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Interview

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国家戦略特区「フードピア」2030年代8兆円構想!掲載号:2014年1月

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近藤龍夫 道経連会長

 道経連が国家戦略特区に〝2030年代8兆円〟という壮大なビジョン「JAPANフードピア構想」を提案、採択を目指している。北海道の生き残りを賭け、かねて食の総合産業化を推進してきた近藤龍夫会長に聞いた。

慢性的なマイナス成長の北海道経済

――景気にも薄日がさしてきたようですが。
近藤 短期的にはアベノミクスの効果で公共事業が増えて建設工事が活況を呈し、消費マインドも改善しています。
なおかつ消費税増税の前の駆け込み需要も重なるから、数字としては悪くはないのはわかりますが、4月以降は大変なことになる心配をしておかなければならないと思っています。
――まだ第3の矢につながっていないと。
近藤 そうです。いろいろ対策を講じていますが、1番目と2番目の矢はカンフル剤のようなもので、一番大事なことはしっかり体力をつけて、経済を成長軌道に乗せることです。
その第3の矢に相応しい決定的なテーマがまだ私には見えません。
――長年、経済自立が叫ばれてきた北海道ですが、道のりは。
近藤 ひと言でいうと、自立への道のりは容易ならざるものがあります。北海道経済は社会・経済環境の変化に対応し切れないまま、慢性的なマイナス成長を長年にわたって引きずってきました。
総生産額(名目GDP)をみても、十数年前に最大で21兆円あったものが、今では18兆円に落ち込んでいます。成長率をみても47都道府県で最低ランクにあるし、域際収支も毎年3兆円から3・5兆円の赤字となっています。
とにかく、国も道も財源が厳しい状況にあります。その中で、あれもこれもというのは無理です。
だから地方は置かれた特殊な状況を認識して独自の特殊解、即ち自らの強みを活かした将来像を導き、しっかりとしたビジョンを作って、それをもとにこれは優先して、これはちょっと抑えてと、お互いがトレードオフの関係になるよう進めていくべきです。
また、最近、お金の使い方は個別の対策ばかりで、将来につながる体系的な配分をしていないように写ります。
優先順位を決めて雇用・税収増につながるテーマに体系的に配分し、これをものにしながら、いずれは個別の対策がいらなくなる全体を作ってほしいですね。

未だ先行き不透明なフード特区活動

――そんな中、近藤会長は、食の総合産業化に取り組んできましたね。
近藤 この先、北海道はどうやって明日の糧を得ていけばいいのか、ということです。
北海道経済が低迷から脱却するには、自立的な産業構造への転換を図らなければならない。
そこで、北海道の優位性ある農水産業を核とした1次産業の高度化、食品産業における高付加価値化、観光産業との連携・融合による「食の総合産業化」に道民挙げて取り組むべきものと考え、09年の食クラスター活動開始を皮切りに今日に至っています。
――11年末に「フード特区」が認可され、12年4月にフード特区機構がスタートしました。この1年の成果や課題を。
近藤 食の基礎研究から開発まで、きちっとした体制を整えて付加価値の高い食品を開発していこうという考えから、研究開発施設の充実も国にお願いしてきました。いま「フード&メディカルイノベーションセンター」という、約36億円の施設が建設中です。
これはフードをサイエンスレベルでとらえて、メディカルと融合した研究で高付加価値商品を開発しようというものです。5年先、10年先が楽しみです。
また「グリーンケミカル研究所」もあります。ここは密閉型の植物工場で、植物由来のワクチンとかインターフェロンを製造するものです。これも将来、特区の仕事の成果として期待しているものです。
そのほか江別市のヒト介入試験もあります。
しかしながら、最終的に重要な輸出拡大については期待通りに進んでいません。スタートはしたものの、助走路で足踏みをしている感じです。明らかな課題がありながらも解決なしでは前進は難しいということです。
具体的には目指す東アジアの市場に営業拠点の事務所を置くことがかなわず、販路の開拓は期待通りに進んでいません。
また販路拡大の既存の体制がありながら活用できないのも課題です。販路開拓は市場に腰を落ち着けて双方の信頼関係ができてのものであり、外注して出張者に頼む仕事ではないと考えるだけに、拠点づくりが不可欠です。また、物産展も大事ですが、これはお見合いみたいなもので、そろそろこれをきっかけにしたお付き合いで結ばれることが大事です。
――江別のヒト介入試験というのは。

全国注視「産官学民」の江別モデル

近藤 これは江別市の三好昇市長が中心となって、市役所・北海道情報大学(西平順教授)・市立病院・保健センター・市民が「産官学民」で一体となって進めている「食と健康のまちづくり」プロジェクトです。
このプロジェクトは、機能性食品を開発するための臨床試験(ヒト介入試験)に市民が参加するシステムです。江別市民の健康意識は高く、すでに2700人が登録しています。参加者はメーカーが開発した食品を一定期間食べ続け、定期的に身体計測や血液検査を受けます。参加者は無料で健康診断ができます。
市立病院、保健センター、市内20カ所の検査ステーションなどで得られた健康診断データが情報大学のサーバーに送り込まれ、そこで統計・分析されます。ヒト介入試験には既に雪印メグミルク・アミノアップ化学はじめ本州大手食品メーカーも多数これを利用し、機能性食品開発の大きな力になっています。
フード特区の事業で国からも大きな期待が寄せられています。
また、市民と病院と市役所と食品メーカーが一体的に取り組む難しさから他に例がなく、全国的に〝江別モデル〟として関係者間で話題になっています。道内広く展開されることを期待しています
下村博文文科大臣からも「期待しています」と応援してくれています。私も応援しています。

