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サスティナビリティ(130)
2025年(20)2015年~2019年「世界的経済混迷の5年間」(98):北海道編-4
更新日:2011年11月15日

    

 2011年10月31日、世界の総人口は70億人を突破した。国連はその日に生まれた赤ちゃんを全員70億人目と認定するので、世界で数百万人の赤ちゃんが歴史に残る誕生日を迎えた事になる。このまま2050年頃まで世界人口は増え続ける見込みなので、2015年には72億7000万人、2019年には76億6000万人になると予測されている。
 問題は、人口の増加に食料の増産がついていけるかという点だ。今でも、慢性的な栄養不足にあえぐ飢餓人口は世界で10億人に達している。特にひどいのが、アフリカや西・南アジア地域で、頻繁に発生する干ばつ・洪水で食料生産は危機に瀕している。
そしてこれら地域こそ世界で最も人口増加が進んでいる。チュニジアを発端とするエジプト・リビアなど北アフリカで昨年末から発生しているジャスミン革命も、そもそもは食糧不足による穀物価格の上昇が起因している。はたして、70億人目の赤ちゃん達は充分な食料に恵まれて育つことが出来るのだろうか。
今回は、”風””林””水”に続いて、2015年~2019年の間で北海道の”菜”(農産物”はどうなるのかを見ていきたい。

最近、「ウェザー・オブ・ザ・フューチャー(シーエムシー出版、ハイディ・カレン著)という分厚い本を購入した。興味深い内容に魅入られ、その日のうちに370頁を読破してしまった。
本書は、アフリカ・サヘル、オーストラリア・グレートバリアリーフ、カリフォルニア州セントラルバレー、北極圏、バングラディッシュ、ニューヨーク州の各地域を取り上げ、今後地球温暖化がどのように住民の生活に影響を与えるかを分析している。
著者のハイディ・カレンは気候専門の科学者であるとともにジャーナリストで、世界各地を訪れ、気候変動の現況について調査分析している。本書は、彼自身と共同研究者による調査、並びにのIPCC(気候変動化に関する政府間パネル)の気候モデルを基にして各種予測を提起している。

まず、珊瑚礁の美しいオーストラリア・グレートバリア地域だが、2017年から2019年にかけて海水温は27度から29度の範囲で上昇。珊瑚の白化が発生し、大量に死滅する。温度の上昇で破局的な山火事が発生し、悲惨な状況は数カ月続き、長期間の雨不足もあり、赤い砂埃が厚い壁になって押し寄せる。これによる農産物への被害は甚大であると予測している。
これらはエルニーニョ現象による影響であるが、エルニーニョ・ラニーニャは毎年のように出現しており、オーストラリアは最も影響の受ける地域にある。ここ1~2年でも洪水・干ばつが頻繁に発生しているのは既報の通りである。
2015~19年の間、豪雨、干ばつ、山火事等の災害が深刻化可能性は高いと考えられる。温暖化ガス排出防止策などの対策を早急に取らなければ、遅きに失し大災害をもたらすことになるのではないだろうか。世界の農産物供給拠点が脅かされている。

 カリフォルニア州セントラルバレー地区は、北はサンフランシスコ・シリコンバレーから南はロサンゼルス・オレンジ郡に至る広大なデルタ地帯で、黄金の州と呼ばれている。
豊かな米国を支えてきたこの地域で、「運河や堤防の破局的決壊のリスクが高まっている」と多くの科学者が指摘している。
カリフォルニア州は米国で大気汚染が一番ひどく、地球温暖化の影響を受けやすい。大気中の熱量が増加し、エルニーニョ現象も強力になり、100年に一度の大規模洪水の確率が高まっている。また、ベイエリアの断層にはひずみが蓄積し続けており、地震と洪水による破局的な堤防決壊シナリオが浮かび上がっている。
気候変動は、雪どけ水の急激な増加と海面上昇をもたらしており、堤防やダムは必死に耐えているのが現状だ。デルタ地帯を守っている堤防やダムの多くは、世界大恐慌後、ルーズベルト大統領が実施したニューディール政策の時期に建設した設備であり、200年を経て老朽化は急速に進行している。
堤防が決壊すると、サンフランシスコ湾の海水が一気に流れ込んで農地に溢れ、さらにその後の塩害が農業に多大な損害をもたらすことになる。今後10~15年で、カリフォルニア米生産地が深刻な打撃を受ける可能性が極めて高い。近年、カリフォルニア州の気温は上昇しており、それに伴って発生している大規模な山火事の発生が、上記大災害の兆候でなければいいが…。

