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サスティナビリティ(65)
「風・林・水・菜」-11菜の巻-3
更新日:2009年08月30日

    

 「北海道は新鮮な食品資材に恵まれているが、価値を付加する努力が足りず、みすみす他府県に遅れを取っている。その代表例が北海道の“たらこ”を加工して高い付加価値をつけている九州の“めんたいこ”だ。」あたかも北海道が原材料のみを宗主国に提供している植民地であるがごとく、大学の先生や経済学者がわけ知りげにセミナーで話すのをよく耳にし、北海道出身者として心穏やかざるものがあった。その実態はどうなっているのだろうか。このたび、北海道立食品加工研究センターを訪れ、道内の食品加工業界についてご教授願った。
 「北海道の食品工業の現状」(平成21年7月、北海道経済部商工局産業振興課発行)によると、道内食品工業(食料品、飲料、たばこ、飼料)の出荷額は約2兆1000億円で、全製造業の37.4%を占めており全国平均の10.2%を大きく上回っている。全国の出荷総額では自動車関連、機械製造、化学工業、電気機械、電子部品の5製造業で50.7%を占めるのに対し、北海道ではそれらの合計が10%に満たないという産業構造の違いによるものである。しかし、2,500の事業所(道内製造業の3分の1)で8万人の雇用(同じく5割)を有しており、重要な産業であることは間違いない。大学の先生が指摘する付加価値額(生産額-消費税額-原材料使用額-原価償却額)は出荷額の28.5%で、全国平均34.1%よりも5.6ポイント下回っている。平成19年度は付加価値額が前年度に比べ2.5%高まっており、着実に向上しているのがうかがえる。
 ただ、この付加価値金額は、一部輸入品はあるものの主に道内産の農畜産物、海産物を原材料とした道内食品加工のものであり、多くの原材料が他都府県の食品加工業に提供されているのも事実である。付加価値率を全国レベルに近づけるとともに、より多くの食品資材を道内食品加工業に取り込むことで、この分野は北海道経済活性化に向けた大きな可能性を秘めているといえる。その役割を担っているのが「北海道立食品加工研究センター」である。
 同センターは、道内食品加工業に対し、新製品・新技術の開発支援、共同開発の推進、研究成果の技術移転や普及活動の推進、販路開拓支援を提供しており、平成4年に設立された。通常の研究所ならば成果の報告書を作成することで終わるが、同センターでは依頼者との共同テスト、テスト機器の整備、技術支援、技術移転、生産体制の確立、さらに技術移転後のマーケティングやアフターフォローにまで取り組んでいる。現在、研究員30人、管理事務担当10人で運営している。開設以来、研究員には各自20から30軒の食品製造企業を“お客さん”とするノルマが与えられ、積極的に企業訪問した上で課題を見いだすとともに、一緒になって課題を解決するための技術研究を行ってきたとのことである(岡田所長、宮森副所長談)。開設以来、道内加工食品企業の半数にあたる1,200社からの相談に乗っている。昨年の実績では、相談件数が1,151件で、現地技術支援は239にのぼっている。同センターが研究開発・技術支援した案件で50社72品目の製品が誕生し、その売り上げ創出高価は一次加工のみに限定しても74億円になるとのことだ。それら製品のいくつかを例に挙げると、
・地域特有の味を持たせたチーズの開発と試作
・ヨーグルトを濃縮、クリーム状にしたスイーツの材料
・カボチャや馬鈴薯を酵母でなめらかな素材にした同じくスイーツの材料
・生産量日本一の平取のトマトの規格外品を使用したジュース
・魚介類を材料にした発酵調味料(魚醤油)
・道産小麦乃特長を活かした高付加価値食品
・道産米を用いた米粉の製造 
など、多岐にわたっている。特に、食糧自給率を上げるための道産小麦や米粉の研究は最重要と思われ、引き続きの努力と成果を期待したい。
 これらの研究・開発に必要不可欠なのがテスト機器、試作機器であり、電子顕微鏡、味覚を数値化するセンサー、冷蔵乾燥機、真空凍結乾燥機など数十種類の機器が整備されており、それらの中には、“さくさく感”の出るポテトチップ製造用真空フライヤーや、アイスクリーム製造器(道内の道の駅に置かれている)までも揃えている。
特に注目されるのが、加熱水蒸気処理機だ。200℃の水蒸気を注ぐことで、農産物や海産物の“おいしさ”や“旨み”を閉じ込め、急速冷凍し、出荷・配送する。タコ、カニ、ジャガバターがこの技術を使い、すでに商品化されている。新鮮な北海道の食材や加工食品を鮮度と旨み保ちながら、道外の都府県、さらには海外に送ることが出来たならば付加価値を大きく高めることになろう。加熱素性機処理機はすでに道内で10社以上が採用しているとのことであるが、今後の一層の利用拡大に向け、補助制度の設立を検討すべきではないだろうか。処理機が量産されることで多量かつ多品種の食材や加工食品が道外向けに出荷され、付加価値が高まるとともに、処理機を製造する道内の金属加工業にも恩恵がもたらされよう。
今後、同センターに大きく期待するのは、
・米粉製品化への一層の取り組み
・道産小麦を使った加工食品製品化への取り組み
・「スイーツ王国北海道」を目指した各種素材の開発推進
・鮮度とおいしさを保った輸送方式の研究
・道産加工食品のブランド確立のため、全国に向けたマーケティングの展開
であり、付加価値比率を全国並みに高め、さらに北海道の豊富な食材をより多く製品化することを期待する。