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サスティナビリティ(148)
2020年~2024年 「世界規模の環境被害の5年間」(19):まとめ-2
更新日:2012年09月03日

    

 台風15号が8月26日沖縄を直撃した。最大瞬間風速70メートルという観測史上最強クラスの勢力だった。動きが遅く27日にかけて強風と豪雨にさらされた沖縄の方々のご苦労はいかばかりであっただろうか。
台風15号が沖縄に上陸した時点での最低気圧は910hPaと報道されている。このクラスで比較されるのは、2005年8月に米国南部を襲ったハリケーン・カトリーナではないだろうか。カトリーナは最低気圧902HPa、瞬間最大風速78メートルと記録されているが、フロリダ半島に上陸した時点では920hPa、65メートルであったので、今回の台風15号は、ほぼハリケーン・カトリーナに匹敵する規模と言っていいだろう。
 カトリーナが残した爪痕は、死者1836人、行方不明者705人、被害総額100億ドル~250億ドル、被災者数十万人に及んでいる。自然災害の恐ろしさと、それをもたらす可能性の高い地球温暖化を米国人に気づかせたのがカトリーナである。
 カトリーナによる被害は、米国人にとって今も悪夢として心の底に残っている。老人ホームでは管理者がいち早く逃げ出し、自力で非難できなかった高齢者の多くが犠牲になった。刑務所では看守が不在で多くの受刑者が行方不明となった。食料品店は略奪の標的になり、女性は辱めを受け、銃撃戦も発生し、市内は無法地帯と化した。避難場所で感染性の病気が蔓延し、病死する人たちも相次いだ。これが世界で最も文明が発達していると思われている米国なのかと、疑われるような事態が続発した。
カトリーナとほぼ同じ規模の台風が襲来した沖縄ではどうだったろうか。木々が根こそぎ吹き飛ばされる暴風や、2日間で800ミリを超す豪雨に見舞われたにもかかわらず、今のところ悲劇的な被害は報告されていない。これはひとえに過去数百年にわたって自然災害に直面し、その中で積み上げられた諸対策、沖縄県人の知恵、そして地域に住む人たちと行政の連携なのではないだろうか。
 昨年の東日本大震災の時も、世界は日本人の倫理感に基づいた規律のある行動に驚き、賞賛を惜しまなかった。自然災害大国の日本では常日頃の準備と心構え、そして素早い行動が(他の諸国と比べ)身についているのではないだろうか。これが、2020~2024年にかけて世界を襲うと思われる自然大災害に対し、日本の被害を最小に押さえ込むことができる要因と思いたい。

 大気中の温室効果ガスは地球の自転と偏西風・貿易風で世界中に拡散するので、日本だけが地球温暖化による自然災害から逃れることはできない。この期間、日本に深刻な影響を及ぼすと思われる地球温暖化現象は、第1に海面上昇、第2に台風の大型化、第3に年間平均気温上昇、そして第4に大陸からの有害物質を含んだ砂塵(黄砂)の襲来があげられるだろう。
 日本は四方を海に囲まれているので、海面上昇は直接的な影響を受ける。日本の海抜ゼロメートル地域は、関東平野、中部の濃尾平野、大阪平野、九州の筑紫平野など日本の産業中心地に存在しており、東京都湾岸部の海抜ゼロ地帯には150万人が生活している。海面が数十センチ上昇すると、そのゼロメートル地域はさらに拡大するだろう。地球温暖化に伴う海面上昇は、台風に伴う高潮や津波による被害をさらに深刻なものとするだろう。1959年9月に発生した伊勢湾台風は、濃尾平野の海抜ゼロメートル地帯を襲い、5000名を超える死者・行方不明者を出した。前述したハリケーン・カトリーナによる被害が甚大であったのも被災地のニューオリンズが、海抜ゼロメートル地帯に位置していたからである。仮に2020年~2024年の海面上昇が数十センチ程度であったとしても、防潮堤などの設備が完成していなかったなら被災する範囲はさらに広がることになる。

