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サスティナビリティ(137)
2020年~2024年 「世界規模の環境被害の5年間」(7)
更新日:2012年03月01日

    

「毎日真冬日で寒くて大変だよ」、「こっちは雪もなく、昨日(7月27日)は摂氏14度だったよ」。ニューヨークに住んでいる息子一家とのスカイプ通信でのやりとりだ。昨冬(2010年)、ニューヨークは190年ぶりのクリスマス寒波に見舞われた。昨年は同じ時期に氷点下14度だったから、今年は穏やかな冬になっている。寒暖の差が激しいのは世界中で共通しているようだ。

 頑健な地盤のマンハッタン島上に構築されたニューヨーク市は、地震や自然災害にめっぽう強い都市と言われている。しかし、温暖化が進む中、ニューヨーク市でも気候変動による大規模自然災害が懸念されている。2月17日に発行された「ネイチャークライメートチェンジ」誌によると、ニューヨーク市を襲う「100年に一度の大高潮」が、今後その頻度を高めるとのことである。温暖化によってグリーンランドの氷床が融解し海水容量が増加、その上に海水温の上昇で熱膨張による海面上昇が発生している。さらに、海面温度の上昇はハリケーンのエネルギー源にもなっていく。
「自由の女神」が望めるバッテリーパークは防波堤で守られているが、その高さは1.5メートル。カテゴリー3のハリケーンがニューヨークを襲うと、高波は5メートルにも達すると予想されている。この高波でマンハッタン島の南3分の1は水没する。ちなみに2005年に米国南部ルイジアナ州を襲ったハリケーン・カトリーナはカテゴリー3なので、温暖化が急速に進行している事を考えると、このレベルのハリケーンがニューヨーク市を襲う可能性は否定できないだろう。
 ニューヨーク市の重要インフラの多くは海抜3メートル未満に設置されているので、最大の弱点は海面上昇と高波・高潮である。たとえば、ラガーディア空港は海抜2.1メートルに位置しており滑走路は洪水で水没することになるだろう。
また、ニューヨーク市の下水道網は老朽化しており、高潮による洪水で下水の逆流が相次ぎ、また多くの地下鉄にも大量の水が流れ込むことが危惧されている。この浸水が地下鉄の軌道や地下ケーブルに流れると、高圧の電流で水は沸騰し、信号系統やポイントをショートさせる危険性がある。
 冬、ニューヨークの街を歩いていると、道路脇から水蒸気が漏れ出している光景によく出会わす。地下に張り巡らされている暖房用の蒸気の菅に割れ目ができているせいだが、さようにニューヨーク市のインフラは老朽化しているのだ。果たして2020年~2024年頃までに、災害対応は進展しているのだろうか。ニューヨーク州の橋の42%、391基のダムが崩壊する危険性が高いとも報じられている。

 一方、西海岸では、カリフォルニア州セントラルバレー(北はサンフランシスコ、南はロサンゼルス)も、危険度が高まっているとされている。著名な気候学者であり、米国「ウェザーチャネル」にもたびたび登場しているハイディ・カレンは、昨年(2011年)著した「ウェザー・オブ・ザ・フューチャー」で、「セントラルバレー・デルタ地帯の運河や堤防で、破局的決壊のリスクが高まっている」と指摘している。
 ここで指摘しているデルタ地帯は、サンフランシスコやナパ・ソノマ(葡萄酒で有名)の近くにあり、シエラネバダ山脈から流れるサクラメント川とサンホアキン川が合流する地点。豊かな水資源に恵まれ、カリフォルニア州の水供給の要となっている。デルタ地帯の水資源は、運河や堤防で管理されており、カリフォルニア州の人口の3分の2、そして広大な農地がこの水源を利用している。しかし、この運河や堤防は老朽化しており、地震や洪水の危険にさらされている。悪いことに、このデルタ地帯は太平洋沿岸に極めて近いところに位置している
地球温暖化でエルニーニョやラニーニャの発生頻度が高まり、“大型ハリケーンの発生”、“長期間続く豪雨”、“シエラネバダ山脈からの雪どけ水の増加”、“海水面の上昇”が重なると、運河や堤防は一気に決壊すると見られている。太平洋からの高波・高潮は決壊された堤防から運河に入り、飲料系とかんがい系の水脈に流れ込む。塩分を多量に含んだ水は、2500万人を超える住民の生活を脅かし、また1万6千平方キロメートルの農地(日本の全農地の3分の1に相当)を台無しにする。さらにサクラメント川やサン・ホアキ川とその支流に設置されている100以上のダムに損害をもたらし、電力に多大な影響をもたらす。
 この地域はカリフォルニア米の産地であり、またブドウや麦の収穫量も豊富であり、世界の食糧不足を引き起こす危険性が危惧されている。

