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Interview

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「オール日本のため北海道のポテンシャルを生かそう」掲載号:2011年1月号

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上田文雄 札幌市長

上田文雄札幌市長が言行ともに活動的だ。特に最近は、北海道全体や日本全体を視野に入れた発言が目立っている。新春恒例のこのインタビューでも“上田節”は快調。新幹線、HAC、姉妹提携、経済界との関係、市電問題などを忌憚なく語った。

財源論ばかりが先行しても…

――北海道新幹線の札幌延伸に積極的に取り組んでいらっしゃいますが、状況は厳しいようですね。
上田 12月4日に新青森まで新幹線が開通します。この日は私も青森まで新幹線の一番列車をお迎えに行き、札幌をPRしてきます。新函館までは5年後と決まっていますが、札幌までの開通時期はまだ未定です。
新幹線の札幌延伸が厳しい状況にあることはご指摘のとおりです。最大の問題は財源です。それで国鉄共済の年金引当金の剰余金が1・4兆円ほどあるといわ れており、いまの財政状況ではあてにできる財源がそれしかないのかもしれませんね。鉄道軌道系の交通機関に転用できるように法改正していくのが、最も無理 のないやりかただろうと思います。
自民党が議員立法という形で出そうとしているようですが、オール北海道で党派を超え取り組みたいと考えています。日本の今後の発展を考えますと、北海道を活用することが早い段階で実現すれば、国家戦略、国際戦略として極めて有効なことと思います。

i13函館ー新函館館の在来線の問題に対しても、報道によると知事がJRに何とか再考できないか働きかけるということですが、この問題は札幌延伸のハードルの1つにもなっていますので、真剣に解決に向け話し合わなければならないと思いますね。
――民主党政権になって札幌延伸に急ブレーキがかかっています。民主党に人脈をお持ちの上田市長にここは頑張ってもらいたい。
上田 財源、財源と、そのことばかり言って、戦々恐々としているのが現実ではないでしょうか。北海道 に対する認識も十分ではありません。いま開拓という言葉が適切かどうかわかりませんが、北海道で行なわれてきた後発的な開発は、北海道人のためだけにやっ てきたわけではありません。オール日本で北海道を活用し、そのポテンシャルを生かすべきです。頭ではみなさんわかっていることだと思いますが、そのことの 比重が非常に軽く見られていると思います。
即戦力を期待しすぎです。すぐカネにしたいという意識が強すぎます。例えば、科学技術の研究費が削られたり、文化予算まで削っていく。新しい政権下でカ ネに困っても、そこはやっちゃいけないじゃないかという気持ちですね。将来に対する長期的な投資をしっかりすべきだと思います。北海道をどうやって新しい 経済圏にしていくかというダイナミックな発想が頓挫しているのが残念です。
――国交省の北海道局をなくす動きに反対ですか。
上田 賛成できませんよ。「オレたちのことをどうしてくれるんだ」という議論には与みすることはできませんが、国土全体の有効活用を考えると、北海道の開発はまだ必要だと思います。

道庁のやり方にも異議あり

――丘珠空港の有効利用とHAC問題についてはどう考えていますか。
上田 新幹線もHACも、北海道全体に対する問題なんですね。こういう問題を議論するときに、道庁に は「みんなで考えよう」「みんなで力を合わせて困難に立ち向かおう」という思想や思考習慣がないことを憂いながら、今回のHAC問題で発言してきたつもり です。困難な状況にあるときほど、みんなで力を合わせなければいけないのに、道の幹部があらかじめ青写真を書いて、決めたから「このとおりやれ」とか「こ う協力してくれ」という議論の進め方は、早くやめるべきです。
今回のHAC問題も、円卓会議でもいいから「この北海道をどうするのか」ということを話し合うチャンスだったと思います。だから「関係市町村を集めて議 論しましょうよ」と言ったのだが、いまだに「見通しが立たないからやらない」というのが道の姿勢です。見通しが立たないからみんなで知恵を出し合いましょ うと言っているのに…。その中で丘珠空港のあり方も議論するべきだと思います。
――そういう中でも一致点が見いだされ。

上田 こういう決め方は不本意ですよ。ただ、北海道の議論の進め方を変えることができなかったのは残念ですが、時間がない中で「札幌市は最大限できることはこれしかないよ」と言わざる得ない状況でした。
道の発想としては、札幌のスタンスが決まらなきゃどこにも話できないということでしたが、大きな町であっても小さな町であっても、自治の担い手という立場は変わらないわけですから、札幌ばかりを重視するのはおかしいと思います。
――そこで丘珠空港の位置づけですが…
上田 道が「札幌のために」とおっしゃるので、私はいつもカチンと来る。「札幌のために丘珠空港に集 約しましょう」とおっしゃるのだが、「それは違う」と何度言ってもわからない。必ず<RUBY CHAR="枕詞","まくらことば">に来るんですね。違う。札幌の機能は全道のためにつくられているので、その機能を生かすため、使いこなすた めに高速輸送機関がどうしても必要なんだ。そういう意味で北海道のために丘珠空港がどういう役割を果たすのか、札幌がどう貢献できるのかという視点で物を 考えるべきです。
道は道民税を徴収しているにもかかわらず、小さな町にまでカネを寄こせと言ってはダメですよ。
医療機関の集積、先進的な意志形成をする拠点、あるいは経済・ビジネスの拠点として役に立つため、丘珠空港が機能すべきだと思います。特に、全道の地域医療をサポートするためにも、丘珠空港は重要な役割を果たしています。

