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Interview

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北海道再生の柱は“観光と農業”だ!
~特区でカジノを~
掲載号:2010年7月号

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佐々木正丞 北海道経営者協会前会長

「道州制・分権論議は、身の丈にあった生活をしなさいよという“切り離しの思想”だ」――とすれば切り離される北海道は自ら食う道をどうやってつくるのか。北海道経営者協会の佐々木正丞前会長が展開する、刺激的な北海道再生論をお届けする。

ばらまき財政がはがれ落ちると…

佐々木正丞氏が、武井正直氏の後を受けて北海道経営者協会の会長に就任したのが2004年6月。
以来、3期6年を務め、この6月の総会で北ガス相談役の前泉洋三氏にバトンを譲ることになった。
(インタビューは5月末だが、本誌が店頭に並ぶころには会長を退き、顧問に就任する予定なので、佐々木氏の肩書を前会長とさせていただいた)
◇    ◇
――道経協の6年間をふり返っての率直な感想を。
佐々木 ちょうど経済が下り坂の時期でしたので、企業の業況も低迷する中で会員数も減りましたし、雇用情勢も一段と厳しくなりました。  ただ、雇用環境が悪化する中で、道をはじめとする行政、及び連合北海道とともに「雇用創出の実現に向けた合意」を取りまとめ、就職支援活動に積極的に取り組んできました。
雇用を示す大きな数字が2つあります。失業率と有効求人倍率です。
北海道は、県単位でいくと沖縄、青森などよりは上なんですが、東北ブロックだとか中国ブロックといった全国ブロックで比較すると、長年の間、ほとんどが最低なんです。
高校生、大学卒の就職率も一番悪い。特に、今春卒業予定の道内高校生の就職率が低迷しました。道経協としても会員企業に就職面接会、説明会などへの参加協力を呼びかけました。
雇用の創出は、企業業績の持ち直しなくしてはあり得ません。北海道では各企業の努力に加えて、公共事業が景気浮揚に果たす役割も大きいので、民主党北海道に対しても強く意見、要望を出してきました。
――景気が少し持ち直してきたといわれますが、北海道にはなかなか明るさが伝わってきません。
佐々木 実は私は、来年は非常に厳しいのではないかと心配しています。
というのは麻生内閣で、リーマンショックによる世界的な金融経済危機への対応で緊急的にずいぶん財政出動をしましたが、続く鳩山新政権はそれにも増して財政負担が拡大している。来年になるとそれがはげ落ちると思うんです。
国の財政が傷んでいますから基本的に地方に金は出せない。いまの政権が出し過ぎているので、その反省から今後急速に財政再建論議が高まって、結果、はぎ落とされていく。そうすると目先、来年は大変だと。
i2?  ――そうした中で北海道再生をどう図るかを。
佐々木 広大な北海道には有形無形のすばらしい資源があり、もっと成長できる素質があります。
その可能性を生かせるかどうかは、われわれの頑張り次第です。一番大事なことはやはり創意工夫です。知恵とやる気ですね。国だのみ、公だのみの発想から脱して自分たちでなんとかしていかなければならない。
北海道は北の防衛、資源供給で、かつては日本の中で非常に大きな役割を担っており、歴史的に国の援助によって発展してきた地域です。それに慣れ切っちゃって、中央依存体質になってしまった。しかし、もう国の手厚い援護は期待できません。
道州制論議、分権思想というのは、裏からみれば、身の丈にあった生活をしなさいよという“切り離しの思想”ですよ。北海道は必死になって食う道を考えていかなければならない。

北海道が“アジアのハワイ”になる

――北海道が成長できる素質というのは。
佐々木 私は、その一番は観光だと思います。
観光と、もう一つの柱は農業です。農業もいろんな制約がありますが、最近は株式会社が参入するような方向にもなってきた。
北海道の域際収支は2兆円のマイナスですが、私は観光と農業がタイアップすれば、10年で2兆円ぐらい稼げるようになると考えています。北海道より小さなヨーロッパの国はたくさんあります。知恵とやる気さえあればやっていける。
――佐々木さんはかねてから「北海道を“アジアのハワイ”に」とおっしゃってきた。
佐々木 そうです。北海道は“アジアのハワイ”ともいうべき国際観光地を目指すべきです。
これからの観光は従来型の観光ではなく、体験型です。ゴルフやってください、スキーやってください、キャンプやってください、テニスやってくださいと。
最近は花粉なしツアー、医療ツアーといった新しいものも生まれてきた。
そういうものを提供できるインフラが北海道にある。
i3?  津軽海峡のブラキストン線を境にして、北海道の動植物の分布は、本州とは全然違う。生物分布からすると、北海道はアジアじゃないんです。
北海道は何にもまして、きれいな空気、きれいな水、すばらしい自然がある。これがアジアの人には貴重なんですね。
所得水準がある線を越すと人間の欲求は衣食住にとどまらず、勉強したいとか、知らないものを見たい、知らない文化にふれたい、新しい体験をしたいといった新たな精神作用が働きます。
観光というのはそういう高度な精神活動なんです。
そういう意味で、いまアジアがものすごい勢いで変わっています。世界の3分の1以上の人口のところが立ちあがりはじめている。 韓国や中国からの観光客がずいぶん増えましたが、これからはさらにどんどん来るようになる。
観光客は、要するに面白いからくるんですね。観光とはこうであるなんていう、先祖伝来の秘法なんてない。来てもらうためにどうすればいいのかを、みんなで必死になって考えなければならない。
観光では、北海道観光振興機構の坂本眞一会長が大変頑張っておられる。坂本さんには大いに期待しているんです。

