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サスティナビリティ(125)
2025年(16)2015年~2019年「世界的経済混迷の5年間」(5):国内編-1
更新日:2011年09月01日

    

 英国の多くの都市で若者の暴動が続いている。英国は、リーマンショック後の大型財政出動で債務残高がGDP比62%に膨れあがり財政赤字が続いている。この状況を踏まえ、キャメロン首相は「包括的歳出見直し」を発表し、大胆な歳出削減を実施した。
その内容は、「付加価値税(消費税)を20%に拡大」「公務員給与昇給の2年間凍結」「子供手当3年間停止」「福祉給付抑制」「銀行新税の創設」「課税最低限の引き下げ」「資産譲渡益課税の引き上げ」という大胆な施策が中心となっているが、その中に大学授業料の大幅値上げが含まれている。今まで授業料上限枠が年間約45万円であったのが、一挙に120万円に引き上げられたのだ。
リーマンショックの後遺症は未だ冷めやらず、景気後退の中での各種政策は英国の景気をさらに厳しくし、失業率も高止まりしている。特に移民の若者達は悲惨な状況に置かれており、彼らの不満が爆発したと理解すべきだろう。
一方、ギリシャやポルトガルもGDPの100%を超える公的債務でソブリンリスク(国家財政破綻の危機)が発生し、IMF(国際銀行)やECB(欧州銀行)からの金融支援を受けており、債務削減のための超緊縮予算が強いられ、国民の生活不安から大規模デモが頻発している。ソブリンリスクはイタリア、スペインにも及び、フランスの財政危機も取りざたされている。
日本はこれらの国々よりも大量の公的債務を抱えており、現時点で地方債を加えた公的債務残高はGDP比219%に達している。何もしないと20年後には321%にも達すると予測されている。また、少子高齢化で社会保障関連費用が急速に増大しており、産業の空洞化に伴ってGDPの落ち込みと雇用の創出が懸念される。国債は国内消化が心許なく、消化が困難になれば国債金利上昇で大量に保有している金融機関の資産は大幅に毀損(きそん)し、超インフレの到来も予想されている。日本の経済危機を訴える論評が後を経たない。
2015年から2019年の日本経済を見る上で、国家の負債と財政再建を抜きにして語ることは出来ないだろう。日本も英国やギリシャのような大混乱になるのだろうか。

 2015年から2019年の日本経済に関し、私は一般的に言われる程の悲観的な見方をしていない。その理由を、「円高」、「経常収支」、「技術革新」、「実体経済」、「震災経験」の5つの角度から見ていきたい。

 まず円高であるが、輸出競争力の低下、産業の空洞化による景気失速、雇用機会の減少をもたらすものとして大きな懸念材料になっている。この点は私も充分理解している。しかし、1985年のプラザ合意で当時1ドル250円が160円までに急速な円高が進んだ時代から日本の産業界は、懸命な努力を行い円高抵抗力をつけてきたことも事実である。
 実質実効レート(諸通貨の相対的な実力を計るための為替レートで、インフレも加味している)で見ると、円はプラザ合意以前の水準であり、決して高くない。日本企業も円に対し、不利な安いドルで全て決済するわけではなく、輸出の41%が円建てで取引しており、ドル建ては50%を切っている。今後、米国以外の国々との公益関係が増えてくると、円建て取引やドル以外の相手国通貨での決済が増えてくるだろう。相対的に円高・ドル安のインパクトは薄くなる。さらに今後、鉱物資源価格や食料品価格が高まると予想される中、輸入では72%がドル建てとなっており、円高メリットが生きてくる。
米国や英国の経営者が経済面だけの判断で、安易に国内の製造拠点を閉鎖し、海外に移転したり輸入に置き換えているのに対し、日本の経営者の多くは効率化と技術革新に取り組み、国内に一定の工場を持ち続ける努力をしている。
プラザ合意後の時期、蛍光灯を消したり鉛筆をこれ以上削れないほどの短さで使っていたが、当時の「物づくり魂」は今も脈々と残っている。
円高は輸入価格の押し上げを抑制する大きな効果をもたらす。私が米国に居た1980年台後半、ガソリン価格は1ガロン1ドル少々であったが、今は4ドルを超えている。日本の場合と比べると2~3倍のスピードでガソリン価格が上がっている。個々にも円高の効果が出ている。世界的な鉱物資源と食料品の高騰が押し寄せる2015年から2019年にかけ、円高は相対的に日本の物価を安定させる要素だろう。さらに、円高で割安となった海外の資産や企業を取得するチャンスでもある。

次に、日本の経済力を評価する指針として経常収支を見ていきたい。経常収支は国家間の物と資本等の取引バランスで、貿易収支、サービス収支、所得収支、経常移転収支からなる。
貿易収支(輸出と輸入の差)で、日本は2010年624兆円の輸入に対し、678兆円の輸出で53兆円の黒字を計上している。2011年は大震災の影響で大幅に落ち込むと思われるが、短期的であり今後とも黒字基調は続くだろう。
輸入のうち17兆円は鉱物性燃料で、中東からの原油輸入が多くを占めている。最近ガソリンスタンドの閉鎖が相次いでいるが、自家用車の減少や燃費効率が高まっていることがその要因ではないだろうか。2015年~2019年の間に、ハイブリッド車やEV(電気自動車)の普及は一層進むであろうし、低燃費車が全体の過半を占める事になるのではないだろうか。そうなると、貿易収支の輸入で28%を占める鉱物性燃料が、円高との相乗効果で大幅に下がる可能性が大である。資源弱小国日本がその制約からいくばくか解放されることになる。2015年から2019年の間、世界同時不況で日本の輸出の90%を占める工業製品が減少するとしても、貿易収支の黒字は継続すると思われる。
所得収支は日本の機関投資家や個人投資家が海外に保有する金融資産から得られる利子、配当金で、毎月1兆円の黒字になっている。年間10兆円から15兆円の収入になる。円高が継続すると、海外資産への投資は増加すると考えられ、所得収支も黒字基調は続き、さらに拡大していくと思われる。
さらに、日本の対外純資産は2010年末で266兆円あり、世界でダントツである(2位中国で168兆円、米国は315兆円の赤字)。国富は2700兆円あり、戦後積み上げたインフラ(電力網、鉄道・道路網・水道・公共施設)は他の国を圧倒しており、政府の公的債務を除いた日本のバランスシートは健全であるといえる。問題は公的債務の削減にいかに取り組むかである。

先日、野田前財務相が民主党の代表になり、次期首相として国会の承認を得た。今までの政治のていたらくを何とか是正してもらいたいと願う。わずかな期待は、国民の反発を恐れ財政健全化に着手すらしなかった中で、増税もやむなしという主張である。震災からの復旧と復興、社会保障と税の一体改革、成長分野への積極的予算投入である。国民の70%が次世代の過剰負担を避け、財政健全化のために増税を支持している。このような国は他にない。国民は充分理解しており、国力もある。2015年から2019年には、日本経済が再興する基盤が作れるはずではないだろうか。
世界的経済停滞が予想される2015年から2019年の間、日本も低成長にならざるを得ないが、このような時期こそ日本の底力と相対的経済力の強さが活かされるのではないだろうか。日本にはその力が充分にある。

技術革新、実体経済、震災経験については次回に譲ることにした。