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サスティナビリティ(132)
2020年~2024年 「世界規模の環境被害の5年間」(2)
更新日:2011年12月15日

    

 「北アフリカ諸国で連鎖したジャスミン革命」、「南欧諸国の過剰債務に端を発したソブリンリスク」、「新興国の成長鈍化懸念」、「米国の格差抗議のデモ」、「東日本大震災と福島第1原発事故」、「タイの大洪水」。世界をそして日本を激震させた事件や事故が相次いだ2011年も半月を残して終わろうとしている。新たな年こそ希望に満ちた年でありたいと願うところだが、どうも地球規模の政治・経済・環境の構造そのものが壊れつつあるようで、悲観的な見方になってしまうのは残念だ。

 南アフリカ ダーバンで開催されていたCOP17(気候変動枠組条約第17回締結国会議)は、2日間の延長の末12月11日に終了した。米国や中国を含む新たな枠組み「ダーバンプラットフォーム」の作業部会が設置された。このことで歴史的な成功だとの報道もあるが、少なくとも2020年までは、最大の排出国である米国や中国は自主努力のみで義務を負わないことになる。
 日本も京都議定書の排出義務を負うことなく、2年前に国際公約した「2020年までに1990年対比25%削減」もどこかへいってしまった。地球温暖化対策が遅々として進まない中、環境変化が各地を襲い始めている。

 IPCC(国連気候変動政府間パネル)が2007年に発行したレポート(R4)では、2100年における海面上昇は1990年に比べ0.18メートル~0.59メートルと予測していたが、最近の研究報告(北極評議会)では0.9メートル~1.6メートルに達する可能性があると指摘している。
 2020年までに世界が一致して地球温暖化ガス削減に取り組むことが困難になってきたことで、海面上昇はさらにその速度を上げてくる可能性がある。今回のCOP17の会議でツバルなどの小島嶼国は、国土そのものが海中に没する危険性を必死に訴えていた。2020年~2024年の間にその悪夢が現実化する危険性が高まっている。
 また、世界の気温も前回紹介したように2025年には2度上昇する可能性も出てきた。2度の上昇で、大気・海流が劇的に変化し、世界各地で干魃、大洪水、台風・ハリケーンの大型化などの気候変動が顕著になってくると指摘されている。
 2020年までに抜本的な対策が主要排出国で講じられない見通しとなり、2020年~2024年に予想される「世界規模の環境被害の5年間」は、その被害をさらに広げることになるのではないかと懸念される。

 ただ一方において、この動きを日本の環境技術を新たな成長分野として捉え、早急に取り組みを開始するタイミングだともいえる。日経新聞の12月14日版には、「2020年以降、中国も米国も排出量削減義務を負った枠組みに参加することで、省エネ技術や高効率機器の需要は一段と増える。これに先手を打つことがビジネスの勝者になる条件」と、日本企業の選択として「温暖化対策を緩めるべきではない」との記事が掲載されていた。

 日経の記事では温暖化対策に企業戦略として積極的に取り組んでいるソニーの例が載っていたが、たまたま同日、経済産業省北海道経済局の主催で「カーボンオフセット事例セミナー」が開催され、ソニーのエネルギー・ソリューション課の方から発表があった。
 ソニーは”ROAD to ZERO”と銘打った環境計画を推進しており、2050年に環境負荷ゼロを目指して取り組んでいる。本計画は2010年に発表され、今回は2015年までの中期目標について講演された。中期計画の目標は、技術開発、事業活動、商品企画・設計、物流、調達、回収・リサイクルの各分野別に設定されており、事業所の温室効果ガス排出量では2015年度までに絶対量を2000年度対比で30%削減することになっている。ちなみに、2010年度ですでに2000年度対比で31%の削減を達成している。
 そのソニーが温室効果ガス削減で取り組んでいるのが、グリーン電力証書と国内クレジット制度の活用だ。グリーン電力証書は、風力発電・太陽光発電・バイオマス発電などの再生可能エネルギー事業に出資し、その見返りに出資相当分のクリーンな電力を使用したと見なす制度である。一方、国内クレジット制度は、ソニーのような大企業が中小企業に資金・技術を提供して温室効果ガスの削減に協力し、その結果削減されたCO2が認証委員会で承認されると、その分を大企業は自社の削減実績としてカウントできる。
 ソニーの場合、秋田県能代市の風力発電所・バイオマス発電所などでグリーン電力証書を取得し、国内クレジットでは新潟県十日町市や静岡県などの中小企業を支援し、重油ボイラーを木質バイオマス燃料に変えることで温室効果ガスの排出を削減している。網走郡の津別単板協同組合のバイオマス・エネルギーセンターからも、1,800万kWh/年の電力証書を得ている。

