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サスティナビリティ(118)
2025年(9)  2010年~2014年 「日本は更なる失われた5年間へ」(5)
更新日:2011年05月14日

    

 東京電力福島第1原子力発電所の”想定外”の地震と津波による惨状を受け、政府は静岡県浜岡原子力発電所の停止を要請し、中部電力が受諾した。さらに、定期検査などの理由で休止している13カ所の件も再開が危ぶまれている。電力会社による安全性の確認がなされたとしても、地元の賛同を得るのは極めて難しくなっているだろう。これにより、東京電力、東北電力、中部電力の供給地域のみならず、各地で夏期を中心に電力の需要と供給で“綱渡り状態”が発生する可能性が出てくるとの予想だ。
 かかる状況の中、北海道の風力で原発62基分の電力を生み出すポテンシャルがあるとしたら信じてもらえるだろうか。
 環境省は4月21日、「平成22年度再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査報告書」を発表した。本レポートは毎年調査され発表されているが、今回はA4サイズで総ページ数287の大作である(http://www.env.go.jp/earth/report/h23-03/full.pdf(http://www.env.go.jp/earth/report/h23-03/full.pdf))。
平成22年度版なので、今回の東日本震災を受けての発行ではない。純粋に日本における再生可能エネルギーによる電力供給の可能性について調査・報告されている。この中で私が注目したのは陸上及び洋上風力発電の導入ポテンシャルについて、50ページをその調査・分析に割いている。
 2010年~15年を「日本はさらなる失われた5年間へ」と題し、前回まで4回にわたって“為替を中心とした経済競争力の推移”“社会・経済の動向”“日本に大きく影響をもたらす主要国や地域の動向”、“地球温暖化の影響”について見てきた。今回は2010~15の5年間のまとめと、北海道の果たす役割について考察する。その第1弾として北海道の風力発電を取り上げる。
 本ブログの連載をし始めた07年からほぼ110回にわたり、サステイナビリティ(地球環境の維持)について書き続けてきたが、その底流には北海道の豊かな財産である「風・林・水・菜」(風力資源、森林資源、水資源、農・水産資源)が、いかに日本の社会・経済に貢献できるのかという私自身の強い思いがある。特に、風力発電については08年に「オロロン街道(稚内から石狩までの日本海沿岸)をウインドファーム(風力発電の一大基地)に」と題し、提案も行ってきた。今回、発表された環境省のレポートは、我が意を一段と強くするものであった。

 それでは環境省レポートの概要を説明していきたい。本レポートでは日本全国および近海を500メートルごとに風況を区分けし、それぞれの区分別にどれだけ風力が賦存しているかを数値化している。これによると、陸上風力での発電可能総量は13億キロワットと推計された。
 この総量がただちに発電ビジネスに利用できるものではない。様々な条件により絞り込まれていく。その条件は、第1に発電に適する風の強さであり、平均風速5.5メートル以上の場所だけを選び出すしている。第2に風力発電施設を設置することが可能かどうかで地域を抽出している。具体的には法律や環境を考慮し、以下の地域は電力設備を設置するには適さないとして除外している。
 ・標高1,000m以上、および最大傾斜角20度以上の土地
 ・国立・国定公園、都道府県立自然公園、原生自然環境保全地域、鳥獣保護区等
 ・市街化区域、田畑、建物・幹線交通要地、河川・湖沼、海水域、ゴルフ場、保安林
 ・居住地から500m未満
 つまり、発電するに充分な風力があり、なおかつ土地が法律や規制の制限に触れることない場所。さらに地滑りの危険性を排除し、貴重な猛禽類が衝突する危険性を極力除き、居住地から離れ騒音被害を最小限に抑えることができること。このような場所が、風力発電施設設置に適しているとして選ばれた。さて、上記条件を満たした陸上風力発電導入ポテンシャルは、日本全国の総計で28,294万キロワットと計算された。そして驚くことに、その49%が北海道に存在しているのだ。特に道北(上川総合振興局、留萌振興局、宗谷振興局)と道東(オホーツク総合振興局、十勝総合振興局、釧路総合振興局、根室振興局)で全体の37%(11,000万キロワット)の発電ポテンシャルを持っていると報告されている。オロロン街道沿いでは5,000万キロワットを超えるポテンシャルが賦存している。
 もちろん、ポテンシャルがあるからといってビジネスに結びつくものではない。環境省のレポートでは、想定される1キロワット当たりの買取価格、設備運営費、土木工事費をもとに数通りのシナリオで収支計算がされている。環境省のレポートでは、シナリオごとに、それぞれビジネスとして採算のとれる発電量を計算しているが、私は最も現実的と思われるシナリオIIを採用してみた。シナリオIIは、技術革新による発電効率の向上とコストの低下を見込んで試算している。
すなわち、今後の技術開発の進展と大量生産によるコスト低下は充分に見込まれており、発電設備費の50%削減(現在の欧米並み)、土木工事費の20%削減が可能とし、電力の固定買取価格が20円/kw、15年間で税引き前PIRR(事業投資回収率)が8%を超えることを前提としている。つまり、投資資金を15年間で回収し、充分利益を生み出すことができる事業としている。
 このシナリオIIで事業展開できる総発電設備容量は全国で27,374万キロワット。北海道は48%の13,217万キロワットと計算されている。そのうち道北では4,916万キロワット、道東は5,076万キロワットで、それぞれ全国の18%、18.5%を占めている。
 以上は陸上での導入可能量であるが、今注目されている洋上風力発電でも北海道が最も有利な地域となっている。シナリオIIで計算すると全国の導入可能量の64%にあたる9,090万キロワットとダントツの発電可能量を誇っている。
 陸上と洋上の風力発電導入可能量を合計すると、22,307万キロワットにも達することになる。発電効率を25%とすると、風力で5,577万キロワットの電力が北海道で生み出すことが可能になる。原子力発電所の1基あたり発電能力を120万キロワットとし発電効率を75%とすると、実際の発電量は90万キロワットなので、北海道の風力発電可能総量は原発の62基分にも相当することになる。
 25年までにこの発電可能総量5,577万キロワットの30%が実現しただけで、原子力発電所の19基分に相当する。さらに、揚水発電や蓄電設備の併設による発電効率の向上を考慮に入れると、ゆうに原発25基分に相当する2,250万キロワットの再生可能エネルギーが北海道で生み出されることになるのだ。これは道内の需要を大きく上回る数値であり、送電網・海底ケーブルの拡張により東北・関東、場合によると海外へも供給することも可能な量になる。
 次号では、具体的にどのように進めれば実現できるのかについて考えてみたい。