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サスティナビリティ(136)
2020年~2024年 「世界規模の環境被害の5年間」(6)
更新日:2012年02月14日

    

 20年来の厳しい寒さと大雪もあり、さっぽろ雪まつりの雪像は輝くばかりの出来映えで初日を迎えた。しかし、二日目には予期せぬ暖気で「初音ミクちゃん」がかわいそうに崩れ落ち、負傷者が出る騒ぎになってしまった。やはり、初音ミクは実像(雪像)ではなくバーチャルが似合うのだろうか。
 雪まつりで圧倒的な存在感を示しているのが7丁目広場に創られた「タージ・マハル」。この日のため、インドの観光大臣が数十名のインド舞踊の踊り手や料理人を引き連れ、札幌を訪れた。関係者を集めた「インドの日」パーティが開催されたが、これを機に日印観光を盛り上げようというインド政府の意気込みが強く感じられた。インドは中国と並んで世界経済を牽引しており、2025年には日本のGDPを追い越すのではないかと予測するアナリストもいる。
サハイ観光大臣とプラサード駐日大使とお話をする機会があり、友人(インド人)の出身地プネ市と札幌について語り合うことが出来た。プネ市は「東のオックスフォード」または「東のシリコンバレー」とも呼ばれており、文化度も高く日本企業も数十社進出している地だ。観光大臣は「札幌とプネは規模的にも環境的にも似ており、相互交流が進めばいいですね」と話されていた。将来的に世界最大の経済規模になる国インド、そして学術の都市プネ。両市の交流が深まるよう、何かお役に立ちたいという気持ちが高まってきた。

 「初音ミクちゃん」を壊した暖気は2日ほどで消え去り、また寒波が押し寄せている。昨年12月の平均気温は東京で例年より1.5度低かったと報道されているが、札幌も同じ程度の気温低下になっているのだろう。地球温暖化といわれているのに寒冷化。一瞬不思議に感じるが、これも実は温暖化のせいであるらしい。
 日経電子版の記事によれば地球温暖化とは「地球全体の平均気温が均等に上がる」ことではなく、「平均気温の上昇で気候システムが変化し、予期せぬ異常気象が増える可能性が大きくなる」現象だそうだ。
今冬の日本全国の異常低温も、もともとは北極海の氷が融解し、北極海周辺の大気が暖まり上空の気圧が高くなる。そのせいで偏西風が蛇行しシベリア高気圧が強まる。シベリア高気圧の強い寒気が中国大陸から日本列島に南下して日本に寒波をもたらしている。したがって、温暖化による北極海の氷床融解が寒冷化の原因だ。
一方、ヨーロッパにも厳しい寒波が押し寄せており、2月5日現在で300名もの方が、寒さで亡くなっている。暖房による二酸化中毒による死者も加えると500名にも上るそうだ。先の寒冷化説明ではシベリア高気圧が強まり、強い寒気が中国大陸から日本列島に南下したためと説明したが、ヨーロッパの寒気はどのような理由によるものだろうか。

 一つの仮説をたててみた。それが、地球環境を激変させる「ティッピングポイント」で二番目に述べた「メキシコ湾流の変化」だ。メキシコ湾流は暖流で、大西洋沿岸のヨーロッパ諸国に温暖な気候をもたらしている。札幌の緯度が北緯43度に対し、パリ・ミュンヘン・ウイーンが48度と5度も高緯度にあるが、年間平均気温は札幌と比べて同等もしくは高めとなっている。まさにメキシコ湾流の恩恵に浴しているせいだ。
 そのメキシコ湾流が、温暖化のせいで変調をきたす恐れがあるということだから深刻である。メキシコ湾流は、太平洋・インド洋・大西洋を地球規模で移動する「海洋大循環」の一部である。「海洋大循環」は、赤道付近で暖められた海水が北極に向かって移動する。その間に次第に冷え、海水の密度と塩分濃度が高くなる。北極海近辺では密度が高くなった海水が一挙に海洋の深層域に沈み込む。この勢いが強く、ベルトコンベアの役割で「海洋大循環」となり、1000年程度の周期で太平洋・インド洋・大西洋をまたぎ赤道から北極へ、そして再度赤道へと大移動している。この大循環が地球各地に大きな影響を及ぼしており、ヨーロッパ各地の温暖な気候もこのおかげとされている。
 さて、この「海洋大循環」に変調が生じた時、ヨーロッパ各国はどうなるだろうか。穏やかな気候に恵まれていた南欧や中欧は、地球温暖化の中で厳しい寒冷化を迎える事になるだろう。
 北極海やグリーンランドの氷床や氷山が溶けていくと、真水なので海水の塩分濃度は下がり、また海温も高くなることで海水密度も薄くなり、深層域に沈み込む力が衰えてくる。そうすると、ベルトコンベアの役割で「海洋大循環」を動かしてきたエネルギーが一挙に弱まり、循環運動がストップする可能性がある。温暖な気候をヨーロッパ各地にもたらしてきたメキシコ湾流が止まってしまうのだ。ブドウなどの果物やオリーブ・レモンなどの柑橘類や野菜への影響は甚大なものになるだろう。
 IPCC(地球温暖化に関する政府間パネル)は、「まだ決定的なことは分かっていないが、充分に留意する必要がある」と報告書の巻末で指摘している。このまま地球温暖化が進み、北極海の氷床・氷山が融解すれば、2020年~2025年にかけてメキシコ湾流が止まることも現実味を帯びてくる。
 今回のヨーロッパ寒冷化が「海洋大循環」に何らかの変化が生じている兆しだとすると、充分に注意する必要がある。国債のソブリンリスクに苦しむ南欧諸国に、地球温暖化によって気候変動がさらに加わると、この地域の経済活動は大打撃を被ることになり、その影響は地球規模で広がっていくことになるのは間違いない。
サステイナビリティ(地球環境の維持)に真剣に向き合い、再生可能エネルギーの採用を推進し、京都議定書に規定されたCO2削減義務を2013年以降も継続して取り組んでいるのがヨーロッパ諸国である。日本もロシアもカナダも京都議定書の延長から脱落した。そのヨーロッパ諸国が、温暖化ガス排出による異常気象の一番の犠牲者になるとしたら、これほど皮肉な(申し訳ない)事はないだろう。日本はもっと発言力を強め、米国・中国などの主要排出国全てが参加する温暖化対策を早期に実施すべく、主導権を発揮しなければならないと心底思えてくる。

「海洋大循環」停止の影響は日本にも及ぶのだろうか。これはあくまでも私見であるが、日本への影響は少ないと思う。日本近海には「海洋大循環」とは別に黒潮が流れている。黒潮は偏西風(西から東への風邪)と貿易風(東から西)が北太平洋の中心でぶつかり、その部分の水位が高くなる。地球の自転もあり、高くなった水位は時計回りに移動し、日本の南岸に沿って流れる。これが黒潮で、「メキシコ湾流(海洋大循環)」が北極に近い場所で塩分と海水の密度が高くなって深層に潜り込む動きとは異なっている。したがって、地球温暖化で海水温度が高まり、それが日本列島の気温をいくばくか高める可能性はあるものの、寒冷化には結びつかないのではないかと思われる。
さらに、北海道東岸にはプランクトンが豊富な親潮が流れており、多くの海の恵みを提供してくれる。日本列島、特に北海道は2020年~2024年にかけても、海洋大循環停止による気候変動の影響は極めて限られたものになるだろう。

 今日はバレンタインデー。カチカチに冷え切ったチョコレートのひとかけらでもありつけないだろうか。