 東京都は2010年から環境確保条例を発効し、小規模企業を除き2014年までに8%の温室効果ガスの削減、2019年までにさらなる8%の削減を義務づけている。達成できなかった場合には罰則が適用される。この条例に定められている削減義務率を達成するため、東京都の各企業は必死に温暖化防止策に取り組んでいる。明年以降、首都圏の各県、京阪神の各県にも拡大すると思われる。
 また、企業にとって温暖化対策に具体的に取り組んでいることが、「社会的責任」を果たしていると評価されSRI:社会的責任投資の対象企業と見なされる。SRIは欧米での運用資産が数百兆円規模もあり(日経新聞12月14日)、国際展開企業にとって温暖化防止策は融資を受けるにあたっても不可欠な条件になっている。

 さて、大手企業が温暖化ガスを削減するために、グリーン電力証書や国内クレジットを取得する場合、取得先として最もそのポテンシャルを有している地域はどこだろうか。それは間違いなく北海道だろう。北海道は、風力発電・バイオマスで最も豊かなポテンシャルを有している地域である。この有利さを道外、特に関東・関西の大企業に大いに売り込む必要があるだろう。2020年までに、北海道でグリーン電力証書・クレジット・オフセットの事例が多数実現できたなら、環境関連の産業が集積されることになる。そして、最も大事なのはその間の経験と実績が更なる省エネ技術や高効率機器の進化に結びつくことだ。2020年から米国・中国も参加して世界的に開始される温室ガス削減の流れの中で極めて有利な立場を構築することだ。

 セミナーの開催された同じ日に、2014年度に向けた風力発電の電力購入の拡大に関する説明会があった。現在の36万キロワットを56万キロワットにする計画だ。原子力発電の継続の是非が論じられているときに、次世代の電力として注目されている再生可能エネルギーの拡大枠がわずか“20万キロワット”である。さらに、発電の安定化のため、出力制御は事業者が担わなければならないとの条件までついている。このような条件は他の国に存在するのだろうか。スマートグリッドを本格的に採用しないまでも、送電網の制御で可能なはずである。なぜ電力会社はいやいやながら、ごくごくわずかの電力拡大で、さらに出力制御の条件までつけるのだろうか。

 北海道は、日本の風力発電導入可能量の半数を持っており、風力発電王国になる可能性が最も高い地域である。道外の大手企業は温室ガス排出量を削減するため、クリーンなエネルギーを求めている。北海道からクリーンな電力を提供できた場合、その電気はプレミアム価格で売れるはずである。
2020年に向けて、今方向性を決めなければならないのは、第一に風力発電の購入を明年7月に発行される「再生可能エネルギー全量買い取り制度」を遵守して全量買い取ることであり
 第二に、再生可能エネルギーの安定性を高めるため、送電網の再整備を行うこととスマートグリッドの導入を進めること。そして蓄電池や揚水発電を真剣に検討すること。
 第三に、北海道と本州と結ぶ海底ケーブル(北本連系)を現在の60万キロワットから数百万キロワットに増設すること。
 第四に、北海道を先進的クリーンエネルギー供給基地とすべく、道・市町村で連携して取り組むことではないだろうか。

2020年~2024年に北海道が世界に注目される環境王国になれるかどうかは、2012年の方向性にかかっている。