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Interview

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鳩山由紀夫前首相 “辞任の真相”を激白
心残りがないと言えば嘘カネの問題は決して消えない
掲載号:2010年8月号

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鳩山由紀夫 前首相

歴史的な政権交代からわずか8カ月。国民の期待を一身に受けて誕生したはずの鳩山由紀夫内閣は6月4日に総辞職。現行憲法下歴代6番目の短命政権に終わった。なぜ鳩山氏は唐突とも思える辞任を決断したのか。その真相を語った。

期待感を与えすぎたのかもしれない

――鳩山さんはもうお忘れになっているかもしれません。2008年12月25日、鳩山さんは札幌で「サイエンス フォーラム」を開催されました。まだ幹事長のときです。そのとき鳩山さんは「天命などという思い上がりはないが、必然の流れの中で総理をやらせてもらえれ ば、いい世の中になる」とおっしゃった。
鳩山 言ったかもしれません。当然そういう言い方をしたかと思います。
――いい世の中になりましたか。
鳩山 なっていくと思います。ただ私自身は短かったですけれど、いろいろと芽を出させることはできま したから。政権交代をするということ自体が、大きな流れを変える、いい世の中にしていくチャンスですから。「地域主権」とか「新しい公共」とか、種をまい てきたものもある。これをしっかりと後の方が育てていただければ、絶対にいい世の中になります。
――昨年、歴史的な政権交代があったわけですが、国民から何を一番に託されたと感じていましたか。
鳩山 いろいろとあったと思います。いつの間にか政治が国民の声を聞かなくなってきたと。そして、自 分たちばかりの欲の突っ張りあいの中で、ムダ遣い天国、役人天国というものがつくられて、不公正な世の中になり、なかなかいい暮らしができなくなってきて いると。それを変えてほしいというのが一番の願いではなかったかと思います。
これを変えるには、しがらみを解いていかないとならない。明日全部よくなるという話ではありません。それなりの時間が、2年3年、あるいは5年、地域主権になると10年くらいの単位になりますが、いい世の中にしていくためにはそれくらいの時間が必要です。
i2  政権が変わったんだから自分たちの暮らしもよくなるだろうみたいな期待感を、私たちが与えすぎたのかもしれません。
――国民もすぐに何かが大きく変わるとは思っていなかったでしょう。しかし、もう少し目に見える変化は期待していたと思います。
鳩山 変化していきますよ。予算をつくってできたのが3月。4月からスタートですよ。子ども手当にしても、高校無償化にしても、これからですから。いまようやく頭が出てきたというところで、すぐに暮らしが変わるという話であるわけがない。
――そうした細かな政策より、まずは税金の使われかたをチェックしてほしい、抜本的に見直してほしいということを期待していたんだと思いますが。
鳩山 子ども手当などの変化は4月以降にしか見えてきません。景気対策という意味では昨年12月から いろいろやっていますから徐々にその効果は出ていますが、実際の暮らしの中で大きく変化するのは4月以降でしかない。民主党はマニフェストで「命を大事 に」といっています。病気になって暮らしに影響を与えている人とか、あるいは子供をお持ちで教育が大変だなという人たちが、まず直接的に変化を感じてもら えていると思います。参院選の応援に出向きますと「子ども手当ありがとう」とか、子供づれのお母さんなどは感謝してくださっています。

政治資金の問題は青天の霹靂だった

――なぜ辞める決断を。
鳩山 私が自民党を飛び出したのは、政治とカネでクリーンな政党をつくらないと国民のみなさんが信じ てくれないという思いからでした。民主党をつくり、ようやく政権交代をした。まさにこれからというときに、自分でも政治資金規正法に抵触する行為を経理担 当の秘書が行っていたということですから、それは私も大変ショックだったし、ある意味、自分の行動原理そのものが覆されるような思いでした。青天の霹靂と はまさにこういうことだと思います。
最初のうちは小沢一郎幹事長の話のほうがより大きかったと思いますが、私にとって母からの資金提供という、自分としてはまったくないと思って秘書にも確 認していた話が、実はあったということが事実として現れたときに、いくら自分は知らなかったと言っても、知らないこと自体がおかしいじゃないかと。こんな 多額の資金提供を知らないという人間だったら、庶民の暮らしをわかるはずがないと。そう思われてもやむを得ない。やはりそこのところがずっと重くのしか かっていたというか、ここをクリアしない限り民主党の原点「クリーンな政治なんだから信頼してもらいたい」という言葉が信じてもらえなくなってしまう。
国民のみなさんの声が聞こえるようになるためにも、また国民のみなさんが政治に対して信頼を持って聞く耳を持っていただくためにも、政治とカネの問題は しっかり対処しないといけない。自分の行動原理そのものが否定されるというところでありますから、せっかく期待感は高かったのに、仕事はこなしているにも かかわらず認めていただけない。やはりその原点に政治とカネの問題があると実感したわけです。
i3  最終的に小沢幹事長と相談をして2人で決断しました。私も辞める、幹事長も辞めていただきたいと。小林千代美さんも含めてですけれど、その結論を出したということです。  秘書の行為とはいえ、政治とカネの問題は、決して消えません。国民のみなさんが鳩山という人間に対して、信頼を十分にいただけなかった原点のところにあるのは、カネの話だったと理解しています。
――国民が声を聞かなくなったというのは、発言のぶれとかリーダーシップに欠けるようなところが見られたからではないですか。
鳩山 私はそうは思っていません。そういうふうな批判もありましたが、じゃあ私のどこがぶれていたの かというのは確かめられたらいいと思う。ぶら下がり取材でいろいろ聞かれれば、同じ話ばかりしては、と少しずつ話は変えていったことはある。それをぶれと いわれた。しかし、方向性自体が大きく変わったということはありません。
また指導力云々も言われました。たぶん今までの政権で、わずか8カ月でこれだけのことをやっている政権はないと思う。これもチェックされたらいいと思う。それがなかなか評価されない、聞いてくれないというところが、後ろに政治とカネの話があったからだと思っています。
――幸夫人は辞任に反対されたそうですね。
鳩山 女房は「友愛社会というのはあなたしかつくれないよ」とずっと言っていて、ようやく世界に向けて友愛の息吹を日本がリードできるところにきた。それだけに大変、残念がっていました。

