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サスティナビリティ(114)
2025年(5)2010年~2014年 「日本は更なる失われた5年間へ」(1)
更新日:2011年03月14日

    

 自然は何と無慈悲な災害を我々にもたらすのだろう。そして、何という悲惨な爪痕を残すのだろう。亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、必死に生きようとがんばっているいまだ安否不明の方々、避難所で不自由な生活を余儀なくされている方々に、心からの応援を送りたいと思います。世界からの支援が続々寄せられているが、大打撃を被った日本経済に対し、世界の市場は円高でさらなる苦難を与えようとしている。市場とはなんとむごい仕打ちをするのだろうか。日本経済は決して破綻しているわけではなく、2~3ヶ月で立ち直り、世界の市場を驚かせるだろう。危機に直面したときの日本人の団結力・組織力と遵法の精神、さらに互いを助け合う人間性は、他の国と比べ格段に優れている。今に見ていろという思いだ。

 2014年までの短期予測を、(1)為替レートをベースとした日本企業の実力度、(2)社会と政治の動き、(3)海外の動向、(4)環境と資源、(5)まとめと北海道が5年間で打つべき施策、の5分野に分けて見てみたいと思う。
 まず、(1)為替レートをベースとした日本企業の実力度を見てみよう。
 以前、プラザ合意時点で米国に勤務しており、個人的には急激な円高で大きな損失を被ったと書いたが、仕事面では米国本社から好ましい評価を受けていた。別に特別なことをしたのではない。思ってもいなかった円高の恩恵に浴していたのだ。赴任時1ドル250円だったのが帰国時にはその半分の125ドルに下落し、日本法人のドルベースの売上げが倍増したのである。ウソのような話だが、仮に日本法人の年間売上高が500億円としよう。赴任時のドルベース売上高は2億ドルである。帰任時には125円になったので、日本法人の売上高が円ベースでは全く伸びなかったとしてもドルベースでは4億ドルに倍増したことになる。さらに、米国からの製品輸出額がほぼ半分になるので利益も大幅に拡大した。日本法人担当として、私が何もしないでも評価を上げたのは円高のお陰である。

 実体経済の大改革とか技術イノベーションに関係なく、為替の変化でこのようになるとはなんと恐ろしいものであるのかを実感した。この急激の変化を外(海外)から見ると、見えてくるものがあった。当時日本では、海外旅行費用やデザイナーブランド品が半値になるということで、ニューヨーク五番街やパリに日本人が大挙して押しかけ円の強さを満喫していた。(現在は中国人がパリのブランドショップに押し寄せているとのこと。隔日の感がある)急激な円高を抑えるために低金利政策が採られ、だぶついたお金が土地や株式に向かいバブルが発生し、日本中が陶酔状態になっていたのだろう。

 それが、現在は1ドル82~83円であり、プラザ合意前と比べて3倍の円高になっている。勤勉で研究開発に優れた日本が「失われた20年」と言われ一人負けを喫したのは、急激な円高がその主因と言っていいだろう。ただこの間、製造業を中心とした日本企業は座して低迷に甘んじていたわけでは決してない。円高の影響をもろに受けた製造業はこまめに電気を消したり、手で握れないくらい短くなった鉛筆を使い続けたり、懸命になってコスト削減に努力していた。過去10年間で日本の労働生産性は世界一に改善され、輸送機器、工作機械、電子機器、インフラ部門で、引き続き世界に冠たる実力を維持している。
 ドル換算レートが1円安くなれば数億の為替損が生じる企業が目白押しと言われていたが、本年度(2010年度)の決算では電機・自動車が牽引し9割の業種で損益が回復し、経常利益は前期比で60%もの増加が見込まれている。日本企業はとてつもない勢いで円高抵抗力を身につけてきたことになる。大手企業のリーマン不況からの脱出は、大量の資金が市場に投入され新興国や米国の景気が回復し、日本からの輸出が拡大したことにその多くの要因があるが、各企業の20数年にわたる技術開発、コスト削減の努力を高く評価すべきだろう。

 それでは、2014年までの為替レートはどの程度と予想するといいのだろうか。日本経済研究センターの中期予測では2012年に1ドル90.8円になっている。現在の実質実効為替レート(貿易相手国全てとの為替レート)では110円程度、2009年の購買力平価も114円なので、2014年までの平均値は90円から95円の間ではなかろうかと推測する。10%~15%ほどの円安となり、賃金デフレ、物価下落、低成長の悪循環をいくばくか改善することになるのではないだろうか。
 さらに、韓国ウォンと人民元が高まることが予想される。韓国は電機・自動車・半導体で日本を追撃し、強力な競争相手に成長した。1998年のアジア経済危機でIMF管理下に置かれ、企業の統合化を進めると共に財政を改善し、近年では法人税の引き下げとEPA(経済連携協定)を進め企業の競争力を高めた。日本ではこれら諸策は実現しておらず、韓国の国を挙げた国際競争力を高めようとする姿勢は高く評価する。しかし、ウォン安の影響は無視できない。リーマンショック前には1円が8ウォン程度だったのが2009年に16円を超え、現在でも14円程度である。2008年時点との比較では円に対し75%のウォン安だ。ドルと比較しても、2008年の1ドル1000ウォンが現在の1200ウォンと20%のウォン安である。これでは土俵が違っているみたいなもので、今後ウォン高への修正がなされるだろう。そうすると、韓国企業に対する日本企業の競争力はより高まることになる。
 中国人民元も米国などからの圧力とインフレ引き締めで、人民元高の方向にいくことが予想される。一方、ヨーロッパではアイスランド、アイルランド、ギリシャに広がった財政破綻危機がポルトガルやイタリアにも拡大する危険性があり、ユーロ安になる可能性が大である。

 円安は日本の輸出企業にとってプラス要因であり、米国、中国を始めとした新興国の経済が好調のうちは輸出増による恩恵を受けることになる。半面、原油や農産物などの輸入品の価格高騰を招き、国内消費の停滞となる恐れがある。2012年には米国、中国、ロシアで大統領・国家元首の選挙があるので、2013年までは極端な世界経済の変化はないと思われるが、2014年には世界各地域でほころびが生じてくる可能性がある。
 現在の円高は、海外企業や資産を安く買う絶好の機会であり、資源の急激な高騰を少なからず癒す効果がある。この間に、資源の高度利用(ハイブリッド車・UVの普及、再生可能エネルギーの拡大、新資源の開発など)と、農業の集約化・効率化、国家間交易条件の整備に力点を置いた取り組みを推進する必要があるのではないだろうか。