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サスティナビリティ(126)
2025年(17)2015年~2019年「世界的経済混迷の5年間」(6):国内編-2
更新日:2011年09月14日

    

「新聞紙、おがくず、ポリマー(紙おむつ用吸収剤)を出水箇所に投入せよ」
福島第一原発の汚染された冷却水が海洋に流出。それを止める手段として対策本部が現地に出した指示である。もちろん、これで溢れ出た汚染水が止まるわけがない。
放射能に汚染された多量の水を除染するために設置された装置も当初はフランス製と米国製。
高濃度に汚染された原発設備内を調査するために使われたロボットは全て米国製。
 技術大国、先進的原発技術国、世界最新のロボット技術国・・・。今まで持ち続けていた日本人の自信と誇りが一気に瓦解したようである。はたして技術立国日本の立場は維持できるのだろうかと不安になる。
今回は、「技術革新」、「実体経済」、「震災経験」の側面から、日本経済の近未来について見ていきたい。

 まず「技術革新」についてみてみよう。
世界経済フォーラムが「2011年度世界競争力報告」を発表したが、日本は142カ国中9位で昨年の6位から後退している。競争力が徐々に落ち込んでいると心配になるが、その内容を見ると幾分元気がわいてくる。「生産工程の先進性」、「技術革新力」、「研究開発投資」、「顧客優先度」では引き続き首位を維持しているのだ。世界は、日本の民間企業が持つ技術力と顧客志向を今も高く評価している。問題は政府・財政部門で、「政府債務残高」は最下位、「財政収支」、「農業政策」も142カ国中135位以下で低迷している。これらが製造業を中心とした民間企業の努力を全体として下押ししている。改善点は明白であり、成長戦略を実行に移した場合、日本の技術を中心とした競争力はまだまだ高まる可能性を有している。
2015~2019年を見渡した場合、日本の技術が活躍すると思われる有望な分野は、
・世界的な地球温暖化に対応した脱化石燃料に関連する産業
・世界的な人口増加と資源不足に対応した産業
・老齢化に対応した産業
なのではないだろうか。
脱化石燃料に関連する産業として、EV(電気自動車)やPHV(プラグインハイブリッド自動車)は拡大していくだろう。この分野で日本は特許の80%程度を保持しており、極めて優位に立つものと思われる。さらに、EVやPHVに使われるリチウムイオン二次電池は日本が優位に立っている分野で、自動車の他に家庭用蓄電池や、発電が不安定な再生可能エネルギーの蓄電設備用として膨大な需要が見込まれる。
再生可能エネルギーも著しい進化が見られる分野であり、特に洋上風力発電がこの時期、採用が開始されると思われる。現在、電力会社の買い取り制限枠により洋上風力発電は実験レベルだが、国内有力企業が英国やオランダを中心とした欧州のプロジェクトに参加して、技術を高めている。
洋上風力以外の再生可能エネルギーも本年度(2011年)に開始される固定買取制度により有望な産業になる事は間違いない。特に、風力発電用風車は関連部品が1万点に上るので、中小企業を含めた産業の広がりと雇用の確保が見込まれる。
脱化石燃料に向けた家電製品の省電力化は、福島原発事故による電力不足を機に拡大しつつあり、技術的にも世界最先端になっている。この技術の積み上げは、韓国や中国製家電製品の追い上げを防ぐ要素にもなるだろう。
また、炭素繊維は航空機・自動車・風車を始めとした広範囲の製品に採用されることになるだろう。炭素繊維技術では日本が圧倒的な優位性を持っており、軽量化によるCO2排出削減効果が高いことから世界的にマーケットが拡大していくと思われる。

世界的な人口増加と資源不足が2015~2019年には深刻化すると予想されている。
農業生産高に関しては、日本は米国に次いで先進国で第二位であり、その安全性と質については高く評価されている。農業の規模拡大は必至であり、2015年から2019年にはコメなどの主要農産物について国内消費を賄うと共に、輸出の可能性に本格的に取り組む時期だろう。問題は農業就業者年齢で、2010年度で65才以上の販売農家は就業者全体の61.6%。2015~2019年には70才を超えることになり、実際に生産活動に従事することが出来ない農家が過半を占める事になる。企業や若者が農業に従事できるよう、魅力的な大規模・科学的農業に転換する必要がある。農業そのものには大きな可能性が秘められている。