 洪水、干ばつ、海面上昇、サイクロンなどの自然災害は南アジアにおいてさらに深刻だ。かつて、東パキスタンと呼ばれていたバングラディッシュは、最も深刻な被害を受ける可能性が高い。食料危機から環境難民が大量に発生し、それが大規模な地域紛争、さらにはインド・パキスタン・中国を巻き込んだ戦争の引き金を引く可能性があると軍事専門家は指摘している。バングラディッシュはヒマラヤ山脈を水源としているガンジス川の河口にあり、国境のほとんどをインドと接している。かつては黄金のベンガルといわれ、肥沃な土地と水に恵まれ、水田に適した土地であったが、地球温暖化がこの国を破滅に追いやっている。
 では、バングラディッシュはどのようなリスクを持っているのだろうか。
 第一に、狭い国土に世界で7番目という1億5千万人の人口を持っており、毎年2~3%の勢いで増加している点だ。国民の62%が農民で、新規産業への移行も試行しているが失業率は40%を超えており、アジアでも最も貧しい国の1つである。ここに大規模な自然災害が発生すると、食料を求めて環境難民が大規模に発生するだろう。
 第二に、国土の3分の2が海抜5メートル以下に位置している点。インド洋の海面上昇は進んでおり、2020~2024年には40センチ以上の上昇が予測されている。さらに、地球温暖化はインド洋に巨大なサイクロンを発生させ、高潮・高波はバングラディッシュを容赦なく襲うことになる。一度高潮・高波に襲われた水田は、塩害で農産物(特にコメ)の再生産が困難になり、収量も大きく落ち込むことになる。
第三は、モンスーンの変調である。南・東南アジア諸国は、モンスーンのもたらす恵みの雨で、豊かな穀物を育てて生活してきた。しかし、近年地球温暖化の影響でモンスーンの雨量に変動が出てきている。昨年のタイの洪水にみられるように、干ばつや洪水が頻発し農産物の収穫量が減少している。
 第四は、ガンジス川の氾濫による大規模洪水と、その後にくる流量の大幅減少による大干ばつである。ガンジス川はヒマラヤ山脈を水源にしていると先に触れたが、ヒマラヤ山脈の氷河が世界でも最も速いスピードで溶融している。2035年には消滅する可能性が高いといわれている。ヒマラヤ山脈の中腹には、「氷河湖」と言われる氷河から溶融した水が溜まった湖が多数存在する。氷河を離れた氷が崩れ落ちると氷河湖の水位がどんどん高くなり、最終的に氷河湖は決壊し、大量の水が一気に放出され下流に大洪水をもたらす。その下流にインドがあり、バングラディッシュがあるのだ。氷河が消失すると、ガンジス川の水量は大幅に減少し、さらなる災害“干ばつ”がおこる。恵みの水がなくなるのだ。

2020~2024年には、バングラディッシュの人口はおそらく2億人を超えているだろう。肥沃な土地と恵みのモンスーンを失い、さらに頻発する洪水と干ばつでコメの収量が激減し、2億人を賄うことはほとんど不可能になる。飢餓と無政府状態の中、数万人が国際支援の食料を求めて首都のダッカに移動するだろうが、支援も限度があり、その後隣国のインドへ難民が数百万人規模で押し寄せるだろう。イスラム教が大多数を占めるバングラディッシュとヒンズー教のインド間で宗教上の紛争も発生する可能性があり、またバングラディッシュと同じイスラム教のパキスタンと環境移民をめぐって印パ間対立が先鋭化する恐れもある。

今回のブログでは、2020~2024年に発生する可能性が論議されている米国とバングラディッシュでの自然災害例を取り上げた。これらは地球温暖化という人為起源で発生する自然災害だ。そして、これら地域のみならず、インド・パキスタン・タイ、中国なども、モンスーンの異変、ヒマラヤ山脈の氷河融解、海面上昇、強大なサイクロンの発生で同様な被害を被る可能性がある。特に農産物の被害は甚大になるだろう食料品を輸入に頼ることは不可能になってくる。日本、特に北海道において、農業の大規模化による食料品の自給率向上は待ったなしだろう。