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サスティナビリティ(145)
2020年~2024年 「世界規模の環境被害の5年間」(15)
更新日:2012年07月02日

    

 前回のブログ発行後いろいろなことがあった。まず、6月17日(日曜日)には「小樽運河ロードレース」で「60才以上と小学生の部」に出場し、何とか完走することができた。日ごろの徒歩通勤が効いたのかと自分自身で納得しているが、孫のような小学生たちの半分ほどにスタート直後から大きく引き離され、途中、残りの子供たちにも次々と追い抜かれるというのが実態であった。次回は、「70才以上と幼稚園児の部」ができれば、参加して優勝を狙いたいと思っている。
 6月22日には当社「創立50周年祝賀会」が開催され、政・官・財から多くのご来賓をお迎えした。ご多忙のところ、また遠路おいでいただいた方々に深く感謝申し上げたい。節目の行事が終わり、いささか落ち着いたところである。

 前回に引き続き、ローレンス・スミス著「2050年の世界地図」について紹介したい。スミスは2050年には北緯45度以北の「ニューノース」地域が繁栄するだろうと予測している。この地域に含まれる国々は、米国北部、カナダ、ノルウェー、スェーデン、フィンランド、ロシア、それにアイスランドとグリーンランド(デンマーク領)の8カ国である。
 これらの地域の「繁栄」はあくまでも相対的なものと理解した方が良さそうだ。前回説明したように、地球温暖化による気候変動は熱帯・亜熱帯・温帯地方など現在すでに人口が密集しており、今後さらに増加が見込まれるこれら地域に厳しい災害をもたらす可能性が高い。IPCCによる各種データはその危険性を指摘している。海面上昇によって主要港湾都市(東京、名古屋、大阪、ニューヨークなどを含む)が甚大な水害もしくは水没するかもしれないという。
干ばつとかんがい用水不足による食料生産の著しい減少。温暖化による植生の北への移動。2050年には92億人に増えると予想される世界の人口に対し、人々を養うことが難しくなる水不足。大型台風・ハリケーン・モンスーンの頻発による風水害。
北緯40度以南の人口増加と自然災害の多発が、「ニューノース」を相対的に優位な地域に変化させていく。それらに加えて重要なのがエネルギー資源の獲得競争だとスミスは指摘している。
 2050年には世界人口が現在より20億人以上増えるが、そのほとんどが農村地帯から都市に移動することになる。生活の中流化が進み、新興国や発展途上国の人達が先進国と同じようにエネルギーを消費するとすれば、人口1050億人分のエネルギー需要が生まれると予測している。現在と比べて15倍にもなるエネルギー資源をどのように調達することができるのだろうか。それともエネルギー資源無しにどのような生活ができるのだろうか。 スミスは革命的(革新的ではない)な新技術が2050年までに生まれないことを前提に、各種エネルギーに対し、次のように評価している。
 まず石炭。
CO2発生の最大の元凶である石炭は、その埋蔵量からして今後も消費は2倍に増える可能性があると指摘。現在、石炭による火力発電は世界全体の40%を占めているが、中国を中心に石炭火力発電所建設の勢いは続いている。
問題はCO2を発生させないことであり、CCS(炭素回収・貯留)がその切り札として研究開発されている。しかし、貯留に適した地層が限られており、果たして数百年間も外部に露出せずに貯留できるかどうかなど、解決すべき点が多数ある。2050年までに石炭火力発電の大部分がCCSで処理される可能性は極めて低い。
 第2に、石油。
石油は1バレル(約160リットル)で男性が8年間働くエネルギーに相応し、1951年に石炭を超えて化石燃料の王座になった。しかし、現在もオイルピーク(石油資源の枯渇)が論議されている。中東に大きく依存している石油も、イランはピークの生産量の半分になり、アラスカ、クウェート、北海、メキシコ油田も下り坂。最大の産出国であるサウジアラビアの埋蔵量は長年、過大申告したツケで、中東での生産量が激減する可能性がある。
 一方、シェールガスに沸く米国で同じ技術による原油(シェールオイル)の増産が鮮明になってきている。シェールオイルによる北米の石油生産量は、2035年にサウジアラビアの日量1000バレルの2倍以上になるとみられている。米国・カナダの資源面での比較優位が明らかになっている。
