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Interview

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谷垣禎一総裁が目指す「自民党再生の要諦」掲載号:2010年2月号

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谷垣禎一 自民党総裁

昨年の総選挙で自民党は大敗を喫し、野党に転落した。どん底の党勢の中、総裁となった谷垣禎一氏は、どのようにして党の再生を図っていくのか。また、自民党の目指すあるべき姿、理念とは何か。熱き思いを聞いた。

民主党はマニフェスト詐欺だ

――政府の2010年度予算案をどのように評価しますか。また、民主党はマニフェストを予算に反映したと考えますか。
谷垣  非常に迷走していますね。概算要求が95兆円です。それに対して、谷垣 がおそらく37兆円。税外収入が10兆円と言ってますが、これはかなり厳しいと思います。国債発行額は44兆円ぐらいのようです。あらあら足すと、これで91兆円ですが、それも簡単ではない。4、5兆円のギャップが生じます。
暫定税率や高速道路財源をどうするかなどの話が出ていましたが、このままでは民主党のマニフェストはかなりの部分が実施できない。公約を守るためには、大量の国債を発行せざるを得ないと思います。
なぜそうなったかといえば、かなり無理なマニフェストを予算案に上乗せしたからです。「財源なんか自民党政府の予算を組み替えれば出てくる」と野党時代に民主党は主張していました。言葉は悪いですが、“マニフェスト詐欺”みたいなことになっているのではないでしょうか。
仕分け等々に対する評価はあると思いますが、むしろこういう時期ですから、わが国の限られた谷垣 をどういうふうに資源配分をしていくか、その全体像を明確にすべきです。しかし、そういう機能がいままでの議論の中では弱いと思います。これは菅(直人)さんの国家戦略局の問題かもしれません。
i6?  同じ予算、景気対策をするにしても、どういう方向に持って行くかというメッセージがきちっと出ているのと出ていないのでは質が違ってきます。
――内閣の意志が統一されていないからでしょうか。
谷垣  そういうことだと思います。結局、子ども手当など個々の政策はあるけれども、国の全体像を指し示す政策が弱い政権だと感じます。
――もともと民主党は、「財源は大丈夫か」という声に対して「埋蔵金がある」と言ってました。しかし、実際に政権を取ってみたら埋蔵金は思ったほど掘り起こすことができなかった。
谷垣  “埋蔵金伝説”というものが、雲散霧消しつつあるということかもしれませんね。
――では、予算編成はどうあるべきだと考えますか。
谷垣  こういうときですから、どういうところに成長の種を見つけ、投資するのかという経済の成長戦略が大事です。また、雇用にかなり焦点を当てていく必要があります。
単年度で収支を均衡にすることは難しいですが、歳出に対する負担をどうするのかということを、きちっとした姿で出さなければなりません。今後4年間、消 費税率アップを封印したまま、大きな政府を目指すというところに、民主党政府の大きな問題があると思います。景気対策もそこのところを不明確にしたままで は、みんなが安心して財布のヒモをゆるめるというわけにはいきません。個人金融資産も動かない。
今年は谷垣 を国債発行額が上回るという、あまり経験したことがないゾーンに入っていくので、中長期的な財政運営のフレームを明確に出さないと、マーケットは不安になると思います。そこを重視して予算と税制を考えるべきです。
――個人消費を刺激し、内需を拡大すれば景気が回復すると政府は考えているようですね。
谷垣  内需振興という掛け声は、わからないわけではありません。アメリカの過剰投資で輸出品を主にいろんな物が売れていた構造、いわばそれを支えていた強いドルと為替関係という概念がパラダイムシフトされたのですから。
しかし、内需と外需は切り離されたものではありません。同じ物をつくるにしても、アジアとのそれぞれの製造過程における役割分担など、いろいろな問題が あります。また、国内の消費者の期待に応えるような政策を打ち出していくということは大事ですが、それは単純に内需拡大策ということだけではない。もう少 し目を開いて考えていかないと見誤ると思います。
i7? 「所得の格差が生じているから、所得再配分機能を高めるべきだ」というのは、当然ある議論だと思います。消費を刺激しようという議論自体は、悪くはありま せん。しかし、(景気刺激策が国の資金を)いきなり家計に入れるというやり方ばかりでは問題があります。それが経済の発展に回ってくるまでには、時間がか かるからです。特に雇用にまで反映してくるには、かなり時間がかかります。しかも、なんでも家計に入れていくという政策をとっていくと、例えば子ども手当 も2万6000円より3万がいい、5万の方がいいと、バナナのたたき売りのような議論になっていく危険性があります。結果として極めて社会主義的なものに なっていく可能性もある。
やはり産業全体に目配りをして、伸びる産業を育てていくという発想がなければいけないと思います。
「コンクリートから人へ」というのも聞き心地のいいキャッチフレーズですが、田舎の方に行きますと公共事業というのは地域経済や雇用を支えたりする機能があります。あまりにもバッサバッサ切ると、雇用の下支えがなくなってしまいます。
大都会ばかりではなく地方にも血液が循環していくように、カネが循環するシステムは何なんだということを考えるべきです。それが全部公共事業だとは言いませんが、そういうことを意識しないと年度末に心配な面が出てきます。
――自民党は現在、政権構想会議を中心にいろんな議論を煮詰めていますが、党再生には何が必要ですか。

