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アイヌの権利を守るため知的財産権の保護活動をスタート

「私たちはアイヌ文化を正しく使い、広く普及させる事を目的に活動しています。ご相談ください」と廣野洋理事長

民族共生象徴空間「ウポポイ」のオープンを4月に控え、道内では空前の〝アイヌブーム〟が巻き起こっている。そんな中、釧路市阿寒ではアイヌ民族の知的財産権を保護する取り組みがはじまっている。アイヌ民族と企業が一体となることで、アイヌ文化の普及を加速させる。

【アイヌ文化を正しく発信する意義】

 2019年4月19日の参院本会議で「アイヌ民族支援法」が採決された。アイヌ民族が先住民族であると初めて明記されて注目を集めた。アイヌ民族への差別禁止はもとより、新たに交付金制度が創設されるなど観光や産業の活性化も図られている。

 その象徴ともいえるのが、今年4月に胆振管内白老町でオープンする民族共生象徴空間「ウポポイ」だろう。国立アイヌ民族博物館などが建設されるなど、アイヌ文化の継承や発展を推進する国を挙げた一大プロジェクトであり、改めてアイヌ文化が注目されている。

 そんな中、19年8月にアイヌ民族による新法人「一般社団法人阿寒アイヌコンサルン」(廣野洋理事長)が誕生した。アイヌ文化の知的財産権の保護を目的とした新たな取り組みをスタートさせている。設立の背景には、アイヌ文化をビジネスに取り入れる企業の増加がある。

 廣野理事長は「阿寒で温泉宿を運営する鶴雅グループの大西雅之社長から、アイヌ文様を宿の内外装に取り入れたいといった相談を受けるなど、阿寒湖アイヌコタンでは約20年前から知的財産の保護活動をしてきました」と話す。

 廣野理事長によると、鶴雅グループのように〝正しい理解のもと、正しい文化を発信する〟という姿勢の企業は大歓迎だという。

 ところが、人気コミック「ゴールデンカムイ」が大ヒットした16年頃を境に〝便乗ビジネス〟が横行。例えば、まったくアイヌ文化とは異なる文様をプリントしたバスが運行していたり、アイヌ語で星を意味する「ノチウ」を「ノウチ」と誤表記して営業するホテルなどもあった。

【アイヌ文化を正しくビジネスに活用】

 特に文様は個人の家系を特定するケースがあるため、アイヌ関係者からの抗議も少なくない。そもそも企業側がアイヌ文化を〝わかっていない〟ことが問題の根底にある。

 そこでアイヌコンサルンでは、正しいアイヌ文化を発信するため、阿寒アイヌ協会や阿寒アイヌ民族文化保存会、阿寒アイヌ工芸協同組合などと連携。アイヌ文化をビジネスに取り入れる際のデザインの監修や制作、認証をはじめ、アイヌ語、アイヌ料理、アイヌ芸能などあらゆるシーンで相談を受け、アドバイスをおこなう総合窓口として活動している。

 監修したデザインには同法人独自のAIPR認証マークと認証コードを発行する。企業側はアイヌ民族からの〝お墨付き〟がもらえる格好だ。

 地元釧路市のある広告代理店は「使用後の意図しないトラブル等を考えるとプロモーションの提案が難しかった。ありがたい存在です」と話す。

 すでに複数社の監修を手がけ、前述の鶴雅グループをはじめ、阿寒観光協会の販促物や網走刑務所の刑務作業製品も監修。19年3月から上演を開始した阿寒湖アイヌシアターイコロの新プログラム「ロストカムイ」では、アイヌ古式舞踊や現代舞踊など全体の広報活動に参画しているほか、並行して道内外のデザイン会社や広告代理店、自治体に積極的にPRしている。

 アイヌ民族の生活水準向上も廣野理事長の原動力だ。

「阿寒にはアイヌ民族のクリエーターが多数います。彼らの収入を確保するためにも、将来的にはオリジナル製品の開発もおこなっていきたい」と意気込む。

 将来的には道内全域に知的財産権保護活動を広げていく方針だ。

アイヌ文様の一例
監修したデザインには認証マークを付与
阿寒湖アイヌシアター「イコロ」
「ロストカムイ」の広報活動にも参画
相談から認証までのプロセス