アスリートインタビュー

北海道コンサドーレ札幌

【砂川誠のコンサの深層】ブルーノ・クアドロス氏

試合に出られない選手の心を支える

砂川 昨シーズンからコーチを務めているね。今の役割は?

ブルーノ 1つは(四方田修平)監督のサポート。私自身がチームについて考えていることを、監督に直接伝えています。もう1つは、外国人選手のサポート。コンサドーレを含め、選手として日本でプレーした経験があるので、いま在籍する外国人選手よりは、日本について理解しています。日本人選手がどういう特徴を持っていてどのような性格なのか、監督が求めるプレーやチーム戦術がどんなものかを、わかりやすく伝えることも重要な役割です。

砂川 外国人選手へのサポートって、どんな感じでやっているの?

ブルーノ まず、日本人でも外国人でも、選手はみんな試合に出たいから、出られないと怒ります(笑)。サッカー選手としてはそれが当たり前。どういう形で外れたのか、選手がどうそれを受け止めるかにもよるけど、私はその選手が「なぜ試合から外されたか」について、包み隠さず話をします。その上で、外された理由を修正するためにどうしたらいいかを選手に考えてもらうようにしていて。

たとえばメッシ(スペイン・バルセロナFW)のように有名な選手でもベンチに下がることはあって、その時になぜそうなったのか、理由をはっきり言うのは普通のこと。ただ、外れた理由を聞いた時に、ふてくされてしまう選手もいれば、さらに向上心を持って取り組んでもらえる選手もいる。そこで、みんながふてくされず向上心を持てるようにする、というのが自分の仕事です。

砂川 とくにブラジル人選手にとって、メンタルの部分でブルーノの存在は大きいよね。

ブルーノ 外された理由を話すタイミングはかなり重要。選手がものすごく怒っている時に話しても聞いてもらえない。だからといって時間をかけすぎても、タイミングを逃してしまう。言葉の選び方も大事です。選手って、悔しい気持ちや監督への怒りは必ず持っているもの。タイミングを測って話をして、あとは彼らがどう取り組むかです。

砂川 ブルーノ自身が思っていることも言うの?

ブルーノ 言いますよ。選手自身の考え方やサッカー観はどうでもいいし関係ない、とも言います。選手個人の考え方の前に、監督やコーチが何を考えているか、それを理解して吸収した上で、どうグラウンドで自分のできることをするか。そこに集中してくれ、ということを常に伝えています。

-----ここから“延長戦”本誌未掲載-----

将来のためにライセンスを取得中

砂川 指導者ライセンスを取得中と聞いたよ。

日本でJリーグの監督ができるS級ライセンスはブラジルではプロ級というのだけど、その1つ下のA級ライセンスを取得しました。今年12月からプロ級取得のための講習を受けます。取得できれば、世界中でプロの監督ができることになります。

砂川 ブラジルに帰って受講するんだ。

ブルーノ 12月から20日間くらい、ブラジルのサッカー協会に通わないといけません。それと、日本に帰ってきてからも定期的に課題を提出することになります。

ただ、自分のライセンスよりも、コンサでコーチとしての役割をまず果たすことが大切だと思っていますし、その役割に集中したいです。

砂川 でも将来的には日本のチームで監督をやってみたいのでは。

ブルーノ 私自身も家族も、ずっと日本で暮らしたいくらい、日本が大好きだし、日本の生活も気に入っています。仕事としても日本でずっとやっていたい。ただ、10年後のことより今を考えることが大切。それに私自身、いまも向上心を持ってコーチを経験していますし、それがライセンスよりも指導者としての自分のためになっています。

(構成・清水)

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1977年2月3日、ブラジル出身。97年に強豪・CRフラメンゴでプロデビューを果たし、05年シーズンからJ1セレッソ大阪でプレー。06年オフに退団し、07年にコンサドーレ札幌へ移籍。J2優勝・J1昇格に大きく貢献したが、チーム事情から構想外となり退団。その後FC東京を経てブラジルへ戻り12年に現役を引退。ブラジルで指導者となり、16年からコンサのトップチームコーチへ就任