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サスティナビリティ(33)
環境モデル都市下川町を訪問-(2)
更新日:2008年09月20日

    

 人口3,857人、日本の中心からも北海道の中心からも遠く離れた下川町が、横浜市や北九州市などとともに「環境モデル都市」に認定され、今全国から脚光を浴びている。前号で同町の取り組みを見てきたが、そこから私たちは何を学ぶべきだろうか。下川町を訪問して感じたことを私なりに述べてみたい。
 第一に、町の存続を期し、地域特性にあった産業を町と町民が一体となって取り組んでいる姿勢であろう。一時、下川町も北海道の他市町村同様、町村合併の問題に直面したが、2~3ヵ月かけ再生のための技術計画を策定した。「自然と産業が循環し健やかで活力のある町」を基本理念とし、森林(もり)を町振興の中心に据えた。これにより、合併せずに独自の町運営が可能とのビジョンを描くことができたのである。
 第二には、専門家の意見や指導を仰ぎ、それを真摯(しんし)に受け入れる姿勢だ。ヤナギからバイオエタノールを採取する取り組みでは先進国であるスゥェーデンまで行き、実地でその活動を研修している。また、各取り組みで道の指導を受けるとともに、関西の大学や大手企業とも連携しながら共同で取り組んでいる。
 第三には、卓越した発信力が挙げられる。「温暖化ガスの森林吸収」、「化石燃料の高騰」、「バイオマス活用」、そして「ヤナギからバイオエタノール」。今、高い関心を呼んでいるこれら取り組みを、タイミング良く報道機関や環境問題関連セクションに発信している。見事なまでのプロジェクト・プランニングである。どのようなプロジェクトでもそれを発信し認知されないと広がりは期待できない。
 第四には、取り組みに対する確信を全員が抱いていることが挙げられる。「時代は追い風」と安斎町長は話されていた。地球温暖化問題は、日本はもとより世界の最大課題になってきており、近年中には経済・社会生活に多大な影響をもたらすことは間違いない。下川町が取り組んでいるテーマはまさにこの分野である。森林(もり)が地球温暖化を阻止するとの揺るぎない確信が、町にも町民にもある。その確信が新たな取り組みへと広がりを見せているのだ。

下川町の取り組みを拡張し、さらに道内各市町村に広げ北海道再活性化を計るにはどうすればよいのだろうか。
下川町の取り組みを“ベストプラクティス(最も優れた事例)”“ケーススタディ”として取り上げることがまず考えられる。下川町と同じ環境の市町村は道内に多数あると思われ、市町村会や経済団体の会合で取り上げ、報道機関もアピールする必要があるだろう(もちろん当誌も積極的に報道する)。下川町の具体的事例でヤナギからバイオエタノールを生成するに当たっての費用と効果、間伐材利用(木材、チップ、ペレット)の経営内容等が共有化されることによって、やってみようという市町村が出てくることが期待される。
 次に考えられるのが資本をどう集めるかだ。ここで認識を新たにしなければならないのは、環境への取り組みは事業になるということである。日本の温暖化ガスは増え続けており、京都議定書の約束(2008年から2012年で1990年対比6%削減)を守るのは風前のともしびである。そのために、国や大手企業はCDM(クリーン・デベロプメント・メカニズム)を利用し、新興国で植林などの環境ビジネスを通じて排出権を得るか、国際排出権市場で排出枠を購入しなければならない。いま、国内CDMが論議されている。それが実現したならば、インドンシアや中国で植林する代わりに北海道で森林整備し、そこで吸収されたCO2を排出枠として売買することも可能になる。
 道が中心になって国内CDMの実現を働きかける必要があるだろう。その検討材料として、民有林を整備した場合のCO2森林吸収の量、輸入材に較べて道産材を使った場合のウッドマイレージ(木材を輸送するにあたって使用されるCO2)、化石燃料に較べて間伐材をチップ・ペレット・エタノールに利用した場合の削減効果等を産・官・学で分析し数値化することが必要である。
 国内CDMの実現が先になったとしても、カーボンオフセットという手がある。高知県では、間伐材からのバイオマス燃料で自家発電し、石炭発電に相当する排出量を県が取得し東京などの企業に販売している。排出枠が主要企業に適用される東京都では、すでに一部の企業が「カーボンオフセット」で、高知から取得した自社の排出量を相殺しようとしている。このような動きが今後本格的に広がってくるだろう。北海道の環境対策をいかに日本全体にアピール出来るかがポイントであり、下川町の情報発信力に学ぶ点は多い。
 下川町→道内各市町村への拡張→日本全体へのアピール→資本獲得の好循環に一旦落とし込むことが出来れば、“環境対策により北海道経済の活性化”へと繋がっていくはずである。このタイミングで下川町の真摯(しんし)な姿勢を道内全体が見習うことがカギとなる。