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サスティナビリティ(138)
2020年~2024年 「世界規模の環境被害の5年間」(8)
更新日:2012年03月15日

    

 「農業革命、産業革命、IT革命に続く第4の革命として“自然エネルギー革命”」が進行中である」。3月8日、東京お台場の日本科学未来館で開催された「コミュニテイ・パワー会議」で、主催者の飯田哲也環境エネルギー政策研究所所長は、穏やかながらも確信に満ちた口調で挨拶された。
 東京出張の日程とうまく合った事もあり、同会議に出席することができた。会場は階段式の半円形で大学の講堂のよう。久しぶりの講義を受けた感じであった。300人程入る会場は3分の1ほどの入りで、海外からも講師を呼んでいる割には参加者が少なかったのが、いささか寂しい思いであった。
 飯田所長は再生可能エネルギーの旗振り役で、活動の理論的な支柱になっている。最近は各地での講演やテレビ出演で第4の革命を強く訴えている。今回のコミュニティ・パワー会議で飯田所長は、日本が立ち遅れている中、世界の自然エネルギーは急速に拡大していると指摘していた。
 「昨年の世界の自然エネルギー投資は20兆円を超え、過去10年で20倍に拡大している。風力発電は昨年、前年比20%アップの4300万キロワットの新規発電量が加わり、累計では2.3億キロワットにまで拡大している。原子力発電の世界電力発電総数3.6キロワットであるので急速に近づいており、ここ3年で追い越す見通しである一方、太陽光発電は昨年40%の勢いで増え、累計では7300万キロワットとなった。太陽光発電も7、8年後には原発の発電総量を追い越す勢いだ。このような中、世界で日本だけが再生可能エネルギーの普及活動では足踏みしており、一部では後退さえもしている。悲惨な3.11の震災後、今までの日本の電力政策が間違っていたとの認識が広がり、明確に自然エネルギーの方向しかないとの合意ができつつある。歴史には偶然と必然が折り重なっているが、震災当日の午前中に“再生可能エネルギー固定買取制度”が閣議決定された。本年7月には買取価格が決定される見通しである。日本でも、原子力や化石燃料に頼らない自然エネルギーが本格的に開始される予定になっている。ここで重要なのは、大企業による大規模で垂直的なエネルギーではなく、小規模・分散型で地域の景観や自然環境に配慮した発電システムが大きな意味をもつことだ。このためには、コミュニティ・パワーが最も重要な役割を担うことになるだろう」。概要、このような話をされた。

 今回の「コミュニティ・パワー会議」のため、海外から自然エネルギー普及活動で活躍している著名な3名の方々が来日され、それぞれの分野で基調講演をした。本ブログでは印象に残った講演を紹介したい。紹介するのは、デンマークから来られたソーレン・ハーマンセン氏で、昨年のNHKでもその活動がドキュメンタリーで報道されており、ご覧になった方もおられるだろう。
ハーマンセン氏はサムソ・エネルギー・アカデミーの代表で、10年間で自然エネルギー100%を実現したプロジェクトを率い、世界的にも注目されている。
 少しバックグラウンドを紹介する。デンマークは自然エネルギーの取り組みで先進的な役割を果たしており、2030年までに温暖化ガス(CO2)を1990年レベルから半減することを決定している。広く国民の支持を得るべく市民の参加を呼びかけ、翌1997年「2008年までに自然エネルギー100%を目指す島」というコンペティションを募集した。
 実施に当たっては地域社会と市民の協力による取り組みが求められていた。このコンペティションに応募し、指定されたのがサムソ島とその地域の人々である。サムソ島は美しい自然と豊かな文化を持つ島で、人口4400人、面積114平方キロメートル、観光と農業が主要産業でジャガイモが名産品という北欧の小さな島である。日ごろ農業にいそしんでいる村人が協同組合を作り、2008年までに自然エネルギー100%という世界で誰も実現できなかった目標に取り組んだ。
 目標の期限であった2008年までに、大型陸上風力発電設備11基を設置し、島で必要とされる電力を全てまかない、バイオマス・太陽熱・余剰熱利用で地域暖房を100%供給し、10基の洋上風力発電で島内の運輸部門のエネルギーを代替し、自然エネルギー100%を見事達成することができた。さらに、島外にも余剰電力を販売している。
本プロジェクトの総投資額は7800万ドル(約65億円)で、デンマーク国家とEUも15%相当の投資を行ったが、大部分を占める85%は島内外の企業、この目的で設立された協同組合、自治体、さらには島の住民からの投資である。まさに4400人の人口という地域コミュニティがこの大プロジェクトを成し遂げたのだ。
 ハーマンセン氏は「自分は農家でした。父も祖父もそうでした。ただ、今は違います。自然エネルギーがサムソ島の主要産業の一つに成長し、私も携わっています。今回のプロジェクトの目的は島の復興であり、雇用の創出で人口減少を食い止めることでした。我々は専門家でないので、各分野からの指導を仰ぐとともに、コミュニティの強固なネットワークで知恵を出し合ってそれを共有してきました。今では、多くの雇用が生まれ、個人で所有している風車からの収入を得る島人もあり、また島外に余剰電力を販売することで島も以前より豊かになりました。立証されたテクノロジーを採用し、風況や太陽光の具合を徹底的に調査し、個人別の具体的なアクションプランを作成し、問題が発生したときにはそれを解決すべく全員で取り組みました。地域コミュニティの力を結集したのが成功の要因でした」と話しておられた。

 「サムソ・エネルギー・アカデミー」の努力に深い敬意を表したいと思うが、この成果を得るにはサムソ島の人たちの努力だけではなく、国の明確な方向性と、規制が緩和されている電力供給の仕組みがあったからではないだろうか。デンマーク政府の「2030年までにCO2を50%削減するという方向性、発電主体の企業や個人に利益がもたらされるような固定価格買取制度、電力をすべて買い取り送電網に開放する仕組みがあったからなのだろう。これにひきかえ、買取電力量そのものがあまりにも少なく、送電網の容量不足による受け入れ制限・電力安定化設備がないための買取制限が厳しく、固定買取価格がまだ決まっていない状態が現在の日本の姿だ。このままではコミュニティの努力任せで自然エネルギーの拡大は不可能である。
 発電と送電の分離、もしくは送電網の拡充と無制限の電力受け入れに向けて政府・都道府県は中・長期の方向性を早急に打ち出す必要がある。

 サムソ島は10年間で化石燃料から100%自然エネルギーに転換することができた。4400人の村だからという意見もあろうが、環境が整えば北海道でも自然エネルギー比率を20%、30%、50%と引き上げることは可能である。
 北海道には、風力、メガソーラー、地熱、バイオマスという膨大な天然資源が眠っている。2024年まで、サムソ島と同じく10年が我々には残されている。この間、国のエネルギーミックス政策も脱原発とCO2削減の大きな声の中で変わっていくだろう。中東からの化石燃料輸入も地政学的に戦略を見直さなければならなくなる。
地域独占による大規模・垂直的電力供給も見直されると思う。排出ガス規制の強化に伴い、クリーンエネルギー需要が東京などの大都市で増加し、北海道は再生可能エネルギーの有力な供給源になるだろう。技術の急速な進歩により、自然エネルギー発電の設備投資は大きく抑えられ、地域送電網や北本連携などの長距離送電網も短期間で大容量の電力を送れることになる。
 7月に発表される自然エネルギー全量買取制度の詳細がどのような内容になるか見守りたい。