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2018/06/22(金) 22日公開映画「焼肉ドラゴン」(大泉洋も出演)鄭義信(チョン・ウィシン)監督インタビュー

  

 日韓の豪華俳優陣が出演した6月22日公開の「焼肉ドラゴン」。舞台は1970年の伊丹空港そばの集落。そこで焼肉店を経営する在日韓国人の家族が時代の波に翻弄されながら、時に泣き、時にぶつかり、時に笑い、前向きに生きる姿をユーモアを交えつつ描く。2008年に鄭義信(チョン・ウィシン)氏が演劇作品として世に送り出し、数々の賞に輝いた名作だ。今回、生みの親である鄭氏が自らメガホンをとった。日本からは真木よう子、井上真央、大泉洋らが出演している。

 ――「焼肉ドラゴン」はもともと演劇作品として監督が世に送り出し、大きな反響を呼んだ作品です。映画化のきっかけについて教えてください。
 鄭 2008年、11年、16年と再演を重ねていますが、11年の時に映画化のオファーがあり、その時は実現しなかったのですが、16年の再々演の時にもお話をいただき、今回につながりました。
 ――多くの作品を手がけていますが、ご自身の中で「焼肉ドラゴン」はどんな存在ですか。
 鄭 実は当初、そんなに広く愛される作品になるとは思っていませんでした。日韓の俳優が出演しており、韓国で有名な俳優もいましたが、さほど派手なキャスティングでもありませんでした。在日韓国人の家族という、ある意味で特殊な家族の話だと思っていました。
 ところが、ふたを開けてみると口コミで人気が広がり、ものすごく多くの人が押し寄せて……。しかも「もう1度観たい」という声がたくさん寄せられて再演、そして再々演に。いろんな人がそれぞれの受けとめをされ、作品を愛してくださっていると感じています。私の手を離れて作品は独り歩きしていると思っています。
 ――広く支持をされている要素は何だと思いますか。
 鄭 初演の時、日本では50~60代の観客が多く、ノスタルジーを感じられたのかなと思います。韓国では当時、経済が急成長する中で従来の家族関係が崩壊するという現象が起きており、現在進行系の物語として受けとめたのでしょう。
 また、東日本大震災後の日本では家を失った家族の物語として。オーストラリア、ニューヨークでのリーディング公演では移民の話としてシンパシーを感じてくださったようです。
 そういった意味では小さな家族の物語を描いたつもりでしたが、普遍的な話を書いたんだと後で気づかされました。
 ――試写会で何度も観客席から笑いが起きていました。作品を作る際、笑いを意識したりしますか。
 鄭 笑いはすごく意識します。私は関西育ち、なんと言っても吉本新喜劇育ちですからね(笑)。深刻な場面が続き過ぎると息が詰まりますから、スッとポイントとポイントで笑いを入れたくなります。
 ――監督個人として特に思い入れがあるシーンは。
 鄭 個人的に好きなのは、父親の龍吉が息子の時生をリヤカーに乗せて引っ張るシーンです。実は、台本では単に龍吉がリヤカーを引っ張るだけだったのですが、撮影日の朝に思いつき、時生がリヤカーに乗っている方が親子の絆がはっきりと見えると。スタッフも賛同をしてくれて。ただ、キム・サンホ(龍吉役)は大変だったと思います。全部で8回ぐらい時生を乗せて引っ張ってもらいましたから。
 ――私個人としては龍吉さんが「働いて働いて、また働いて」と過去の苦難をとつとつを振り返るシーンは胸に来るものがありました。
 鄭 そのシーンは長回しで撮りました。サンホは日本語をしゃべれませんが、あの長いセリフを完璧に覚えて演じてくれました。
 ――それから男性目線ですが、井上真央さん(梨花役)の濃厚なキスシーンはドキドキしました。かなりアップで撮られていました。
 鄭 そうですか(笑)井上さんには「肉食系で」とお願いしました。
 ――映画の脚本も多く手がけていますが、監督経験は初めてです。ご感想は。
 鄭 撮影期間の約1カ月は本当に無我夢中で取り組みました。スタッフとキャストがずっと一緒に1つの作品に向き合う一帯感がとても心地良かったです。私自身も楽しく、大声で笑っていたらスクリプターさん(記録係)に「監督、静かにしてください」と叱られてしまったこともありました(笑)
 ――日韓の豪華な俳優陣です。現場はどんな雰囲気でしたか。
 鄭 その日の撮影が終わったら、俳優のみなさんは食事に行ったりしていました。最初は飜訳アプリを使って会話をされていたそうですが、撮影が終盤を迎える頃には身ぶり手ぶりだけで意思が通じていて、本当の家族のような雰囲気でした。
 ――北海道出身の大泉洋さんが出演しています。どんな印象でしたか。
 鄭 すごくきっちりとした演じ方でセンシティブに役を作り上げる俳優さんだと思いました。大泉さんのこだわりだと思いますが、顔の向きも含め、ちょっとした動きも緻密に計算をしていました。
 ――映画監督としてやりたい次の作品はありますか。
 鄭 映画の監督はいろんな幸運が重ならないと実現しないもの。ですから、たくさんの幸運に恵まれれば次回作もあると思います。
 ――最後に読者にメッセージをお願いします。
 鄭 「たとえ昨日はどんなでも、明日はきっとえぇ日になる」という父親の龍吉のセリフが、作品のキャッチコピーになっています。明日への希望が持てる作品になっていると思います。ぜひ劇場に足を運んでいただければ。