極端なカジノ拒否はいまや日本だけ

 ――カジノ誘致論も主張されてきましたが。
佐々木 北海道を短期間で栄えさせる方法として私はカジノを誘致すべきだと考えています。
カジノというのは異常なほどファンというか、吸引力があるんだそうです。観光ということからすると、まさに北海道が適地だと。
北海道にはゴルフもテニスもカヌーもスキーもある。さらにカジノのようなものもあると。そういう体験型の国際観光地を目指すべきだという考えです。
――しかし、治安が悪化するとか、子どもに害があるとか、反対論も多く、なかなか盛り上がらない。
佐々木 先進国といわれている国の中で、こんなに極端にカジノを拒否している国はいまや日本だけになってしまいました。
i4 まずはパスポートを持った外国人だけに認めればいい。先ほども言いましたが、北海道はいま必死になって食う道を考えていかなければならないのですから、頭から拒否するのではなく、論議、勉強をする必要があると思います。
道州制、分権論議の中で、北海道は観光で稼ぐからこれこれの特権を下さいと言うべきだと思います。観光立国という国策にそって、観光客を倍増する役割を北海道が果たしますよと。
北海道は、明治時代には資源の供給、人口の受け皿、そして北の守りと、日本における重大な位置を占めていた。こんどは形を変えて、貴重な“アジアのハワイ”として、もう一回、日本の役に立って、アジアの役にも立っていくべきだというのが私の考えです。
北海道が道州制のモデルケースとなっているいまこそわがままがきく。
道州制はまっ先にやる、そのかわりカジノだとか空港利用料だとか、その他の特権を下さいというべきです。

北海道から九州まで新幹線で物流も

――新幹線や社会資本整備では、北海道は全国に比べて遅れていて、まだまだ国の援護が必要です。
佐々木 国だのみの時代ではないとはいえ、国に対しては「せめて義務教育程度の面倒は国でみてください」と言いたい。
具体的には、高規格幹線道路や新幹線の整備のことです。高速交通体系は、全部、密にやってくれというんじゃなくて、いまつながっていないところはやってくださいと。
新幹線は札幌までもってきてくださいと。そういう基本的なものをやってもらって、あとはわれわれの努力次第だと思うんですね。
地域間で競争する時代に入り、競争に参加する資格として、最低限の義務教育は国に求めていくべきと思います。
新幹線のことが出たついでに言いますが、私は日本の物流は道路に片寄りすぎていると思っています。
道路から高速軌道の大量高速輸送体系に改めるべきだと。いろいろ批判もあるので、ちょっと言いづらいのですが…
――簡単に言えばJRをもっと使えと。
佐々木 まあ、そういうことです。
CO2もグンと減ります。
これも誰も言わないことですが、新幹線も人だけでなく、貨物新幹線でモノも運ぶべきです。
北海道から九州まで新幹線でビューッと新鮮な農水産物を運ぶ。2日、3日かかっていたものが1日以内で行く。大変な物流革命が起きる。日本国土が食に対して強くなります。
i5  北海道は、農業と観光に生き残りを賭けるべきですが、もうひとつ、私の夢はサハリンの天然ガスです。
サハリン天然ガスをパイプラインで日本列島を縦断させるという構想がありますが、海底パイプラインを九州まで通した方がいいというのが私の持論です。
日本列島は弓状になっていますので、日本海に海底パイプラインをサハリンから九州まで通す。
パイプラインは枝分けできるから、ほしいところは枝分けしてもらえばいい。
陸上パイプラインだと土地の買収が必要ですが、海底だとその必要がありません。数兆円で九州まで通せる。陸上の3分の1、5分の1ですむし、陸上だと土地偏重の日本では成田闘争みたいなことになりかねない。
――サハリンの「赤いガス」はいつパイプを閉められるかわからない。危ないという声がありましたが。
佐々木 その心配はありません。パイプラインというのは、こっち側が閉められても、逆の方のマレーシアやインドネシアからのガスを入れればいい。
そもそも紛争というのは主にエネルギーと食料で起きるんです。
日本の食料自給率はいま40%とかいっていますが、安いエネルギーさえあれば食料はいくらでもできる。北海道には土地はあるんですから、最低限、日本人は飢え死にしなくなる。数兆円といったって国の安全、食料とエネルギーの安全ということを考えれば安いものです。
もっと将来のエネルギーということでは、メタン・ハイドレートというものがある。大陸斜面の海底数百メートル程度のところにあるメタン水和物です。北海道では日高沖とか、国内のあちこちにあることが確認されている。
ただ、安全に大量に採る方法がまだ確立されていない。国の方でも試験している段階ですが、これがうまくいけば、 エネルギー資源を自国内で確保し活用できます。
――ありがとうございました。

=ききて/干場一之=