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Interview

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北海道価値を磨き先進的社会モデルを創造する掲載号:2012年1月

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高橋 はるみ 知事

 2011年4月、高橋はるみ知事は圧勝で3選を飾った。だが、選挙戦のさなかに東日本大震災が発生、その対応に追われた。しかも、泊原発、TPPと頭の痛い課題が山積している。一方、明かりがともったのが新幹線の札幌延伸だ。

知事選で全市町村1位得票に感謝

――2011年は知事にとって、どんな年でしたか。
高橋 まずは選挙ですね。多くの道民の方々からご支持ご支援をいただいて、3選を飾れたことが、私個人にとっては1番大きな出来事でした。最もうれしかったのは、179市町村すべてで得票1位になったことです。
しかし、3期目になるので、これまでの経験も踏まえて、もう少し楽に仕事ができるのかなと思っていたら、一切そうはいかなくて、3月11日に起きた大震災という前例のない事態への対処がいまも続いています。風評被害対策で2011年12月、上海に行ってきます。道の上海事務所を開き、北海道の売り込みをもっとおこないます。上海を含む中国からの来道客が減っています。これを戻す努力をしなければなりません。輸出拡大にも努めます。
また、泊原発ですが、いま1、2号機とも止まっています。3号機も12年春には止まる予定という状況の中で、やらせの問題などで失われた信頼の回復を踏まえないと、安全性の問題の議論も前進しません。これは11年の私の大きな政策課題でしたし、12年も引き続き全力で取り組んでいかなければならないと思っています。
――11年度は震災に始まり、原発対策に忙殺される1年ですね。
高橋 新幹線の札幌延伸着工の要請、TPP反対もやってきましたが、11年を振り返って1番重たい課題は、震災対応であり、その一環としての原子力、エネルギー問題でしたし、12年も引き続き、そうだと思いますね。

TPPには反対 強い農業づくり

――TPPが締結されると、北海道へはどのような影響を及ぼしますか。
高橋 農業団体ばかりではなく、経済界、労働界、消費者団体など、オール北海道で「道民合意なくして交渉入りはやめてほしい」と言い続けていたのに、TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入ることを国際的な場で野田総理が発言されたことは、大変残念だし、遺憾だと思います。
道庁内にTPPの対策本部をつくり、さらなる情報収集をし、21分野で影響としてどのようなことが起きると想定されるのか、一 つひとつわかりやすく道民のみなさんに情報提供をし、議論をし、みんなで意識を共有したいと思います。
農業政策については全国知事会を代表して直接、総理に申し上げたのですが、先般、政府が出した、我が国の食と農林漁業再生のための基本方針・行動計画は、方向性を出しただけなんですね。具体的にどのような形にするのか、財源も含めてまったく出ていません。それをわれわれの側から提言していかなくてはなりません。
また、農業の規模拡大はどのようにするのか。兼業でサラリーマンの傍ら米づくりをしている他の府県の農家の方に対する戸別所得補償制度のあり方と、北海道のように専業性が高く懸命に米づくり、農作業に従事している農家に対して、同じような対策というのはおかしいでしょう。
カロリーベースの食料自給率で北海道は約200%です。全国は約40%です。日本の食を支えているのは北海道です。われわれは食料供給基地としての誇りと責任を持って農業をおこなっています。ところが、その北海道で酪農家をはじめ農家の方の中から、将来の営農を不安視する、悲観視する声が出ています。大変憂慮すべきことです。
野田総理も食料自給率は下げない、むしろ上げると言っている。それなのにTPPに入るというのは、矛盾するんですよ。
また、砂糖の原料になるてん菜(ビート)に、輸入品に対抗して付加価値をつけろと言われても、それは難しい。価格で太刀打ちができません。でも、北海道は輪作の一環でつくらざるを得ない。こういった大きな課題もあります。
ですから、道庁内で議論を深め、知恵を出して、TPPについては情報収集をまずおこない、その上でどう対応していくかを総合的に協議するため私がヘッドの対策本部を立ちあげました。
――政府はTPP参加のメリットとデメリットをきちんと国民に示していない。参加する気なのに、それすら曖昧な言い方に終始しています。
高橋 国会の答弁でも明言を避けてますよね。
――小泉改革以上の規制緩和の嵐が吹きまくる可能性が大ですよね。日本の国の制度をアメリカの企業が活動しやすいように変えろと言われているのと同じだと思います。
高橋 自由主義的な経済運営はプラスの面も大きいんですよ。競争を高めて強いところが勝ち取る。しかし、規制緩和だけを進め、国内対策をやらず、弱い立場に追い込まれる人たちへの対処をせず、新自由主義経済を推し進めたら、必ず格差が拡大します。そのことはまさに、いまの政権与党のみなさんが1番嫌ってきたはずのことなんですよね。それをここでやることがいいのかどうかという議論もあり得ますね。

