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Interview

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産業構造の転換を図り北海道を変える掲載号:2010年1月号

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高橋はるみ 知事

 長引く不況、雇用情勢の悪化、ひっ迫する道財政、そして、政権交代。高橋はるみ知事を取り巻く環境は厳しさを増している。果たして打開策はあるのか。新政権との関係、景気底上げの方策、北海道の将来に対する中長期ビジョンなどをズバリ聞く。

民主党のマニフェストは大いに共感

――民主党を中心とする政権になりました。自民党とのかかわりがより深かった知事としては、新政権とどのような関係性を構築していきますか。
高橋 新政権になって3カ月、政府として定着してこられたと思います。ただここまで、いままでとは違う形で進んできましたので、戸惑いがあったのは事実です。実際、予算編成も大きくずれ込んでいます。
私としては、北海道の将来のために重要なことを実現していくにはどうしたらいいのかという原点に立ち返って、関係閣僚の方に申し入れをしたり、新幹線のようなものであれば党にお願い申し上げたり、そういった行動を一つひとつやっています。
――政権の対応は前よりは厳しいですか。
高橋 そんなふうには感じていません。民主党はそのマニフェストに「国民の生活が第一」を掲げられ、生活者の立場でさまざまな施策を推進するとしています。国民や道民の暮らしを守るという基本的な考え方は、私としても大いに共感しているところです。
さらに言えば、前政権よりも地域のことは地域に任せようという地域主権型社会ということを明確にしておられますので、地方に自主財源をいただく中で、あ るいはわれわれ自身が自主財源をしっかり確保する中で、地域の判断においてさまざまなことをやりやすいような環境になるのではないかと思っています。
――一部民主党の国会議員から「急にすり寄られても困る」というような発言がありました。
高橋 10月でしたか、政権交代後初の政策懇談会がありました。道からも私と幹部職員20人ほどで出席させていただいたとき、一度そういう発言がありました。でも、その後、11月にもさまざまな政策要請を行っていますが、そういう話はありません。
――道内の景気は一向に上向きません。
高橋 ゆるやかに拡大基調だった北海道の経済ですが、2008年の後半以降、ちょうど北海道洞爺 湖サミットが終わった直後に世界同時不況の嵐の中に巻き込まれまして、大変厳しい状況になってきている。政府の補正予算に対応して、われわれも緊急対策と いうものを数次にわたって打ってきましたので、その後また少し持ち直すという状況ではあるのですが、なかなか実感が持てない。
とくに雇用が厳しく、学卒者の内定率は年々下がっている状況です。私どもとしても対策をさらにやっていかなければならないと思っています。
政府は10月下旬に、地方の予算措置を伴わない緊急雇用対策を宣言し、10年1月にも補正予算案を提出されるようです。規模についてはいろいろ言われて いますが、いずれにせよ、やるということは明言されています。それを受ける形で道としても、すでにやっていることも含めて加速度的に行っていくことが必要 です。

経済情勢は指標で見る限り持ち直し

――知事は、雇用創出や雇用のミスマッチの解消など、雇用対策強化に向けた「地域雇用戦略会議」を年内に設置する方針を明らかにしましたね。
高橋 理由は2つありまして、1つは政府が地域の雇用対策の推進母体を都道府県ごとに設けるよう呼 びかけていたことに応えたのと、もう1つは政府の補正予算の概要が明らかになった段階で、さらにしっかりやろうということです。すでに道や道経営者協会、 連合北海道などでつくる「北海道雇用創出推進会議」という組織があります。そこに大学教授やNPO関係者を加えて新たに開設します。
――すでにやっている雇用対策は具体的にどんなものがありますか。
高橋 自公政権時代に何回も補正を組んでいます。それをベースにした雇用関連基金積立金が2本、 約230億円。さらに道の09年度当初予算で約117億円の雇用対策関連予算を組みました。それらをつかってセーフティーネットの充実、雇用の受け皿づく り、就業の促進を行っています。
具体的には、基金を活用して一時的な雇用・就業機会を創出する事業、地域の雇用創出に対し、道の施策や市町村の地域づくりと連動して雇い入れを伴う新規 開業などを行う企業に補助金を交付する新一村一雇用おこし事業、雇用のミスマッチを解消するための緊急非正規労働者マッチング促進事業、さらに福祉分野や 農林水産業への就職を促進する事業など、細かく言えばかなりの数の施策を打っています。
――それらの施策の効果はどのように判断しているのですか。
高橋 確かに、雇用情勢がよくなったという実感は持てないというのはあるのですが、そういう下支えがあるからこそ、経済情勢は指標で見る限り持ち直しという判断をしています。効果としては明らかに出てきていると思っています。
――雇用の創出にもかかわってくるんですが、知事は北海道の将来について、どんな中長期ビジョンを描いているんですか。
高橋 道議会でもしっかり議論し、パブリックコメントなどの道民議論を踏まえた10カ年計画を、 前知事のころからずっと持っています。また、その過程の中で4年に一度の知事選で、北海道をどういう方向にもっていくのかということを示し、私自身も道民 の信を問うてきたと思っています。
私の中長期ビジョンを一言でいうと“北海道の産業構造の転換”です。このことを私は1期目から一生懸命やらせていただいている。それまでの北海道経済は 公共事業が十分にあったということもあり、建設業の方々を中心にそこに依存してきました。スポーツチームで言えば、建設業という“スタープレーヤー”が1 人いるというような産業構造だったと思います。しかし、その選手が若干でも故障したらチーム全体が大変なことになる。1人のスタープレーヤーに頼るのでは なく、複数の頑張る選手、すなわち複数の産業群が多様に展開する北海道にしていかなければなりません。