殴った側も不幸な気持ち

――姉妹提携など、諸外国との交流を積極的にやっていますね。
上田 韓国の大田との姉妹提携は、観光分野で直ちに効果が出てくると思います。中国とは尖閣の問題な どで政治的な問題で浮き沈みというか、ブレがあるので、すぐ経済効果が出るか難しい面もあると思います。しかし、違いがあるということ、お互いの国の歴史 的な背景や文化に違いがあればこそ、交流が必要だと思います。違いを乗り越えよう、お互いを理解しようという力が出てきます。相手をおもんばかることで、 クリエーティブなイマジネーションが生じます。
文化芸術のクリエーティブシティー、アイデアシティーを札幌市は目指していますが、そのことと理念、コンセプトは一緒だと思います。ただちにそれが経済効果につながるかは分かりませんが、間違いなくそういった発想は新たな経済のチャンスを生み出していくと思います。

ミュンヘン、ポートランド、瀋陽、ノボシビルスクとの関係もそういったチャンスを秘めています。また、大田との姉妹提携では、歴史的な評価はさまざまあ るのは承知していますが、国と国の関係で100年前に日韓併合という抑圧をした事実から目をそらさず語り合う姿勢を私は示しました。相手方に率直に喜んで いただきましたし、それをこれからの出発点にできればと思います。
われわれは戦後に生まれているから直接的な責任はないわけですよ。「それなのになんで謝らなきゃならないの」という意見があるのも承知しています。韓国 の人たちも直接やられた人たちはもう少なくなっています。しかし、彼らには被害者感情があり、私たちも直接の加害者じゃないけど、なんとなくうしろめたい 感情があります。これはどうしようもない気持ちですね。
私は中学生のとき、1度だけ人を殴ったことがあって、その後味の悪さが生涯残っています。級友の引きつったようなおびえた表情が私は忘れられない。人を力で抑圧したときの感性がゾッとするほど嫌だった。
だから、韓国の人にもそのことをわかってほしいんですね。被害者だけが被害者じゃない。加害者も被害者なんだと。お互い過去の過ちというのは、どうしよ うもない避けようもないものを背負っているということです。しかし、そのことから逃げないで仲良くしていくことが大事なのではないでしょうか。

経済界との関係も良好

――市長になって2期8年を全うしようとしていますが、経済界、産業界との関係はどうなっていますか。
上田 市長になるまで弁護士として仕事をしていた人間ですので、それまでは世の中の半分くらいの人たちとしか付き合いがなかった。しかし、札幌市政のトップに立つということは、あらゆる人と情報を共有し、1番いい方法を選択することです。
市長になった最初は違和感を持って私を見ていた方もオープンにお付き合いし、札幌のためにともに頑張ることで、私の気持ちも、私という人間も理解してい ただけるようになったと思います。経済界や産業界のみなさんとは真摯なお付き合いをしています。私はみなさんに感謝しています。
――新幹線誘致でも経済界と一緒に頑張っています。
上田 道経連が提唱した「北海道フード・コンプレックス国際戦略総合特区」も、都市間連携の問題でもあり、経済界と行政がしっかり手を取り合っていく運動でもあります。北海道の可能性を広げていくためにも、夢のあるいい話だと思いますね。
――市電の延伸ですが、市民の声を聞き、有識者、経済界と話を詰めているところだと思いますが、いつごろ方向が決まりますか。
上田 南1条地区開発事業推進連絡会議のみなさんが11月25日、南一条通に路面電車の路線を敷けということと、地下歩行空間の整備などを求める要望書を出されます。
11月28日、12月5日、12月19日の3日間、「路面電車の活用を考える市民会議」(100人規模)を開催します。無作為抽出した市民5000人に 会議の案内文を送付し、希望者の中から決定した100人が、10月に開催した市民会議の意見や、観光客・商業者などの視点を踏まえ、路面電車の課題と可能 性について議論します。また、会議の1日目には、市民や団体の意見発表を聞く「オープンヒアリング」を行ないます。市民会議で出された意見は、今後の札幌 市の検討に生かしていきます。
私が市長に就任した2003年には、駅前地下歩行空間をどうするか、創成川通の連続アンダーパス工事などが計画としてあったが、本当に必要なのかを検証 し実施しました。駅前地下歩行空間の工事が2011年3月に終わりますが、周辺のビルだけではなくいろんな経済効果が出てきています。そして、創成川イー ストには若い起業家が進出していますし、狸小路も活性化しています。次は市電と南1条通のうまい活用が必要になってくると思います。

=ききて/酒井雅広=