老齢化に対応した産業としては、医療・介護が真っ先に挙げられる。この分野で日本人の優位となっているのは、その優しさ、いたわりの気持ち、心配りなのではないか。東日本大震災で、自分のことを後回しにして老人を支えている医師や看護人の姿に、世界中の人が深い尊敬の念を抱いただろう。日本の持つ医療技術と医療・介護関係者のいたわりの気持ちが、国内はもとより海外からの患者を安心して迎える事が可能になる。この分野でも各種規制の緩和が前提となる。

第二の点は日本および各国の実体経済についてである。25年前、転勤で米国に行った時期、製造業は圧倒的な強さを示していた。自動車産業、コンピュータ・ハードウェア機器製造、装置産業、衣料品製造、家庭雑貨製造、家庭電機産業など、旺盛な国内消費に支えられ世界で圧倒的な地位を誇っていた。しかし現在は、衣料、ハードウェア、家電などはほとんどが輸入品に変わり、自動車も往事の勢いを失っている。製造業従事者の総数が国家公務員数の半分という状況である。その代わりに台頭してきたのがソフトウェア産業であり、金融産業である。製造業に比べソフトウェア産業の雇用者数は限られ、失業率は9%台にまで高まり、若年労働者は20%が職に就けない状態である。
国民の過半数が株に投資しており、株が高騰を続けていた時期、生活は豊かであったが、リーマンショック後の下落で株式による収入が大幅に減退した。さらに、金融工学などと称し、レバレージ(梃子)効果を売り物に、住宅を含めたあらゆる資産を証券化し、売り出した。これらもバブル崩壊でまさに泡と消えた。いま、米国では製造業への回帰が取りざたされているが、中国を始めとしたアジア諸国からの安価な輸入品に対抗し、生産を立ち上げるのはほとんど困難であろう。製造業を中心とした実体経済からマネー至上主義に移行したツケが来ているのではないだろうか。
イギリスはさらに深刻で、鉱業、造船、自動車、繊維等の産業で、かつては世界に冠たる地位を築いていたが、製造業から金融業に一挙に構造転換したことで現在厳しい経済環境に立たされている。ドイツ・オランダ・ベルギーを除いた欧州連合各国の実体経済は、現在米英と同様に苦境の中にある。
中国を始めとした新興国は高い成長率を維持しているが、実体経済として見た場合、電子部品・機械部品の多くを日本から輸入し、安い労働力を活用し完成品として輸出しているのが実情だろう。
実体経済で見た場合、日本は優位な地位を2015年から2019年でも維持していけると思う。もちろん、産業の空洞化で独自技術を移転しなければならない恐れはあるが、中小企業を中心として広汎に広がり、過去20年間で積み上げた技術は新興国に簡単に移転できるとは思えず、また実体経済に立脚した日本企業は次々と新たな革新的技術を開発していくだろう。

東日本大震災と、同時に発生した福島第一原発事故は多くの痛ましい犠牲者と、今なお不自由な暮らしを強いられている多くの被災者を出した。これらの方々の犠牲の上で、震災は我々に多くの事を学ばせ、また生活の在り方をも変化させた。まず、原発に依存した従来の電力利用を改めて見直す機会を与えてくれた。再生可能エネルギーに転換する必要性をこれほど強烈に認識したことはなかったろう。節電を受け、これほど省力化に真剣に取り組んだことはなかったろう。報道で、原子力発電といわゆる「原子力村」の実体が明らかになるにつれ、これほどの怒りを表したことはなかったろう。日本のエネルギー政策は間違いなく変化し、2015年から2019年には再生可能エネルギーが地産・地消エネルギーとして地域活性化の一つの柱になり、また新たな送電網の中でスマートグリッドなどの新たな技術が萌芽していくだろう。
民間の製造業がサプライチェーンを、予想を大幅に上回るスピードで立て直し、短期間で製造再開にこぎ着けたこと、そして日本の電子部品・機械部品を製造する中小企業が、いかに世界中の製造業に影響を与えているのかを理解するきっかけとなった。失われていた日本人としての誇りと自信を思い出させてくれた。
被災者や他人を思いやる気持ち、節電に一所懸命努力する生活、ボランティア活動を通じて生まれた新たな生き甲斐。
2015~2019年に中心となって活躍する若い方々の意識変革が生まれたのではないだろうか。

2回にわたり、2015~2019年に日本はどのようになるのかを「円高」、「経常収支」、「技術革新」、「実体経済」、「震災経験」の5つの角度から見てきた。誌面の関係からその詳細について触れることは出来なかったが、私の期待(願望)をまとめてみた。あとは読者のご判断に委ねよう。

 次回は2015年から2019年に、北海道はどのようになっているのだろうか。また、そのために何をしなければならないかをまとめてみたい。