「情報を先取り、タブーに挑戦」を編集方針とし、生活者・企業経営者に
最新かつ有益な情報価値をご提供する、北海道の地域政治・経済誌

ロゴ

トップページ > 社長ブログ > 「風・林・水・菜」-15まとめ-1

長ブログ

このエントリーをはてなブックマークに追加

サスティナビリティ(69)
「風・林・水・菜」-15まとめ-1
更新日:2009年10月10日

    

 「温室効果ガスを2020年までに1990年比25%削減する」
9月7日の環境シンポジウムおよび9月22日の国連気候変動ハイレベル会合で発表された鳩山首相のスピーチは、世界各国から好感を持って受け止められている。米国や、中国・インド・ブラジルなどの新興国が共同歩調を取ることが前提ではあるが、世界に向けて発表した以上一部産業界の反対はあるものの、CO2削減に向けあらゆる施策を総動員した大胆な取り組みが開始されるのは間違いない。前回まで11回にわたって「風・林・水・菜」を連載してきたが、“25%削減”とどのような関係が出てくるのか。鳩山内閣の環境マニフェストを参照しながら予測していきたい。
 25%削減を実現するための第1の鍵は、太陽光・風力など再生可能エネルギー拡大に向けた取り組みであろう。その中核になっているのが電力の固定買い取り制度(FIT:フイード・イン・タリフ)で、「全種類の再生可能エネルギーを全量」を買い取る方向への転換である。欧州では27カ国中20カ国がFIT制度を採用しており、米国でもオバマ大統領はカリフォルニア州の成功により全米に採用する方向だ。中国も昨年に移行している。独・英国、スペインを始めとしたEU諸国では2020年までに全電力需要に占める再生可能エネルギーの割合を20-30%と設定した。着実に実現しつつあるのはFIT制度に負うところ大である。風力・太陽光・地熱などの再生可能エネルギーで発電した電力は固定価格で長期的にわたり政府もしくは電力会社が買い取るというもので、買い取り金額は電力設備の設置コストや運営コストを数年間から10年以内で回収できる金額に設定している。この制度により地域電力会社が多数誕生し、利益を伴った経営をおこなっている。もちろん、消費者にも相応の負担を課し、自然エネルギーの電力料は高めに設定されている。
 日本でも本年、太陽光発電に対しFIT制度が適用するとの閣議決定がなされた。早ければ11月から従来1kWあたり24円だった電力買い取り価格が48円に倍額されることになっている。麻生政権ではこの制度によって、太陽光発電量を2020年には現在の30倍にするという目標を打ち出した。ただ、前政権では「太陽光発電のみ、余剰電力のみ」に限定されていた。一方、鳩山政権では「全種類の再生可能エネルギーの全量」に対し適用するとマニフェストに記載し、それに従って実施する方向を明確にしている。
 日本では「新エネルギー等の利用に関する特別処置法」で、電力会社は一定の再生可能エネルギーを買い取ることになっている。いわゆるRPS(再生可能エネルギー買い取り義務)方式である。ただ、その買い取り目標はあまりにも小さい。2010年までに全電力の1.35%、2014年までに1.63%を再生可能エネルギーにするというものだ。これは、現在同じくRPS方式をとる米国の各州と比べると1ケタ以上の違いとなる。従来RPSという電力会社の買い取り枠によって制限されていたものが、FIT制度に移行されるとほぼ倍額で全量購入されることになる。ここに、北海道における大きなビジネスチャンスが誕生することになる。オバマ大統領のグリーン・ニューディールでも、風力発電を中心とした産業振興で数百万人の雇用を創出すると打ち上げている。北海道でのグリーン・ニューディールを再生可能エネルギーで実現できないだろうか。
 当社「財界さっぽろ」10月号“札幌で太陽光発電が普及しない理由”でも述べているが、残念ながら降雪の多い北海道は他の都道府県と比べ必ずしも費用対効果が高いとはいえないようだ。一方、“北海道の風”と広い大地は、風力エネルギーという豊かな恩恵を我々にもたらしてくれるものと期待できる。
 ただ、現状は必ずしも利点を生かしきれていない。北海道には63の風力発電事業所があり265台の風車が電力を生みだしている。その総出力は約26万kWで日本全体の14%ほどである。一昨年までは日本の都道府県で北海道が最も風力発電による発電量が高かったが、その勢いが止まっている。昨年中には1基も新規に稼働開始していない(NEDO技術開発機構)。その結果、1位の座を青森県に抜かれている。青森県内の風力発電事業所は北海道のほぼ3分の1だが、総出力は約28万kW。つまり、北海道の地域電力業者は比較的小規模で旧式な設備が多く、1台あたりの出力も1000kW以下の小型が主流である。
 日本は土地が狭く、風力発電には向いていないとの“通説”があるが、北海道は青森県の8倍の面積があり、風の強い日本海に長い海岸線を持っている。少なくとも現在の8倍の風力発電設備を設置する土地はある。新規施設が大型で最新の機器を採用することはもとより、旧来型の発電設備も順次2000kWの大型に切り替えていくことで、発電量を倍増させることも可能なはずだ。最近では洋上に固定もしくは浮上の風力発電設備の開発も進んでおり、その可能性は広がっていく。日本全体でみても、2008年末における風力発電の総出力は1854mWで、世界のわずか1.5%。国別順位では19位と低迷している。
 世界における風力発電事業の動きを見てみると、昨年は前年比28.8%伸びており、毎年20-30%超の伸びで推移している。その成長要因の一つとしてFIT制度があるとするならば、鳩山政権の打ち出す「全種類の再生可能エネルギーの全量」のFIT導入は、北海道の風力発電事業推進に大きな力となるだろう。風力発電が採算性の見込まれる事業と判断されたら、地域発電会社の設立、大手電力事業者の進出が充分に想定される。これにより、地域風力発電会社の設立、関連機器の製造、設備の土木・建築工事、機器の輸送、送電網の整備、土地の賃料、雇用の創出、税金収入といった北海道経済の中核ともなる新たな環境産業基盤が誕生することになるだろう。
 猛禽類や鳥類の衝突、風車から発生する騒音被害に関しては調査を継続し改善策を講じなければならないが、太陽光発電に比較しコスト効率の高い風力発電にもっと関心が高まっていいのではないか。