オランダ・フードバレーの北海道版

――13年9月に、国家戦略特区で「JAPANフードピア構想」を提案されましたが。
近藤 政権が交代してアベノミクスの中で、国家戦略特区が出てきました。
そこで、かねてオランダの取り組みが非常に参考になるので、その北海道バージョンを作っていきたいなと。それがフードピア構想です。この名称は道庁の若手が考えたものです。フードでユートピアを作ろうということです。
――オランダはどこがすごいのですか。
近藤 オランダの成功の一番の理由は、北海道と同じ〝苦境〟です。
オランダはもともと貿易立国で、植民地をいっぱいもっていた。それが第2次世界大戦後、なにもなくなってしまった。ゼロになった。どうやって生きていくのかと。そこで、食で生きていこうとなったんです。食に付加価値を付けて売っていくしかないと。
それを国の方針として決めた。それがフードバレーです。
国は研究所を再編して、産業界も学会も国のリードのもとに体制を整備して取り組んで今日に至っています。フードバレーには食関連企業1440社強、企業研究所70社、研究機関が20以上集中し、1万5千人の研究者が従事しています。
世界中からキッコーマンなどの有名な企業が集まっています。
北海道の半分の面積しかないオランダでは、現在、農・食品の輸出額が10年前の1・7倍の8兆円に達しており、世界の食の輸出額ではアメリカに次いで2位です。なお、日本は現在、十数年前と約同じ4500億円と低位安定です。これがまさしく残された成長の可能性なのです。

狙いはアジア、イスラム圏巨大市場

――フードピア構想提案の背景を。
近藤 まず中国、香港、韓国、インド、ASEAN諸国などアジアの食市場は、09年の約80兆円から20年には約3倍の約230兆円にまで膨らむと予測されています。このため、この食市場を獲得することにより第1フェーズとして20年には農林水産物・食品の輸出額を日本再興戦略に掲げた1兆円を実現し、第2フェーズとして30年代には8兆円というのが夢です。
一方、韓国では、このアジア市場を狙ってフードポリス計画を打ち出し、10?15年までに500億円を投入して構築中です。狙いはアジア市場における食品ハブです。
このまま手をこまねいていると、港湾の釜山、空港の仁川に続き、日本の成長の芽がまた韓国に取られかねません。加えて、手つかずに残っている約60兆円という巨大なイスラムマーケットの獲得にも取り組んでいくつもりです。
――イスラム圏は豚肉を食べないとか、いろいろネックがあるのでは。
近藤 イスラム圏に食品を輸出する際、イスラム教徒が口にすることを許されたものであることの証明書(ハラール認証)が必要です。それで60兆円市場が〝手つかず〟というか〝手つけず〟になっています。
11月末にはフード特区機構の職員が生産者と一緒にサウジアラビアへ行き、アラブの人を集めて北海道の食のバザーを行い、次につながる成果を得ました。
これについては北海道経済産業局の増山壽一局長が大変熱心で、全面的な協力をいただいています。17年までには本格的にイスラム圏に輸出を開始することが目標です。
フードピア構想は9月に国に提案しましたが、農業改革が少なすぎるとされたため、農業分野の規制緩和を盛り込んで修正案を再提案したところです。
オランダのフードバレーに匹敵する8兆円規模の輸出額が実現された場合、経済波及効果は産出額で約20兆円、これに伴う雇用は年間約200万人と試算しています。内外からの投資、企業進出を盛んにする研究開発や、製造・物流が一体となった「食のイノベーション拠点」を形成し、日本経済の成長に貢献することを目指します。

日本は原子力なしにやっていけない

――最後に原発の再稼働問題を。
近藤 以前にもお話しましたが日本は資源に乏しい国で、原子力なしではどう逆立ちしてもやっていけないと思います。
そうはいっても2年間、原子力なしでやってきたじゃないか、という人がいます。電力会社は供給責任があるから一定の蓄えはありました。
しかし、それも底をつき、料金値上げをせざるを得なくなりました。
それだって12月か1月に再稼働するという前提でやっていますから、再稼働が遅れると本当に厳しい状況になります。
私もかって原発の当事者として、福島の事故ではあきらかに反省すべきことがあります。
しかし、日本は科学技術という文明の力を上手に使いながら、科学立国として成り立ってきた。他の国が日本の3・11を反面教師にしながら原子力を積極的に進めていく中で、日本だけが文明に対する敗北者になっていいのかという思いがあります。
国際競争力を失って失業者だらけになって、国民が気づいたときはもう遅かった、というのではまずいんじゃないかと。
規制当局においては、安全性確認を早急に進めていただき、一日も早く再稼働が実現し、道民の生活、産業の維持発展のため、電力安定供給が取り戻されることを期待しています。
今後は、再生可能エネルギー、自然エネルギーを今まで以上に高めていくことは当然ですが、原子力の意義も認めて、そういうものを取り込んだ形でのベストミックスを考えていくべきだと思います。
――ありがとうございました。

=ききて/干場一之=