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サスティナビリティ(67)
「風・林・水・菜」-13菜の巻-5
更新日:2009年09月20日

    

  民主党の圧勝で衆議院選挙があっけなく終わった。今回の選挙では農業が争点の一つとして取り上げられ、民主党は「戸別保障制度」の創設による食料自給率の向上をマニフェストに掲げた。従来、米価を維持するため一定の減反を農家に要請し、減反によって余った水田を飼料用コメや麦などの穀物に転作した農家に補助金を出していた。ただ、コメ以外の作物の販売価格は安く、また転作政策に参加した農家も参加しなかった農家も米価は同じであり、必ずしも効果は上がっていなかった。「戸別保障制度」では、主食米は消費量に応じた生産数量を設定し、それに従った農家を所得保障対象とした。設定量以外は米粉米や飼料用米の生産にあて主食用米の7-8割の販売額を保障する。この方式を選択するかどうかは各農家の判断なので、自由度が与えられている。これにより米価は維持され、主食用米以外の穀物生産も拡大されるだろうという期待はある。しかし、前回述べたように北海道以外の農家の現状では広範かつ有効に適用されるとは思えない。ただ、経営意欲に溢れ、規模の拡大が進んでいる北海道の農業では生産の拡大につながるのではないだろうか。主食用米は全国的に評価が高まってきている上質米を、そして減反していた遊休地には飼料用米・米粉米・麦・大豆など輸入比率の高い穀物を栽培するとしたならば、生産性の向上も所得の向上も図れるのではないだろうか。バラマキとの批判があるが、規模のさらなる拡大にも結びつき、北海道の農業にとってはプラス要素だろう。
 今年の夏、上川、空知、十勝、網走地方を訪れる機会があった。一番印象に残っているのは車窓から見える農地の豊かさと美しさだ。空知・上川の水田地帯、十勝・網走のビート・馬鈴薯・トウモロコシ畑は、日本の食料基地としての存在感をこれでもかというように誇っており、緑や黄色で整然と大地を覆っている風景は感動的でさえあった。北海道では、農業が家業ではなく産業として確立しており、それをさらに成長してもらいたいという思いを強くした。数年内に世界規模の食料危機が危惧されており、その中で日本を救うのは北海道の農業に違いない。農村風景を見ながら次に様な思いが浮かんできた。

 ●まず、流通の改善だろう。現在、農水産物の取引は都道府県や地方公共団体が運営する公設市場で行われている。これを順次民間に移管できないだろうか。私も築地や太田の公設市場に何度も見学に行ったが、お世辞にも清潔な場所とはいえない。消費者への安全・安心のため、生産から物流にいたるまでは温度管理や品質管理が徹底されているが、公設市場に着いた途端それが忘れられてしまっているのではないだろうか。長い時間外気にさらされ、不衛生な床に並べられ、衛生対応が行われているとは思えない市場関係者によって処理され、市場では喫煙や唾棄が普通にみられる。生産者の苦労が全く活かされていない。せりも旧態依然の指を使ったものであり、こちらも生産者の苦労が正しく価格に反映されているとは思えない。インターネットを活用したり、トレーサビリティの利用によってもっと適切な価格付けができないものだろうか。大手流通業では公設市場を通さない相対取引が多くなっている。また農業法人設立で生産・流通・販売を直結する動きも加速しつつある。消費者はインターネットでブランド化された安心・安全な農産物を購入し始めている。このような動きを北海道の農業は先取りする必要があるだろう。

 ●北海道の利点を活かした循環型農業のさらなる推進も考えられる。CO2削減をグリーン・ニューディールとして農業分野に活用できないだろうか。“林の巻”でも触れたように、間伐は森林資源によるCO2削減効果を高めるが、間伐された下枝(とど松など)はバイオエタノールやペレットの原料として有効である。また、食品廃棄物や家畜の糞尿もバイオエタノールや堆肥(たいひ)として効果的である。これらにより、ハウス栽培の燃料や化学肥料が減量されCO2削減に寄与することができる。問題はコストであるが、経済産業省の国内排出権取引制度や環境省のオフセットクレジット制度(J-VER)を活用し、CO2削減に苦慮する大手企業から資金を広く集める仕組みを作ることを計画すべきだろう。また、石油や肥料の高騰が予測される今こそ、循環型への転換を急ぐべきなのではないだろうか。

 ●また、ITの活用も農業を活性化し、農家の方々の生産性を高めることに役立つだろう。センサー技術と位置情報システムによる温度管理や生育管理、インターネットによる出荷価格の検索(インターネット市場を構築しなければならないが)や、消費者及び流通業との双方向通信、農地情報を網羅したデータベースの構築による効率的な農地利用などが考えられる。廃校や使われなくなった建物を活用した「農業工場」でも、ITは活用される場は多いだろう。

 ●北海道の食料自給率は198%で都道府県1位であるが、これはカロリーベースであり、生産額ベースでは宮崎、鹿児島、青森の各県に続いての4位に甘んじている。大好評である北海道物産展の拡大などの普及活動を通じて、道産品ブランド力を高めることがますます必要になってこよう。また、加熱水蒸気処理で“おいしさ”を閉じ込めて輸送するなど、付加価値の向上に産・官・学で取り組むことが重要と思われる。

 ●働き手の確保は喫緊の課題である。本年8月13日に公表された農林水産省「平成20年新規就農者調査」によると非農家出身の新規就農者は7千人、新規参入者は2千人でそれぞれ21.2%と12%前年を上回っている。雇用就農者のうち66%が49歳以下である。農業を真剣に取り組もうという意欲に溢れた人たちが増えているのは力強い限りだ。しかし、新規就農者全体では6万人と前年を18%下回っており、依然として就農者は低いレベルである。収益を高め、農業を魅力的な職業とする事とともに、海外労働力の受け入れ体制の整備が望まれる。

 ●気候の変化によって農産物の生産は変化するが、これを調節する役割として保存・貯蔵が重要役割を果たすことは論を俟たない。ここに、北海道の大きな役割が期待されるだろう。雪や氷による冷蔵保存、さらには廃坑や役割を終えたトンネルでコメを中心とした農産物の大量貯蔵が品質を落とさない方法として有力なのではないだろうか。生産量の調節の役割や、将来予想される世界規模の食料不足への対応が可能になると思われるのだが。