製造業と建設業の産業シェアが逆転

――道としてはどういう分野を成長させようと考えているのですか。
高橋 08年までは自動車産業の誘致に積極的に取り組んできましたが、円高などで大変な状況にあります。むしろサミット以降力を入れているのが環境関連、それに北海道に優位性がある農水産品などの食をベースとした、例えば「食クラスター」の展開による産業構造の構築です。
――食クラスターとは。
高橋 09年7月に設置した「北海道経済政策戦略会議」でもご提案いただいたところですが、北海 道の豊富な食資源から付加価値の高い商品をつくり、これを国内外に普及・拡大させる。また食との関連が深い観光産業などのサービス業も含め、1次産業から 3次産業を含めた、北海道ならではの食の総合産業を確立するということです。  また、同会議では、本道の強みを生かした産業の創出や地域経済の活性化を図っていくため幅広い産業分野にわたって本道経済の成長力を高めていく共通の視 点として「健康」「環境」「国際」の3つを重視し、官民が連携を図りながらこれらに重点的に取り組むことを確認したところですが、こうした取り組みを通じ て産業構造の転換が実現できれば、補助金や地方交付税など国からの移転財源に頼っている道の歳入構造を変えることができます。自立的な歳入が増えれば、 もっともっと自由度をもって、福祉、医療など、北海道の実情にあった政策展開が可能になる。そういう力強い歳入構造にしていきたいと頑張っているところで す。
――多様な産業構造の構築はどの程度まで進んでいると認識していますか。
高橋 一概にどこまでとはいえませんが、シンボリックだと思われるのは、北海道の産業構造における製造業と建設業のシェアが逆転しました。最近のことです。これは1つの表れではないかと思っていますが、まだまだ道半ばですのでしっかり取り組んでいかないといけないと思います。
――道には政策評価の仕組みがありますが、評価自体は庁内各部局が行っています。今回の国の事業仕分けのように、外部の人間を入れる考えは。
高橋 道は02年度に都道府県で初めて政策評価条例を制定しました。いま問題になっているダムに ついても、国直轄ダムについては国の主体においていろいろな意見聴取をやられていると思いますが、道のやっているダム事業も節目節目で評価をしています。 その結果は学識者らで構成する道政策評価委員会に諮問し、意見を聞く形にしています。
今回の国のやり方は透明性の確保という面では大変すばらしいところはあるのですが、ただちょっとやり方が乱暴ではないかという声が出ているのも事実です。
私としては政策評価を含めた予算編成の過程にどう透明性が高く、道民が納得していただけるような形で外部の目を入れるか、いま予算担当の総務部長にそのやり方、考え方についていろいろ知恵を出してほしいと指示しているところです。
――10年度予算ではどんな特徴を出しますか。
高橋 新年度においては大変厳しい財政状況にはありますが「選択と集中」の視点に立って、限られ た予算や人的資源を効果的に活用しながら、実効性の高い施策、事業を展開していきます。具体的には先の「食クラスター」の推進など、健康、環境、国際と いった視点を重視して経済活性化に結びつけ、地域の個性や可能性を生かした取り組みを加速させていきたいと思います。

=ききて/鈴木 正紀=