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Interview

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「でかけよう北海道」を
持続的な“復興”につなげる
掲載号:2019年1月

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平子裕志 全日本空輸社長

全日本空輸(ANA)では「でかけよう北海道」プロジェクトを実施している。北海道胆振東部地震後、多くの企業や団体に呼びかけてスタートした同プロジェクトについて、平子裕志社長を直撃した。北海道路線の位置付け、事業展望なども聞いた。

風評被害を懸念、北海道は大丈夫と発信

――2018年9月6日に北海道胆振東部地震が起きました。

平子 大規模地震は当社としても過去、何度か経験しています。そのため、トラブルが起きた場合、それにどう対応するかということは常に想定しています。

ただ、今回の地震は震源地が新千歳空港の近くだったため、空港機能が長期的にマヒをしてしまう危険性もありました。

震災発生時にベトナム出張中だった私は、スケジュールを1日早く切り上げて、まずは東京本社に戻りました。本社では震災当日から複数の対策会議を立ち上げ、対応にあたりました。

本業の航空運送事業への影響も心配しましたが、実は震災の翌週に、当社主催の男子ゴルフツアー「ANAオープンゴルフトーナメント」を控えていました。当社の一大イベントでしたが、開催の可否を検討しました。

――結果、ANAオープンは中止となりました。

平子 余震への懸念があり、電力供給も不安定だったため、選手、お客さま、ボランティアの方々、関係者などが、安心してプレーしたり、観戦したりすることができないと判断しました。残念でした。

私は震災の翌週早々、北海道に入り、ツアー中止の説明とおわびのため、関係先をまわりました。そのとき、多くの方々に「英断でしたね」と言っていただき、救われた気がしました。

――賞金の一部である1億4000万円を義援金として被災地に寄付しました。

平子 開催の準備はすでに進んでおり、多くの企業から協賛金もいただいていました。「もし、よければ、協賛金を震災復興への義援金にさせていただきたい」という旨を企業にお伝えしました。

すると、31社に賛同していただきました。感謝しています。当社分の賞金を含め、一刻も早い復興への活動につなげることができたことは、よかったです。

――ANAでは9月末、送客キャンペーン「でかけよう北海道」プロジェクトをスタートさせました。

平子 2年半前の熊本地震と同様に、風評被害という大きな心配がありました。そのため、お客さまに来てもらって、見てもらって、「北海道は大丈夫だよ」と感じてもらいたい。そして、SNSなどで発信、または周囲に伝えてもらうことが、効果的だと考えました。

「でかけよう北海道」を打ち出し、道内発着路線の運賃値下げやパック旅行の設定など、多くの人が来やすい取り組みを実施しています。このほか、インバウンドに対しても、当社の訪日旅客専用運賃「ANA Discover JAPAN Fare(ディスカバージャパンフェア)」も半額にするなどしています。

――10月15日には「“でかけよう北海道”の集い」をホテルニューオータニ東京で開催しました。

平子 高橋はるみ知事、吉川貴盛農林水産大臣、田端浩観光庁長官をはじめ、政財界、観光業界の関係者など、300人近い方にご出席していただきました。官民一体となって、「北海道を盛り上げるぞ!」という機運につながったと感じています。
「でかけよう北海道」プロジェクトは、ANAグループだけでなく、その趣旨に賛同していただき、多くの企業、団体と取り組めていることに感謝しています。

――震災後の北海道路線の搭乗客数に影響は。

平子 確かに需要は急速に減りました。当社としては9月は対前年比で25%減でした。しかし、10月は10%弱減、11月はほぼ前年並みに近づきました。12月はおそらく前年を超える水準で推移しています。

単純に人数だけでみると、回復基調ですが、政府のふっこう割の影響などもあり、一時的に需要が増えているとも分析しています。

当社の「でかけよう北海道」プロジェクトも、まずは需要の導火線にならないといけないということで、実施しました。

プロジェクトは3月末でいったん、終了予定ですが、一方で、私の気持ちとしては、“本当”の需要が戻ってくるまでは続けたいとも考えています。それが持続的な復興につながっていくと思っています。

