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Interview

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観光、移住、企業誘致…新幹線で北海道は変貌する掲載号:2012年11月

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坂本眞一 JR北海道相談役・北海道観光振興機構会長

 北海道新幹線の開業は3年後。さらに札幌延伸が正式決定し、起工式も執り行われた。いよいよ現実味を増してきた北海道新幹線開業。これにより北海道はどう変わるのか、長年、北海道新幹線誘致に取り組んできた坂本眞一氏に聞いた。

新幹線効果を波及させる3つの鍵

――新幹線札幌延伸が決定した瞬間はどんな思いでしたか。
坂本 中央政権で政変、政争が続き、ハラハラでした。今までも白紙に戻されたことがありましたから、正直、ホッとしましたね。ただ開業は24年後。それは長過ぎます。
――どれだけ工期を短くできますか。
坂本 お金があれば5年以内で可能だと思います。そう言うと北海道の人は驚きますが、東海道新幹線は着工から4年後に完成しました。距離が函館?札幌の倍あるのにです。
――工期短縮にはなにかアイデアが必要ですね。
坂本 目標をつくらないといけないですね。実は、東海道新幹線建設の際は、もう鉄道は終わったという風潮がありました。鉄道は19世紀のもので、これからは高速道路、飛行機の時代だと。ヨーロッパですら鉄道は衰退していたときに日本は新幹線に取り組んだ。
オリンピックを一つの大義名分にしたんです。そして東海道新幹線が開業すると、1000日で1億人が乗ったんですね。全国民が1人1回乗ったという計算です。それで世界の鉄道を見る目が変わったんですよ。
結局、鉄道は終わったとしていたフランスでも、ドイツでも高速鉄道がつくられ、韓国と台湾、中国、そしてブラジルなどにも広がっています。
――札幌延伸に否定的な見方をする人もいますが、見る目が変わる。
坂本 実際に運転がはじまったら「やっぱりすごいね」となるはずです。私はそれを確信しています。すでに新幹線が走っている地域では、なくてはならない存在として人々の暮らしを支えています。
「新幹線があるから高齢の親がいる故郷に気軽に帰れる」「単身赴任者が土日に戻れる」といった話をよく耳にします。新幹線は単なる社会資本整備ではなく、生活に密着したものなのです。ですから、北海道新幹線が開業したら道民のライフスタイルが大きく変わりますよ。
――新幹線の経済的効果については。
坂本 飛行機は便利ですけど、点と点を結ぶだけ。新幹線は都市間を線でつなぐ。すると都市の間に交流が生まれ、競争も起きます。観光の面だけでなく、移住の促進、企業誘致にも大きなプラスになるでしょう。
また、交通の利便性が高まることにより、文化面でも、絵画展やスポーツイベントがもっと道内で開催されるようになるはずです、北海道は発展し、本当の魅力が引き出されますよ。
i2――北海道新幹線は東北の復興・復旧にも寄与すると言われています。
坂本 そうです。被災地の復興には長い時間がかかるでしょう。東北は北海道にとって隣人です。継続的な交流を重ね、支援をしていきましょうよ。
今回、東北の人たちは北海道新幹線を応援、賛成してくれました。今後、北海道と東北で、いろんな動きが活発化していくと思います。
――新幹線札幌延伸を道内全体の活性化にどうやって結びつけるか、という点も課題です。
坂本 5年ほど前に北洋銀行がおこなった調査ですが、函館に来たら、稚内にも足を延ばしたいという人が17%もいました。札幌に来たから知床にも行ってみようとか、道内の自然を満喫したいという人がたくさんいるのだと思います。
では、そうした需要をくみ取るには何が必要かと言うと、3つあります。まずは各地域の人たちによる、魅力あるまちづくりです。他の新幹線沿線地域でも、真剣にまちづくりに取り組んだところは栄え、さぼった地域は取り残されています。例えば、岡山は地元の新幹線への反応が鈍かったため、乗り込んできた関西商人たちに結局、経済を乗っ取られた形になってしまいました。
それから2次交通手段の整備をしっかりしないといけない。新幹線と2次交通手段は表裏一体です。道内に巡らされた高速道路がこれから生きてきます。
北海道は広大ですから、鉄道だけではカバーできません。レンタカー、バス、自転車による移動についても整えないといけない。JRとしてもできるだけ路線を廃止しない方向で努力していきます。
――最後の要素は。
坂本 それは情報発信です。魅力があるだけでは不十分で、行ってみたいという気持ちを起こさせなければ。今までのように、黙ってても来てくれるという受け身の姿勢ではだめです。

海外客を増やすには規制緩和が重要だ

――同感です。もっと積極性が必要ですね。
坂本 さきほどの札幌延伸の工期短縮についても、われわれは陳情だけで実現できるとは思っていません。函館開業で新幹線効果が証明されれば、こんなに効果あるなら早く札幌まで延ばしましょうという動きになりますよ。なんとしても函館開業を成功させ、工期短縮を実現するのです。
――道民の意識も変わらないといけない。
坂本 やる気を持って、自分たちの生活のためにという気持ちが大切です。今後の温暖化も考えれば北海道を魅力的な土地と考えている企業も少なくないはず。悲観してはいけませんよ。
――ところで今、日中、日韓の領土問題の影響が観光面でも出ていますが、海外観光客を増やすには。
坂本 海外の方がよく指摘するのは人の魅力です。北海道は素晴らしい景色や食材があるだけではなく、そこに住んでいる人が親切で素晴らしいと。
ただ、いくつかの問題を解決しないといけないと思います。一つは規制緩和です。飛行機の乗り入れやビザの発行を制限したり、特に共産圏に対しては国際免許証を規制したりしています。もっと来てくださいというには、規制緩和をしなければ。それから相手の立場に立ったサービスです。
――イスラム系向けのサービスを始めたホテルもあります。
坂本 そういう姿勢が大切だと思います。中国人観光客はうるさい、と言う人がたまにいますが、彼らの文化では小声で話すと「なにか企んでいる」と思われるからです。ちょっとしたすれ違い、誤解なんですよ。中国の人たちは、習慣を教えてくれれば、と言っていますよ。
――医療観光も期待されています。
坂本 中でも北海道でふさわしいと思うのは予防としての医療観光です。いわゆるヘルスツーリズムです。大自然があり、水も食べ物もおいしい北海道は癒やしの大地なんです。
それから北海道にも産業遺産がたくさんあるんですよ。石炭産業とか。JRで言えば廃線跡地とか。団塊の世代以降の人たちは、思い出の鉄道とか、古い駅舎に対して郷愁を感じます。そういうところにも癒やしを感じる人がたくさんいるので、ぜひ取り込んでいきたいですね。

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