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サスティナビリティ(57)
「風・林・水・菜」-3風の巻-2
更新日:2009年06月10日

    

 今日(6月5日)は「環境の日」とのことだ。新聞各紙は環境特集を組んでおり、日経新聞では4面にわたって環境広告が掲載されていた。「低炭素社会実現に向けて」と題し、環境事務次官をはじめとした政府関係者、大学教授、産業界代表がそれぞれ地球温暖化抑制への提言を述べている。ただ、不思議なことにそのほとんどが再生可能エネルギーとして太陽光発電や電力会社が進めているヒートポンプに関するものだ。風力発電にはまったく触れていない。国や産業界を挙げて太陽光発電を推進しようとする姿勢が如実に表れている。政府は2020年に太陽光発電を現在の10倍、30年には40倍にして太陽光発電で世界一を目指すという目標を掲げている。これに関連して各種支援策を発表しているが、個人住宅の屋根にソーラーパネルを設置するという“自産自消”に対象が絞られている。
 実は、環境を語る者として実体験も必要だろうと、私も無理して自宅の屋根に太陽光発電用パネルを最近設置した。3.672kwの太陽光発電システムで、24枚のソーラーパネルが我が家の屋根に鎮座している。設置費用は245万円(税抜き)だが、国と東京都から補助金が出て(住所を札幌に移したので住居の所在する市からの補助金は出なかった)実質185万円強の負担である。現在、電力会社への売電は1kw当たり24円で、投資に対する回収には15-20年かかると言われている。明年度からその買い取り額を倍の50円にすると発表されたが、それでも10年近い年数が必要となってくる。政府は2020年には1000万世帯に太陽光発電を設置すると計画しているが、回収に10年近くもかかって200万円近い金額を投資する家庭がどれだけあるのだろうか。疑問が湧いてくる。個人の投資に依存した自然エネルギー拡大が日本の環境政策の柱で本当にいいのだろうか。ちなみに、買い取り価格を24円から50円に拡大し10年間固定化するという今回の制度は、家庭用太陽光発電に限られる。大量のパネルを設置する発電所タイプの太陽光発電や風力発電には適用されない。
 FIT(電力固定買取制度)の導入が日本でも限定的にせよ試みられるようになったのは大きな前進ではある。しかし、更なる適用拡大がなければ、最終消費エネルギーに占める再生可能エネルギーの比率を2020年までに20%にするという目標はほとんど達成されないだろう。
 それでは、世界に目を向けて再生可能エネルギーの状況をみてみよう。オバマ大統領のグリーン・ニューディール政策でも再生可能エネルギーの中心は風力発電である。
前回、デンマークは国内総電力の20%が風力発電によってもたらされていると書いた。それでは他の国ではどうなっているのだろうか。バークレー研究所が風力発電を利用している主要20カ国の国内総電力に占める風力発電のおおよその比率を2007年段階で調査・発表している。それによると、デンマークが1位で20%となっている。以下、
2位 スペイン:12%   3位 ポルトガル:9%   4位 アイルランド:8%
5位 ドイツ:7%     6位 ギリシャ:4.2%   7位 オランダ:3.2%
8位 オーストリア:2.8% 9位 インド:2.3%    10位 英国:1.8%
となっている。ヨーロッパ各国で風力発電の導入が進んでいるのは明らかだ。
日本は0.3%で中国に続き20カ国中19位に低迷している。
米国は13位で1.3%と低い水準に位置しているが、2008年には5000基の風力タービンを新設し850万kwを追加した。したがって、現在はほぼ2%の電力が風力発電からもたらされていることになる。これを2030年までに20%に引き上げるプロジェクトが進められている。
中国も、米国に並ぶ世界最大の風力発電市場を目指し、2020年までに1億kwの発電を目指している。
 このように風力発電が世界中で急速に伸びているのは、各国が風力発電にFIT(固定価格買取制度)を採用しているのがその要因と見られている。欧州では27カ国中20カ国がFIT制度を採用しており、米国でもオバマ大統領はカリフォルニア州の成功により全米に採用する方向である。中国も昨年FITに移行した。
 日本では「新エネルギー等の利用に関する特別処置法」で、電力会社は一定の再生可能エネルギーを買い取らなければならない。いわゆるRPS(再生可能エネルギー買い取り義務)方式である。ただ、その買い取り目標はあまりにも小さい。2010年までに全電力の1.35%、2014年までに1.63%を再生可能エネルギーにするというものだ。これは、現在同じくRPS方式の米国の各州と比べると、1桁以上の違いとなる。カリフォルニア州では2010年までに20%、ハワイ州では2020年までに20%、ニューヨーク州では2013年までに24%となっている。

ただ、現状に悲観ばかりしていては何も始まらない。地球温暖化問題に関連し、間違いなく大きな波が押し寄せてきており、潮目がはっきりと変わりつつある。日本においても風力発電は必ずや主力の新エネルギーになるはずである。その理由としては、
1.本年12月にコペンハーゲンで開催されるCOP15(第15回気候変動枠組み条約)会議で2020年までのCO2削減目標が論議され、決定されることになる。おそらく、日本は予想以上の厳しい削減枠を要求されることになろう。その削減枠を実現する
ために、再生可能エネルギーの利用拡大が一層促進されるだろう。
2.EUにおける再生可能エネルギー利用拡大の成果が次々と公表され、風力発電懐疑派に対し強い説得材料になる。
3.オバマ大統領が進めている風力発電を中心としたグリーン・ニューディールが開始され、雇用の拡大やCO2削減の成果が表れ、これにより風力発電産業が具体的に雇用を創出し経済を活性化させるものとして見直される。
4.昨年7月に140ドルを超えるまで暴騰し、その後暴落(1バレル30ドル台)した原油価格が、現在騰勢を強めている。現在は70ドル近辺まで上がっている。地球温暖化とともに化石燃料価格の高騰が再生可能エネルギーの見直しを促進する。
5.不安定といわれている風力発電の電力供給に、充電システム、配電システムで技術革新が進み、より安定した電力になってくる。
6.家庭での太陽光発電に適用されるFIT(固定価格買取制度)が、風力にも適用すべきとの論議が高まる。
7.国民の地球温暖化と再生可能エネルギーに対する関心が一層高まる。

 風力発電による北海道グリーン・ニューディールについては本ブログで、2008年11月から「オバマ次期大統領の環境政策と北海道」と題し8回にわたって連載している。その実現が近づいてきているのではないだろうか。
 幸いなことに、北海道(特にオロロン街道沿い)は日本でも最も風力発電に適した地域であり、また北海道電力は電力会社の中でも風力発電に対する取り組みが積極的である。