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Interview

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「『ええもん安い』を実現する仕入れ・店舗運営の秘訣」掲載号:2009年3月

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林 紀男 イズミヤ社長〈日本チェーンストア協会会長〉

(はやし・のりお)1942年9月5日生まれ、和歌山県出身。65年阪大法学部卒業、同年住友銀行(現三井住友銀行)入行。91年7月審査第4部長、95年10月常務取締役、98年5月代表取締役専務を経て、99年4月にイズミヤ顧問に。同年5月副社長、2001年2月から現職。07年5月から日本チェーンストア協会会長。

イズミヤは、その先進的な経営が業界関係者の間で広く知られる関西流通業者の“雄”だ。そんな同社もバブル崩壊後、経営不振に陥った時期がある。それを見事に立て直したのが林紀男社長だ。林社長に流通業界のこれからと企業戦略について聞いた。

グリーンニューディールを働きかけてゆく

--------先日の日本チェーンストア協会の会合で、今年の取り組みとして3つの重点項目を挙げたそうですが。
1つは食に対する取り組みです。昨年は食の安全にからむさまざまな事件があり、食品への信頼が損 なわれました。われわれがやってきた対策は消費者への情報提供です。ただ、われわれが提供できる情報には限りがあります。行政からも消費者に対し、正確な 情報を迅速に提供してくれるよう関係機関に働きかけていく。一方で「安全・安心」の名の下に、規制の強化が懸念されます。行政には、無用な表示の強制な ど、過剰な規制を回避するように併せて要請していきたい。
食でもう1つ大事なのは農業生産の持続可能性を求めていくということ。これはいくつかの取り組みが現実に進んでいます。例えば地産地消がそうですし、農業生産法人をつくるという動きもそうです。そういうことを含め1次産業の活性化に力を入れていく。
2つ目は地球温暖化防止など環境に関する課題です。現在、レジ袋削減を進めており、レジ袋有料化・マイバッグ持参運動を展開中です。現在、20都道府県で540店舗が有料になっていますが、これをさらに拡大していきます。
CO2の排出量規制では、グリーンニューディールの推進を政府に働きかけていく。例えば、CO2排出抑制型の冷蔵庫を導入したり、店舗の壁面を緑化する などといったことに対し、行政から補助が出るようになれば、われわれも投資をしますし、機械メーカーや建設業界など他の業界も潤い経済も活性化します。
3つ目は協会活動の見直しです。従来は、行政がかける規制について緩和を求めることなどが中心でした。しかし、規制反対ばかりでは、会員にとってメリットが少ない。これからは需要をつくっていく創造型の活動を進めていこうと考えています。
--------林社長はイズミヤの経営立て直しに手腕を発揮してきましたね。
 1999年4月1日に当社に来るまでは、住友銀行の専務として不良資産の整理をしていました。
当社に移ってきた当時は、業績的には厳しいものがありましたが、前職に比べてヘビーな問題はなかった。業績が厳しかったのは、同業他社に比べ関東進出が 遅れたことに加え、進出した矢先にバブルが崩壊したことに原因があります。家賃契約の高い店舗が残った。拡大路線で雇用数もふくらませており、当時正社員 数は3850人前後いました。
それで経費と従業員の数を減らしいくことで収益改善を図った。現在、当社の正社員数は2600人です。
前向きな話では、新業態としてスーパーセンターを展開しました。現在、6店舗ありますが、売り上げでは350億円ぐらいです。併せてプライベートブランドの確立など、商品開発にも力を入れました。
--------いま、関東に店舗は。
5店舗あります。
--------北海道への出店は考えていないのですか。
ないですね。横山さん(アークス)のところなど、強い企業がいっぱいいますからね(笑)

最大のサービスは価格を下げること

--------商品戦略として北海道や他地域の一次産品生産者と提携する可能性は。
関西では北海道の一次産品に対する消費者の関心が非常に高い。われわれの店でも北海道フェア的な ことは、頻繁にやらしてもらってます。現状では経常的な仕入れルートとしての北海道というのはあるんですが、個別の生産者との提携までには至ってません。 ただ、将来的になら、魚介など生鮮は難しいですが、農産品なら十分にあり得るでしょう。
当社のOB会が、大阪府の所有している休農地を借りて野菜を生産しています。「ゴールドファーム活動」と言って大阪の都市部の農業空間を活性化させる取り組みで、農林水産省の「都市農地活用・保全モデル事業」に認定され補助金も出ています。
最初は自分たちの健康のためにという自主的な活動からスタートし、そこから『おいしい野菜を食べたいね』という話になり、現在の形になった、大阪の有休 荒廃地も活性化できるし、店から出る食品廃棄物をたい肥化することで資源の有効活用になる。さらに作った野菜を店で売ることで地産地消にもなります。そう したさまざまなメリットがワンパッケージになっていることが、この活動の大きな特徴です。
橋下徹大阪府知事も強力にバックアップしてくれており、ここでつくられた野菜は“おおさかもん(大阪産)”であることを前面に出して売っています。大阪 市内の2店舗に常設販売コーナーを設置していますが、お客さんの反応は極めていい。そうした商品の発掘というのは、やっていかなければならないと思いま す。
--------販売戦略で心がけていることはないですか。
小売業、特に食品の場合は、不況の波が押し寄せてくるのは他業種に比べ遅い。だから、この不況による影響は、まだほとんど出てきていません。しかし、こういう時にこそ、格差はついてくるので、いま、何をやらなければならないかという判断は非常に大事だと思います。
われわれがやろうとしているのはディスカウントです。“ニューディスカウント”と言ってますが、所得が伸びない、将来の生活不安がある、そういう環境の 中で最大のサービスは、価格を安いところに持って行くこと。当社は「『ええもん安い』の商道の追求」を経営理念に掲げてますが、それをより深く実践してい きます。
そのために何をするかということですが、マーチャンダイジング(MD)を変えるというのが、まず1つ。MDを変え物流をコントロールする。今までにふく らみすぎた納入ルートを絞り、われわれが管理する上でシンプルな形にしていく。消費者との関係で言うと「われわれが本当にお勧めできるものはこういうもの だ」という風にアイテムを絞り込んでいき、結果として商品の在庫を減らしていく。MDからのローコスト化という発想を徹底させる。
もう1つは販売経費など、費用の圧縮です。これまでは“店作チラシ”と言って店ごとにつくっていましたが、いまは各店共通の“レギュラーチラシ”を使い経費を抑えています。また、売り場の効率化ということで、一人当たりの管理面積を拡大させています。
MDからのアプローチと費用構造の見直しの両方で販売に要する原価および費用を圧縮し、その分の売値を下げる。 EDLC(EveryDayLowCost)を通じたEDLP(EveryDayLowPrice)です。それがニューディスカウントであり、われわれが お客さんに提供していく最大のサービスです。
しかし、ただ効率化を図っていくだけでは売り場から“うるおい”を奪ってしまいます。だから、並行して“ホスピタリティ(もてなし)”を尽くす。こちらがお客さんのために何ができるかまで踏み込んで考え、もてなす雰囲気をあらゆる接客場面で充実させる。
ニューディスカウントとホスピタリティの両立こそが、景気後退期の中での小売業の最大のテーマだと思います。

=ききて/酒井=