総理経験者は国会に残るべきでない

――小沢幹事長との関係で、やりづらかったところもあったのでは。
鳩山 幹事長のほうがはるかに経験を積んだ人です。本来であれば代表、幹事長というのは1日に何度も 会って、党と政府の政策をすり合わせるということが必要だったと思います。その意味では向こうは大幹事長ですから、なかなかそのような意思の疎通を図るの に時間がかかったというのはあったと思います。
しかし、実際には仕分けをしていて、政策はこちらに任されていた。小沢幹事長には党務、主として選挙対策について任せるということにしていましたから、それほど大きな混乱が生じたということはなかった。
――住み分けはしていたが意思疎通は図れなかった。
鳩山 お互い任せていましたから、それほど頻繁に意思疎通を図る必要はない状況ではありました。ただ 通常の代表と幹事長だと、もっと意思疎通を図ってきたでしょうね。われわれも試行錯誤でした。実際に政権を取ったのは初めてですから。どこまでが党務で、 どこまでが内閣としての政策決定のプロセスかという難しさは常に抱えながら進めていました。
i4?  ――幹事長の声のほうが大きかったという印象を多くの国民は持っています。
鳩山 そういうふうにメディアは書きますよね。私という人間の性格と幹事長の性格を常に決めている。 そのほうが面白いから。たとえば暫定税率の話でも幹事長の一声で変わったと書く。事実はそうじゃない。でも、そういうふうに書かれてしまうと、それが事実 のように通ってしまう。そこのつらさはありました。
――鳩山政権には国家戦略局の構想がありました。しかし政権スタート時にまったく機能しなかった。形すらできなかった。本来、普天間問題などもそこでもっと大局的に戦略を練るべきだったと思いますが。
鳩山 国家戦略局にするためには法律が必要だった。その法律がなかなか通らないという状況で、国家戦略室のままになっている。
――通らないといっても国民は307議席を民主党に与えました。これで何もできないということにはならないでしょう。
鳩山 私も、もっと早くから政治主導の法案を審議してもらいたいという思いはありましたが、国会の日 程の中でさまざまな優先順位もあり、結局その法案自体が審議が不十分で終わったというのは残念ではあります。おっしゃる通り300議席以上あるのだから強 引にやれば何でもできる。それに対して野党は強行採決だと主張する。国会運営自体、与党も野党も攻守が変わった中で難しいというか、衆議院においては与党 のほうが若干おされ気味だったということは感じます。
――やり残したという気持ちはあるんですね。
鳩山 それはありますよ。地域主権の話でも、へたをすると1丁目1番地から3丁目か5丁目くらいに戻ってしまうかもしれない。そうなれば官僚がまた抵抗をしやすくなります。そこはきちんと新内閣でもやってもらいたいと思う。
ロシア問題などはライフワークのように考えていましたから、領土問題は自分でケリをつけたいなと思っていただけに、こういった中期的なテーマに関していえば、心残りがないと言えば当然、嘘ですよね。
――衆議院議員は任期でお辞めになる。
鳩山 はい。いままでも総理経験者が人事とか政策に口を出して政治が曲がってしまうということを脇で見てきましたから。こういうことが繰り返されないほうがいい。私は引き下がるべきだと思っています。
――巷では北海道知事選にどうかという話もある。
鳩山 任期より知事選のほうが先にあるでしょう。いまはそういう心境ではありません。

=ききて/6月28日取材 鈴木正紀=