ネットワーク拡大を常に意識して

――北海道路線の魅力は。

平子 ANAでは、道内10空港39路線、1日118往復を飛ばしています。当社の国内線収入の約2割を占め、大きなマーケットという位置付けです。

10月15日の会合でも「いても、たってもいられない気持ちで、プロジェクトを立ち上げた」と挨拶しました。これは本当に正直な気持ちです。

当社は18年で設立66年を迎えましたが、設立2年後に北海道路線を三沢経由で飛ばしました。それだけ関係の深い地域で、当社としても思い入れが強いです。

北海道は47都道府県の中で、圧倒的な広さを持ち、東西南北でとってみても、いろいろな顔をしています。エリアによって、自然、産物もまったく異なります。

夏は冷涼な気候で、冬は雪、流氷などもあります。それに食、温泉、スポーツなど、旅行客に対する魅力をたくさん抱えています。

そのため、インバウンドにも受け入れられており、今後も日本国内のインバウンド需要は増えていくと予測されています。政府も訪日外国人を20年に4000万人、30年に6000万人という目標を掲げています。私ども航空会社としても当然、貢献したいと考えています。その中で、北海道は重要なエリアです。

――ANAとして今後、力を入れていく事業は。

平子 航空路線を増やすことは、エアラインとして、大事な戦略です。チャンスのあるところには、航空ネットワークを広げていくことを常に意識しています。そのために、機体を購入し、運航乗務員を含めた人的リソースを整えていきます。

ネットワークの拡大は自身の努力だけで、なかなか実現できない部分もあります。当然、空港の整備がともないます。当社では中期計画の中で、羽田空港、成田空港を中心とした国際線ネットワークの拡充も掲げています。

一方、ANAグループにはピーチアビエーションとバニラエア、2社のLCCがあります。両社は首都圏の発着枠よりも、需要開拓のため、地方空港からの国際線展開に取り組んでいます。あるいは大きな空港を中心とした国内線の拡大を図っています。

両社は19年度末をメドに統合する予定です。現在、ピーチは関西空港を、バニラは成田空港をベースにしています。2つの空港をベースにする航空会社が出来上がるというわけですから、より効率化を図ることができ、当社としてもより強力な戦力になるのではないかと感じています。

「ANA、ピーチ、バニラによる需要のカニバリゼーション(自社による競合)はありませんか?」と、よく質問されますが、現状ではほとんどありません。

グループとしては、ANAのフルサービス、ピーチとバニラのLCC――この2つのブランドを有することが戦略的に、いまも、これからも航空ネットワークの拡大につながっていくという考えです。一方、今後も他航空会社とのコードシェアもおこなっていきたいと考えています。

――18年、イギリスの航空業界の格付け会社「スカイトラックス社」からの「5スター」を6年連続で受賞しました。

平子 航空運送事業のクオリティーをいま以上のものにしていくというのは基本だと思っています。

――航空運送事業以外で注力していくことは。

平子 宇宙航空事業、アバター事業などです。当社はヘリコプター会社が原点で、そこからいま、旅客機あるいは貨物機を運航する会社になっています。

今後、10年、20年、30年、50年先を見たときに、いまの形態からよりいろいろな形の派生形が出てくるのではないかと思っています。たとえば、それがドローンだったり、いま「空飛ぶタクシー」も話題になっていますが、そういった形に変わることも考えられます。 

いろいろ可能性を追求しながら事業展開できたらと思っています。

「でっかいどう北海道」を体感

――社長就任から1年以上が経過しました。

平子 ANAでは1日1000便を就航し、平均すると15万人のお客さまを毎日お運びしています。ですから、一便一便、安全運航を継続することの大切さを感じています。

いまANAグループは約4万人の従業員がいるのですが、その大半は航空事業に従事しています。彼らとその意識を共有しながら、取り組んでいます。

――北海道とのつながりは何かありますか。

平子 ANAでは1977年に「でっかいどう北海道」というキャンペーンを実施したことがありました。私が大学1年生のときに聞いたキャッチフレーズなんですが、これがすごく頭に残りました。当時はまだANAに入社するとは思っていなくて。

その2年後、大学3年生のときに、友人4人で、友人の車を交代で運転して、1週間かけて北海道1周旅行をしました。カムイ岬、増毛、層雲峡、網走、サロマ湖、知床半島、羅臼、ウトロ、釧路湿原……。

支笏湖の近くにあるオコタンペという湖をいまだに強く覚えています。道民のみなさんも意外と知らないと思うんですよ。旅行の際、キャッチフレーズの言葉が頭に浮かび、「でっかいどう北海道」というイメージそのものでした。

=ききて/竹内洋規=