これまでは田園と都市は、保守と革新、老人と若者、中央と地方などに象徴される二項対立論の中で語られることが多かった。でもそうではありません。それぞれに集落があるわけで「ALWAYS 三丁目の夕日」を見て、みんな目頭が熱くなるのはそこに体温があるからです。それは東京も北海道も同じ。東京はこれからどんどん限界集落になっていくわけです。表面で見える建物の具合などではなく人と人との絆。そこをどう訴えるのか。それがどういう変化をもたらすのか。そこを言える政治家がまだ現れていないのだと思います。私や亀井さんの力不足でもあります。

TPPへの参加は開国ならぬ壊国だ

――いまの政権にはまったく何かをやり遂げようという覚悟が感じられません。
田中 おっしゃる通り。菅さんは朝5時から書類を読んで大変だと言いますが、どんな小さな会社の社長さんだって血を吐く思いだろうし、中間管理職だって同じですよ。私が知事になったとき、長野県は利息だけで1日1億3000万円ずつ増えている状態でした。そんなこと誰も知りません。それを言ったら、県民を不安に陥れると議会は怒る(笑)。でも知事はすべてを背負わなければならない。いまの民主党にはそういう覚悟はないのでしょうね。
――国の一般会計予算は増える一方です。特別会計も含めた予算の組み替えはできないんですか。
田中 八ツ場ダムを例に取りましょう。8800億円といわれている事業費の8割は使っていますが、ダムの本体工事は始まってもいません。進んでいるのは取り付け道路。その予算は国土交通省の河川局から出ています。まず道路の予算は道路局に組み替える。これは国交省の予算を他の省にもっていくというのではない。道路はつくると。非常に小さくても、それが組み替えですよ。一方ダム本体は、これをつくっても洪水なんか防げないどころか、そもそもの計算が違う。計算をやり直すことで中止すればいいんです。
――TPP(環太平洋連携協定)問題の対応も危うさを感じます。
田中 「平成の開国」と言っているようですが、日本は貿易立国だと小学校から習っていますよね。それを今まで鎖国していたかのごとく言うのは変でしょう。日本の貿易立国のあり方で改める点があるのなら改めればいい。ちなみに新党日本は「改める」国で「改国」という言葉を使っています。しかし、いま菅さんたちがやろうとしている「かいこく」は、「開く」でも「改める」でもなく“こわす”「壊国」なわけです。
自由貿易ということでは二国間のFTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)があります。例えるなら、二国間EPAは札幌・円山公園を周回するジョギング。しかし、いまの日本は、大通公園のウオーキングもまともにできていない。にもかかわらず、フルマラソンに参加するというのがTPPなんですよ。
これは農業の問題だけではないんです。マスコミの人にも言うんですが、TPPはすべての関税をゼロにするということだから、金融も保険も医療も、さらには電波・放送も自由になるということ。リチャード・マードックが日本のテレビ局を買うことをあなた方は喜ぶ覚悟を持っているんですかと。
もっと言えば、非関税障壁撤廃ということだから、ニセコ町の公共事業の入札も、オーストラリア人云々以前に、極論すれば町のホームページに公共事業の入札情報全部、英語表記も出さなければならなくなるかもしれない。それでアメリカの業者が来るわけはないけれど、とにかく米語にしようということ。早い話がアジアの米連邦化です。そこまで日本は覚悟を持っているんですか。どうしてそういう想像力、洞察力がないのかね。
――韓国などはTPPに入っていませんね。
田中 韓国はアメリカやEU、中国、ASEANとも、みんなFTAを結んでいます。いままでサボってきた日本は申し訳ありませんと、自民党のせいとは言わずに、現政権が謝らないといけない。そして、自由貿易をやっている国とは、いまから1年以内にFTAを結びますと言うべきだと思いますよ。

知事選びは有権者もリスクを負え

――4月は道知事選。長野県知事の経験もある田中さんにお聞きします。ズバリ知事の資質とは。
田中 その人にどういう哲学があるか、どういう覚悟があるかということでしょうね。有権者は知事候補者に提言もしてほしいと思っているのに、そういうことをする人は、ピラミッドの上にいる利権分配の人からすると都合が悪い。霞が関出身者が首長にふさわしいと言われるのは、行政経験があるからということらしいけど、その結果がこの閉塞状況。いまや行政経験は負の財産なんです。だけどそういう人のほうが自分で決断しない。前例踏襲型だから利権分配の人からすると有難いということです。
――毎度のことですが、有権者の意識が問われます。
田中 有権者のほうもリスクを負わないと。JCの会合なんかに呼ばれて行くと、必ず自主憲法とか言っているわけ。一方で地元のことになると、自分たちの仲間の中で突破者みたいのが知事選に立つといっても、いや、親父が会議所の関係で現職を推しているから表に出られないとか逃げる。足元のことでリスクを負うことをしない。憲法がどうのこうのなんて全然リスクのない話です。北海道の財界がいい意味で二分するくらいなことにならないと新しいうねりは出てこない。マスコミなんかは混乱だと騒ぎ立てるでしょうが、それが政権交代だし、だめなら変えればいいだけです。
――北海道活性化の処方箋は。
田中 私は30年前から、北海道は1時間の時差をつくれと言っています。当時、何かのシンポジウムで旭川に行ったとき、その話をしたら舛添要一氏にバカにされましたけどね。
北海道に時差をつくって、日本がサマータイムを導入すれば、夏時間、北海道はシドニーよりも1時間早くなります。そこに為替市場と証券市場をつくれば世界で一番早く開く市場となる。新千歳空港が24時間運用になれば、例えばANAはいま、沖縄に夜、日本の荷物を持っていって、そこからアジアに朝一で飛ばすということをやっています。今後、極東ロシアとの経済交流はどんどん盛んになる。新千歳はアンカレジと争う貨物の中継点になれる可能性もあるんです。つまりシンガポールから北米への貨物便は、いまでもアンカレジに降りている。それを千歳にする。さらに欧州とアメリカの荷物を千歳に降ろして、そこからアジアに飛ばす拠点にもなる。
――時差の議論はよく出るんですが、外圧でことごとく、とん挫しています。
田中 それは政治家がやらないとだめですよ。時差をつくって独立国的なものにするというのは、言うだけではなく実際にやってみなきゃ。これは新しいものをつくる話じゃない。いまあるものを使って世界の拠点になる、交差点の外交ができるようになる。
――田中さんは昨年10月、札幌出身の女性と結婚し、北海道とも近しい間柄になりました。道知事選に興味は。
田中 いやいや(笑)。

=ききて/鈴木正紀=