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Interview

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地域密着、お客さまに選ばれる銀行
中国ビジネス支援で大連銀行と提携へ
掲載号:2011年9月

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横内龍三 北洋銀行頭取

 北洋銀行が2期連続黒字を計上、地域密着型経営で顧客にさまざまなサービスを総合的に提供している。企業や新規分野の事業拡大の支援も積極的におこなっている。また、道内企業の中国ビジネスのサポートを強化する。横内龍三頭取に聞いた。

総合サービスで他行と差別化

――札幌北洋ホールディングスの2011年3月期の決算の数字(経常利益294億100万円、純利益122億6500万円)をどのように考えていますか。
横内 北海道の経済状況には著しい浮揚感がなく、むしろ重苦しい状況で推移しています。しかも、前期の終わりに東日本大震災が発生しました。こういった中で当行は、リーマンショックで赤字を計上しましたが、それ以降は2期連続黒字を計上できました。年度年度の黒字額はいろいろな事情によって変動しますが、これでほぼ黒字基調を確立できたと考えています。
このことは、7月27日に発表した4月から6月までの第1四半期決算速報値(純利益63億円の見通し)でも裏付けられていると思います。
――今期の経営目標を聞かせてください。
横内 私どもは3年間の中期計画を立て経営を遂行していますが、前年度で一区切りがつき、本年度から新しい中期経営計画の推進が図られています。この新しい中期経営計画を策定するに当たって、私たちは次のようなことを考えました。
東日本大震災で北海道が直接受けた被害は東北に比べると少ないが、間接的な影響は大きく、厳しい経営環境が続くと思われます。
また、ゼロ金利政策が長期化している情勢ですので、預金金利と貸出金利の利ざやで商売をさせていただいている私どもといたしましては、この幅が非常に狭くなっているので、金融面からみても厳しい情勢です。
加えてこういう情勢の中、道内企業の資金需要、住宅ローンなどの個人のお客さまの資金需要の低迷が続いています。
これを受けて金融機関の競争が一段と激化してきます。しかし、金利競争を果てしなくやっていった場合、そもそも利ざやが乏しくなっているところで、さらに利幅を薄くすることになるので、金融機関は自ら首を絞めて窒息しかねません。
私たちとしては、いたずらな金利競争から脱出して、北洋銀行らしい経営をお客さまに示していきたい。そのためには、金利以外のサービス、例えば企業金融でいえばお客さまへのもろもろの情報提供、ビジネスマッチング、あるいは事業承継のお手伝いなど、さまざまな付帯的サービスをしっかり提供していきます。
金利だけにかかわらず、総合的なサービスを提供することによって、お客さまに選ばれる銀行を目指していきます。金利競争をしなくても、お客さまから「北洋銀行と取り引きをしていると便利だ」と評価していただく方向に軸足を移していこうとしています。
金利を0.1%下げても金額になおしたら、そんなに大きな額にはなりません。金利競争よりも、お客さまにとっても実のある競争をしていく、あるいは差別化をしていくほうが大事だと思います。
そして最終的にお客さまに北洋銀行を選んでもらえるように、地域密着型金融をさらにいっそう深化させていく。このことが、中期経営計画の柱です。
営業店では、お客さまのところに行って、新しい提案をする渉外活動をしっかりとしていきます。そのためには、お客さまのことをよく知らなければなりません。よく知るためには、お客さまと接触する頻度を高め、お客さまがいま何を求めているのか、課題として考えているかを知らなければなりません。
そのためには、こういうことのできる人材養成が大事です。加えて人数も増やすことが必要です。北洋銀行と札幌銀行は合併をし、店舗を今年の1月までに43店統廃合しました。これによって効率化の1つのメリットとして、人員が浮きました。当初は採用と退職の調整で人員を減らしていく予定でいましたが、一部を営業店に再配置し、お客さまと密なる連絡態勢ができるようにしました。
1期で短期的な成果を求めなくてもいい。短期の成果を追うよりも、きちんとお客さまの懐に飛び込んで、中長期的に、私が支店長会議などで言っている「お客さまに選ばれる銀行」を目指します。
――統廃合によって余裕の出た人員を何人くらい再配置するのですか。
横内 全体として浮いてくる人員は300人を超えますが、その半分強の180人は再配置に振り向けていきたい。また、再配置はすでに始まっています。それと同時に本部をできるだけスリム化して、現場を重視していきます。
金融業は現場でしか利益を上げられませんので、いたずらに競争に巻き込まれず、わが道を行く態勢をより強化していきます。