バングラディッシュはインドの東に位置している。モンスーンの降雨とヒマラヤ山脈からの雪解け水に恵まれ、主食の米は自給出来る状態にある。しかし、国土の3分の2は海抜5メートル以下であり、今でもサイクロンとヒマラヤからの雪どけ水による洪水に脅かされている。2004年には、国土の60%が水没するという洪水被害が発生した。
これをさらに悪化させているのが地球温暖化だ。ヒマラヤの氷河融解は、世界で最も速い速度で進行しており、2035年までに消滅する可能性が高いと指摘されている。氷河から決壊した氷が崩れ落ちると氷河湖の水位がどんどん高くなり、最終的に氷河湖は決壊し大量の水が一気に放出される。一方、温暖化でサイクロンの勢いと発生回数が増し、海面上昇も加わり国土の相当部分が水没する可能性が高いと指摘されている。洪水が収まったときには、農地は塩害にさらされることになる。
さらに恐ろしいのは、最終的に氷河湖が決壊し洪水をもたらした後、ヒマラヤからの水が大幅に減少し干ばつが始まることだ。この地域に1億5千万人の国民が生活しており、毎年2%強で人口が増えている。2015~19年の間に、飢餓人口の増加で環境難民が大量発生することを否定することはできないだろう。タイの洪水がテレビ・新聞を賑わしているが、バングラディッシュはタイの隣国だ。インド・パキスタンを含めた南・東南アジアが食料危機に直面しており、その被害は今後一層拡大することを念頭に置いておかなければならないだろう。
過去、モンスーンによる定期的な降雨に恵まれアジアの食料を満たしてきた南・東南アジアの国々が過酷な気候変動に瀕しており、増え続ける人口を賄う食料を自給できなくなる可能性を考えておかなければならない。2015~19年には高い確率でそのような事態を迎えることになる。

一昨日(11月11日)、野田総理大臣はTPP交渉参加を表明し、ホノルルで開催されるAPEC参加に向け日本を出発した。北海道新聞は社説で「国民の不安を直視せよ」と題し、”TPP参加のメリットが見えない”、”もっと丁寧な説明を”と、参加への懸念を表明している。一方、日本経済新聞は同じく社説で「攻めのTPP交渉で日本の舞台を広げよ」と、自由貿易を推進する日本の実行力に期待し、参加賛成の立場から論陣を張っている。
何れの論説を支持するかは、それぞれ置かれた立場で異なるだろうが、70億人を超える世界人口を満たすだけの食料は生産可能なのか、すでに高騰している穀物価格(本年6月から大豆50%、小麦90%、トウモロコシ100%以上)が今後どのようになっていくのかの論議が置かれたまま、賛成・反対論争が過熱しているのが気にかかる。
おそらく、2015~19年には海外からの食料輸入は困難になっていくだろう。

この環境の中、日本を救うことが出来るのは北海道の農業だ。温暖化が進む中、北海道の反当たり収量は20%を超えて増加していくことが見込まれ、豊かな水と未だ耕作可能な土地も多く、また農業技術開発の努力により品質が高く収量が高まる品種改良も進んでいる。
道は、TPPによる北海道への影響として、金額で2兆1千億、雇用で17万人が失われるとの試算を発表している。米は9割の削減、小麦・テンサイ・デンプン原料用馬鈴薯は壊滅状態、酪農は生産の大幅減少になるという。こんなに北海道の農業は弱いのだろうか。

ユメピリカ・ユメチカラなどの新品種を開発し、増産体制に入っている北海道の力強い農業に期待したい。もちろん、食料安全保障の観点から北海道の大規模農業のさらなる拡大に対し、積極的な国家的支援が行われるべきである。