 今般の台風15号に見られるように、赤道近辺の海面気温上昇で台風やハリケーンが大型化する可能性が今後高くなると予想される。これにエルニーニョやラニーニャによる大気の変動も加わることになるだろう。台風の通り道にもなっている日本列島は、厳しい影響を受けると覚悟しなければならない。

 第3は年間平均気温の上昇。2000年と比べこの時期日本の平均気温は1.5度から2度ぐらいは上昇していると考えられる。夏季は連日猛暑日や熱帯夜となり、気圧の変動でゲリラ豪雨や竜巻が頻発するのは容易に考えられるが、それ以上に生活を直撃するのが農産物や植生への影響だろう。関東以南での農作物収量は減少が見込まれ、食料不足になる恐れがある。輸入しようにも海外の主要な生産地は、どこも干ばつ等の自然災害で、農業生産は著しく落ち込んでいると推測される。

 これらの地球温暖化が日本にもたらす影響に対し、今後の10年間でその対応策を打ち出さなければならない。昨年の東日本大震災は我々に「身を引き締めて将来の不測の事態に対応しなければならない」との意識をもたらした。その意識を風化させることなく準備を怠らなければ日本は克服することができるだろう。

 第1から第3の予想される自然災害に比べ、第4の「大陸からの有害物質を含んだ砂塵の来襲」は最も対応が難しい問題だ。中国大陸の砂漠化は地球温暖化による干ばつ、農地拡大のための森林伐採、ヒマラヤ氷河融解による河川の流量減少で、その規模が拡大し、スピードが速められていくだろう。さらに石炭火力発電所の煤煙、乗用車からの排気ガス、化学工場から排出される有害物質は空中に飛散し、砂塵と一緒に黄砂となって日本にも降り注ぐ。気候変動の影響で、偏西風は強さを増し、春を中心に関東以南に全く遠慮することなく降り注ぐことになる。朝鮮半島ではすでに幅数㌔にわたり、高さ10メートルを超す黄砂の波が押し寄せているが、日本への影響も環境、衛生、健康の各分野で顕著になっていくだろう。黄砂対策に今から真剣に取り組む必要がある。

 本ブログでは地球温暖化による気候変動で世界、日本、北海道にどのような影響を及ぼすかを取り上げており、予測不可能な地震や津波には触れていない。しかし2020~2024年に大震災が発生する可能性も否定できない。
 8月29日、内閣府の有識者検討会は「南海トラフ」(東海地震、東南海地震、南海地震の範囲を2倍に拡大)を震源地とする巨大地震の被害想定を発表した。最悪のケースで32万1千人が死亡し、238万6千棟が全壊・消失するという衝撃的な内容である。しかし、同時に「減災対策」を実行した場合、死者は6万人に減少するという試算も発表している。
 要は「想定外」ではなく、あらゆる可能性を考慮した「減災対策」を今から講じていった場合、被害を最小限に抑えることが十分可能になる。
東日本大震災を受け、「国土強靱化計画」や「防災ニューディール」が検討されている。生活や産業の基盤が根こそぎ自然災害で破壊されるようなことが二度と起こらないよう、2020年までにこれらの計画を実現することが重要だろう。日本は自然災害大国である一方、世界に冠たる防災大国を目指すのだ。防災の技術と実績を世界各国に広めることで、産業の振興も期待できるだろう。そのためには従来の公共事業を脱し、災害予測、緊急情報、ハイテクを活用した防災設備など、日本の得意とする情報技術と土木技術の粋を結集した防災設備にする必要がある。

 2020年~2025年は「世界規模の環境被害の5年間」であるとともに、世界が地球温暖化のもたらす自然災害の脅威を強く自覚し、地球温暖化対策に取り組みを開始する5年間でもある。
 この間に、再生可能エネルギー、上下水道インフラ、タービン技術、各種省エネ技術、排気ガス抑制技術など、日本が先頭に立っている技術をさらに進化させることによって、「世界的規模の環境被害」に遭遇している各国に力強い支援を提供することができる。
 1945年の終戦から40年かかって世界第2の経済大国にまで復興させ、その後の40年間で日本は世界での競争力を大きく落とし低迷が続いたが、2025年は再復興のスタートの年になる可能性を有している。