 第3に輸送用の燃料。
 現在、石油の70%が輸送用燃料として燃やされている。電気自動車(EV)が脚光を浴びているが、そのエネルギーは当面、石炭や天然ガスを燃料とする発電所からの電気。発電所では膨大なCO2が引き続き発生することになる。
 第4は究極の夢である水素エネルギー。
 太陽エネルギーを使って海水から水素を分離し、大気汚染も温室効果ガス排出も無しにクリーンな水素燃料と水をもたらす技術だ。しかし、水素は爆発しやすく、圧縮水素の衝突安全性はいまだ不明である。スミスは2050年までに〝水素経済〟に移行することはないだろうと結論づけている。
 第5はバイオ燃料。
 植物が吸収したCO2を相殺するわけなので、地球温暖化への影響が軽微とされる。米国ではトウモロコシをエタノール燃料として生産しているが、そのために農場では、肥料や農機の燃料として莫大な化石燃料を使用している。生産に要した化石燃料がエタノール生産を上回っているという説もあり、石油と大差がない。
さらに、食用との競合も問題である。食用以外の植物系、例えばおがくずやトウモロコシの茎を原料とする「セルロースを原料としたエタノール」に注目が集まっている。しかしながら大量に生産する技術はまだ完成していない。
 第6が原子力。
 「2050年の世界地図」の原本(英語版)が発行されたのは、福島第一原発事故以前であるが、スミスはスリーマイル島やチェルノブイリの例を挙げ、原子力発電に否定的な見解を示している。「事故とテロの脅威は依然としてつきまとっており、放射性廃棄物を10万年の間、安全な地層に埋めておくのは至難の業である」米国ネバダ州の貯留施設計画も20年間の研究と80億ドルを投じた末に白紙に戻っている。
 第7が水力。
 水力発電は世界の電力の16%をまかなっているが、ダム立地に適した土地はほとんど残っていない。さらに、ダム建設に絡んで川上の国と川下の国との間で水を巡る紛争が発生する危険性を指摘している。
 第8が再生可能エネルギー。
 風力と太陽光発電は今最も成長している分野で、デンマークでは20%近くに達しておりEU全体でも4%になった。しかしながら、世界規模で見ると全発電量の1%に届く程度だ。
不安定な電源を貯蔵する揚水発電や大型バッテリーの普及が鍵となる。今後、再生可能エネルギーは選択次第で10倍から50倍に拡大する可能性があるが、スミスは2050年までに既存エネルギーに取って代わる見込みは無いと判断している。
 第9は、天然ガス。
 スミスが最も可能性の高い選択肢としている天然ガスはすでに全発電量の20%を占めるに至っている。石油や石炭と比較し群を抜いてクリーンで、CO2の発生が抑えられることが優位点だ。スミスは、天然ガスへの移行は長期的エネルギー問題の一種のつなぎであると位置づけているが、シェールガス掘削技術の革新で、今や米国・カナダは中東に代わる燃料大国になろうとしている。ガス価格もシェールガスの大量生産で従来の10ドル超から2ドルを切るまでになった。新エネルギー源はよりどりみどりだが、2050年に至っても化石燃料に大きく依存していることに変わりないとスミスは述べている。
 そして、世界には未発見の天然ガスの3分の1が北緯45度より北の米国、カナダ、ロシア、北極圏に眠ったままになっているという。今後の技術開発如何では、その数倍の生産が見込まれる。
 ただ、天然ガスの最大のデメリットはガスであること。遠隔地に運ぶにはパイプラインシステムか液化して船で運ぶ必要がある。2ドルの天然ガスでも、日本に運ばれたときには液化と運送費で10ドルから12ドルになってしまう。
 反対に考えると、天然ガス田を国内に持つ国は資源大国として圧倒的な優位性を発揮することが可能である。
 スミスは、世界人口の増加に対応する食料と水の充足度、自然災害、特に海面上昇による水害や水没に対するリスク度、広大な土地と自然などに加え、天然ガスを中心としたエネルギーの確保の観点から「ニューノース」が、2050年における世界の社会・経済の中心として成長し続けるだろうと見ている。

 いくつかの面で反論したい点もあるが、スミスのロジックで見たときに、日本と北海道はどのようなポジショニングになるのだろうか。次回で述べたい。