お客さまから決して逃げない

――社員研修・教育にも力を入れていくわけですか。
横内 当然そうです。例えば、融資にまつわる研修は頻度を増やし、多くの人間が知識を整理するための再訓練を受けられるようにしました。
また、金融機関には女性がたくさん働いています。しかし、従来は融資に配置される女性は非常に少ない。今後、意欲と能力のある女性の方には、積極的に融資、渉外業務についてもらいたいと考え、女性の融資研修をおこなっています。女性にこういった場でももっともっと活躍してもらわないと、頭数の問題でも質の問題でも経営の流れに対応できません。
いま北洋銀行には女性支店長が11人いますが、これまでの業務経験で融資をやっていない方が多い。そのため現在は融資のない出張所や小さな店舗を預かっているという状態ですが、これから融資経験のある女性がどんどん増えれば、支店長、あるいは役員にもなる人が必ず出てくると思います。
窓口でお客さまに金融商品の説明をする仕事があり、この部門で実績を上げた職員を頭取表彰していますが、女性の比率が圧倒的に多い。女性らしいきめ細かなビジネスができていると思います。
また、現場で先輩が後輩にしっかり背中を見せていくということも大事です。いい先輩の下には、いい後輩が育つということを銀行全体で意識して仕事を進めるようにしていきたい。
――東日本大震災が道内経済に及ぼす影響は…
横内 震災が先行き、道内企業、経済に与える影響は決して軽視できません。震災が直接的な原因となって、業績が大きくマイナスの方向になっている企業は、現時点では少ないのですが、徐々に影響が出はじめています。とくに観光の分野ですね。復活の兆しはありますが、元通りになるまでどのくらいかかるのか。また、建設業では復興復旧の波にどれくらい乗れるのか。こういったことを注視していきたい。さらに、公共事業の予算執行が遅れています。これが目先のごくごく短期的なマイナス要因になっています。
i3――企業への支援策をどのように考えていますか。
横内 地域金融機関の使命として、「われわれはお客さまから決して逃げない」。できる限りの金融面からのサポートを続けることによって、出口が見えるまでお客さまと共に行動していきたい。
北洋銀行がメーンのお客さまが多いのですが、ほかの銀行が手を引いてしまったためにわれわれが穴埋めしていかなければならなくなることが多々起こります。別な言葉で言えばリスクを負ってやってきています。われわれの体力との絡みもありますが、道内企業に対する支援は全力を挙げておこなっていきます。
いまのところ、公的資金も入っており、資金面(6月末現在で資金量6兆8477億円、自己資本比率11.2%)でも十分対応できるものと考えています。
――これは道内の金融機関の悩みだとも思うのですが、道内企業の資金需要は思いのほか少ないという現実もあるのではないですか。
横内 前向きの資金需要は少ないですね。むしろ、後ろ向きのリスクの高い資金需要が多くなっています。いまの局面では、それは仕方ないことだと思います。お客さまができるだけ生き延びられる見通しがつくよう支えていくため、業務再建計画をお客さまと一緒に立てていきます。
それと同時に、前向きの資金需要をどうやってつくり出していくかが課題です。金融機関が企業に「こんな仕事をしろ」「あんな仕事をしろ」と言うことはできません。お客さまが投資なり、業務拡大、新しい事業への進出などを決断してくれなければ、金融機関は融資が増えないんですね。
起業を北海道の中で進めていかないと、北海道経済全体がじり貧になってしまいます。成長分野にわれわれの持てる力を挙げて、起業や新しい業務拡大をサポートしていきたい。医療、観光、食に絡むクラスター、エネルギー、環境分野など、新しいことをやる人を見つけ出し、ほじくり出して支援していくことをきめ細かくやらなければなりません。
それが地域密着型金融の1つの表れだと思います。

中国ビジネス支援で強み発揮

――道内企業の海外進出にはどのようなサポートをしていきますか。
横内 地方の中小企業の海外進出は、なかなか容易ではありません。しかし、中小企業のみなさんも、海外の需要を積極的に掘り起こそうという機運が高まっています。その後押しをするという形でこれまでも取り組んできているわけですが、北洋銀行が力を持っている分野は中国です。いま上海と大連に駐在員事務所を開いています。お客さまの接触も圧倒的に中国が多い。 したがって、自分たちも力を蓄えてきているし、お客さまの関心も高いんで、まずは中国ビジネスでしっかりお手伝いできるよう活動していきます。
将来的には東南アジアに関しても勉強していこうということで、今年からJETROのシンガポールに1人、トレーニングに出しました。サハリンにも人を送ってますが、ロシアのビジネスはほかの地域に比べると取り引き量が圧倒的に小さい。
中国で中小企業が取り引きをしようとする場合、何で困るかというと、まず相手先を見つけることです。大きなビジネスをしている大企業であれば、日本の商社が仲介に入って、いろいろ根回しをしてくれます。ところが、中小企業のように小さいロットのものに対して大手商社はコストをかけてまで仲介をなかなかしてくれません。
出会いができても、今度は通関する場合、中国の事情や仕組みがいろいろあって苦労します。小さな企業がそれを全部自分でやるのは大変です。首尾よく売っても代金回収があります。相手の信用力も調べなければなりません。中国ビジネスを成功させるには、人的つながりが必要だといわれますが、中小企業が向こうで人的ネットを張りめぐらすのは至難です。
そこで考えているのが、中国の地方銀行と北洋銀行がタイアップして、このような問題をクリアすることです。中国の地方銀行の信頼できるお客さまと、われわれの信頼できるお客さまを結びつける。代金回収の問題も含めて、さまざまな課題を解消できる。
3月には石井純二副頭取が大連銀行に行き、かなり具体的な話をしてきました。両行の間で枠組みが煮詰まってきておりますので、9月には私が大連に行き、向こうのトップと話を詰めようと考えています。
情報提供といったところから、もう一歩進んだ支援ができないかと金融機関も考える時代だと思います。

=ききて/酒井雅広=