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サスティナビリティ(72)
「風・林・水・菜」-18まとめ-4
更新日:2009年11月10日

    

 前回紹介したキャップ・アンド・トレード方式の国内排出量取引は、その実現までに今しばらく時間が必要と考えられる。一方、すでに温暖化ガス削減に向けて2種類の公的な取り組みが開始されている。これら取り組みをうまく採用したならば、北海道の排出ガスが抑制されるとともに、大手企業の資本を引き出すことも可能になる。
 1つは環境省が推進している「オフセットクレジット」で、もう1つは経済産業省の進めている「国内クレジット」である。これらの取り組みについて北海道において今ひとつ盛り上がりが欠けているが、うまく採用するとかなりの資金が北海道に落ちる可能性があるのでここに紹介したい。豊かな「風・林・水・菜」を持つ北海道にとって、これらを有効に活用しビジネスに結びつけるチャンスでもある。
 まず、環境省の「オフセットクレジット制度」について私の理解しているところを述べたい。今まで、CDM(クリーン・デベロプメント・メカニズム)について何度か書いたことがある。CDMは、環境先進国がその技術を中国やインドなどの新興国・後進国に導入し、削減された温室効果ガスを排出量として取得できるもので、これは京都議定書で取り決められた。ただし、削減量の単位はCER(サーティファイド・エミッション・リダクション:認証された排出削減量)と呼ばれ、国際連合の機関で認定・承認されたものでなければならない。これに対し、VER(ベリファイド・エミッション・リダクション)というのがあり、こちらは第三者機関によって認証された排出削減量である。「オフセットクレジット」はJ-VERとも呼ばれている。JはJapanであり、日本国内での排出量削減努力に対し認定し評価するものである。環境省が「J-VER認証運営委員会」を設置し、ここで温室ガスの排出削減・吸収量の認定を行い、J-VERを発行する。発行されたJ-VERは販売することができ、クレジットオフセットなどに活用される。CDMが国際間での排出量取得の取り組みであるのに対し、J-VERは国内の取り組みである。したがって、北海道内の企業が温室ガス排出を抑制する取り組みを行い、それを「J-VER認証運営委員会」が認定したならば、大手企業からの資金投入やJ-VERの販売が可能になる。
 前回触れたように、東京都は来年から「温室効果ガス排出総量削減義務と排出量取引制度」が開始され、近々「国内排出権取引」もキャップ・アンド・トレード方式で始まることになろう。そうすると、大手企業は競って排出量を購入することになると思われる。これは北海道にとってチャンスである。うれしいことに「J-VER認証運営委員会」は、好ましい温室ガス削減プロジェクトとして、1)未利用林地残材を化石燃料の代替としてボイラーに利用、2)森林経営活動によるCO2吸収の増大、3)植林活動によるCO2吸収の増大、を取り上げている。さらに、今後は木質ペレットの燃料代替をも加える予定である。これらはまさに北海道の得意分野ではないだろうか。実際、下川町など4町は「森林バイオマス吸収量活用推進協議会」を設立し、J-VERの取得に向け活動を開始している。当別町では、町内の家庭や飲食店からでる廃油をバイオマス処理し、バスの燃料にする取り組みを「J-VER認証運営委員会」に申請している。これら取り組みが先導し、北海道でのJ-VERプロジェクトが次々と誕生するのを期待したい。
 一方、経済産業省が推進しているのが「国内クレジット」制度である。これは、大手企業が中小企業の実施する温暖化ガス削減プロジェクトに資金援助もしくは技術支援を行い、その結果削減された排出量を自社(大手企業)の削減目標に活用する仕組みである。すでに2009年6月時点で118件の申請が出されている。そのほぼ半数が工場におけるボイラーの燃料転換(重油から天然ガスや木質バイオマス)のプロジェクトが占めている。
その他の温室ガス削減プロジェクトとしては、ヒートポンプの導入、空調設備の更新、照明設備をLED等の省電力に変換などがある(経済産業省産業技術環境局)。
大手企業としては、商社・電力会社・銀行が半数を占めており、プロジェクトが実施される中小企業には工場・温泉施設・病院・学校・農家など多岐にわたった会社や公的機関が含まれている。
北海道では、阿寒グランドホテルのヒートポンプ導入(北電の支援)、帯広空港のボイラー更新(北電の支援)を含む6件の申請が上がっている。ただ、関東31件、中部25件、近畿15件の申請(09年6月時点)と比べると、極めて少ない申請数ではある。「国内クレジット」に関する認識が充分に普及していない点、さらに道外の大手企業へのアプローチ不足があるのではないかと思われる。
 冬期間の暖房のため、北海道では石油を中心とした大量の化石燃料が使用され、それによるCO2の排出量は膨大なものになっている。これを道外大手企業の資金導入によって軽減できないだろうか。大手企業は資金提供支援により自社排出量を削減でき、両者でウイン-ウインの関係ができあがる。特に、化石燃料の代替として木質バイオマス(ペレットやチップ)が使われたならば間伐材の活用にもなり、ひいては温暖化ガスの森林吸収にも結びつくことになる。昨年下川町を訪問したとき、町営温泉の燃料として重油の代わりに木質バイオマスを使用することでコストが大幅に減少したと聞かされた。今後、ますます騰勢を強める石油に対し、バイオマスの比較コストは低減していくことで、運用コスト面でも有利になるだろう。小中学校、公営施設、養護施設、温泉、野菜ハウス、工場、限定地域暖房、集合住宅など、木質バイオマスを利用した暖房設備の導入は大きな可能性を秘めている。もちろん、LED照明、太陽光発電、バイオマスを利用した農業などの分野でも大手企業の支援による温室効果ガスの削減プロジェクトは可能である。
 北海道のCO2が削減され、大手企業の資金で中小企業が活性化され、大手企業も排出枠を確保し、運用コストも低減される、という一石4鳥の効果も夢ではない。問題はいかにこれら制度を活用するかであり、大手企業と中小企業(地方公共団体を含む)の間で、需要と供給をマッチングするネットワークの構築が緊要であろう。