自助、共助、公助のバランスが大事

谷垣  党再生には理念、それに基づく具体的政策、選挙態勢、党の組織のあり方など、いろいろな課題 があると思いますが、これだけ大敗し、一から出直そうということですから、まず「自民党は国民のために何をやる政党なのか」という再定義が必要だと思いま す。ですから政権構想会議で一番基礎的な理念を議論していただいているところです。
自民党は昭和30年に結党しました。そのときの結党宣言を見ますと、明らかに当時は朝鮮動乱などの記憶も新しく、左右両派の社会党が団結した中で、日本 を社会主義国にしてはいけないという反社会主義的なイデオロギー的色彩が強かった。その後、ベルリンの壁が崩壊して、昭和30年の立党の理念は達成するこ とができました。厳密に言えば、その時点で新しい自民党の役割を再定義する必要があったと思います。
政権構想会議でいろいろなことが議論されていますが、私なりの表現で言えば、重要なことは2つだと考えています。1つは、自民党は家庭を大事にする、自 分の生まれ育った古里や現にいま住んでいる地域をみんなでよりよくする、日本のいい伝統を次の世代にきちっと受け伝えていく、政党であらねばなりません。 まず自分の家族、地域、国というところをきちっと踏まえていくというのが、保守の原点です。
i8?  もう1つは、「頑張れる人には頑張ってもらう」ということです。「自ら助くる者を助く」、つまり“自助”の世界を基本に据えるべきです。しかし、もちろ ん個人の努力には限界があるので、仲間内の助け合いとか、地域の助け合いとか、ボランティア、NPOも大事です。そういう“共助”の世界があり、そこでも うまくいかない場合は国なり地方自治体がみなさんからいただいた税金できちっとやっていく“公助”の世界があるわけです。このバランスを崩してしまうと、 おかしなことになります。
――自民党再生というと、右バネがききそうな気がするのですが…
谷垣 右バネには2つの問題があります。1つは右バネだけで勝てるのかということです。都市の無党派層の票を相当獲得しなければ、選挙で過半数は制せられません。2つ目はアジアの成長力を日本も生かしていかなければならないということです。
だから、自分の家族、地域社会から組み立てていく保守主義が大事だと思います。おおらかな保守が必要だと思うのです。日本は経済力の点ではかつては非常 に調子よかったので、諸外国からいろんなことを言われても「経済はオレのところのパフォーマンスが一番いいよね」という自信があった。ところが、ある程度 成熟してきて、経済のパフォーマンスがもっと優れたところが出てきた。こんなときに何か言われると、すぐキッとなって反論するというのでは、うまくいかな いと思います。
私などは選挙区(京都5区)に帰ると「わが選挙区はなかなか美しい、いいところだな」と思うわけです。そういうおおらかな自信を持っていくことが大事です。

問われる成熟した時代の政治手法

自民党は戦後の食うや食わずのときから何をやってきた政党なのかと言えば、「もう戦争は嫌だ。平和な国にしたい」「繁栄した豊かな国をつくりたい」「自 由な体制でやりたい」という人々の願いを実現してきたと思います。かつては高度成長時代なので、いろんなことをやっても、そのコストを後からまかなうこと ができました。国民の草の根の願いをうまく取り入れてもきました。各業界団体などの要望もきめ細かく対応し、選挙態勢も非常に見事につくりあげてきた。し かし、ハッと気づいてみると、日本も右肩上がりの時代ではなく、昔のようなことをやっていたら、後ろに借金の山が積もっていく構造になっている。だから、 ある意味、小泉さんが出てくる必然性はあったと思うのです。
ただ、格差の問題が生じ、地方にカネが循環する仕組みがなくなってしまった。今後は小泉改革のひずみを手当てしていきながら先に進むことが必要だと思い ます。しかも、成熟した時代の政治手法が問われているのだと思います。成長戦略を持ちながら配分を考えるという両建てでないとダメです。高度成長期の発想 ではうまくいきません。
(1月6日現在)

=ききて/酒井雅広=