脱原発の視線で再 生可能エネルギー

――原発とエネルギー政策に対しては、どのようなスタンスでいくのですか。泊原発については、北電や道のやらせ問題も発覚していますが…
高橋 まずは信頼回復が大前提です。その上で申し上げるのですが、冬場の電力は、北電と国と道との3者の連絡会議の場で需給などについて情報交換をおこなった結果、供給予備力が確保されているところではありますが、国や北電と連携しながら、電力の安定供給に万全を期すため、今冬は北海道も無理のない節電をしていきたいと考えています。
それは省エネルギー、地球温暖化対策でもあるし、また、私たちが節電することによって、復旧復興に取り組んでいる被災地の東北に送電の余地を残せることにもつながります。
ただ、停止中の泊原発1、2号機の再稼働について、さあ議論をしましょうという状況にいまあるとは、私は認識をいたしておりません。いま動いている泊原発3号機は、12年春には定期検査で停止します。
私は電力需給のバランスを取ることも大事だと思っています。しかし、一方で、道民の皆さまの信頼感を踏まえた上で、安全性をしっかり確保することも大事だと考えています。
どちらがどちらより優先する判断の基準だとは思っておりません。どちらも全うしていかなければなりません。だから少し時間がかかると思っています。
――その際、重要な要素になるのが、道民の信頼感ということですね。
高橋 やらせ問題などで事業者の北電に対する道民の視線は厳しいものがあると思います。また、道としても、今回の第三者検証委員会による調査結果におきまして、当時の担当課長が、本人の意図するところではないにしても、プルサーマル計画に賛成する立場からの意見の提出などを依頼すると受け止められる発言をしたとされたことについては、大変に重く受け止めなければならないと認識をしています。私自身への処分ということを含め、責任を取っていきたいと考えているところです。
また、エネルギー政策に関しては、平成12年(2000年)に北海道省エネルギー・新エネルギー促進条例を定めています。そこには次のように記しています。
「20世紀の半ばに実用化されて原子力は、発電時に温室効果ガスを排出しないことなどの優れた特性を有している反面、放射性廃棄物の処理及び処分の方法が確立されていないなどの問題があることから、過渡的なエネルギーと位置づけられる」「私たちは、積雪寒冷な北海道においてエネルギーが社会経済の健全な発展と生活の安定のために不可欠な要素であることを深く認識し、脱原発の視点に立って、限りある資源を可能な限り将来に引き継ぐとともに、北海道内で自立的に確保できる新しいエネルギーの利用を拡大する責務を有している」
私の基本スタンスはこの条例にのっとったものです。ただ、北電の電力供給の4割が原発によるものでした。これらを北海道の特性を生かした地産地消的な再生可能エネルギーに転換するためには、国が相当の投資をおこない技術開発を進め、売電、送電に関してもいっそう環境を整える必要があります。

新幹線札幌延伸に向け大チャンス

――北海道新幹線の札幌延伸に対する国の姿勢が、ここにきて大きく前進したと思うのですが…
高橋 もちろんまだ楽観はできません。ただ、6月7日に参院国土交通委員会で「国鉄清算事業団の債務等の処理に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議」がなされ、北海道新幹線新函館・札幌間を含む未着工3区間について「工事実施計画の速やかな認可に向けた検討を急ぎ、早急に結論を得て、早期の工事着手の実現を図ること」とされました。
さらに、整備新幹線の施設使用料を、未着工区間の建設費に充てることが盛り込まれ、財源を捻出できる可能性が出てきました。
こうしたこともあって、まさにいま機が熟しつつあると思っています。私は歴代の国交大臣に札幌延伸を要請してきましたし、現在の前田武志大臣にもお願いをしているところです。何としてもこの機会を捉えて、北海道新幹線の札幌延伸を勝ち取っていきたいと思っています。
並行在来線の経営分離の問題に対しても、慎重に一つひとつの自治体と信頼関係を持って調整していかなければならないと思っています。地元のみなさんのご理解をいただくよう鋭意取り組んでいるところです。
――北海道経済をどのようにして活性化させますか。
高橋 フードコンプレックスの総合特区がどうなるかは、年内には決着がついていると思います。
いずれにしろ道外の需要の獲得や域内循環を高めて、民間が主導する重層的な力強い構造にする必要があります。
まずコアは食です。素材の良さを生かしながら付加価値を高めていく。これを地域を越えて、あるいは産業界を越え、さまざまな事業者が一緒に協力し合う『食クラスター』を展開し、ものになるものをさらに増やしていきます。
加工組立型のものづくりの振興、誘致もしっかりやっていきます。円高で工場が海外に移転する傾向にありますが、一方でタイの水害のような一定のリスクもあります。そういう意味でコアの部分は日本に残さなければならないと多くの企業が考えたのではないでしょうか。チャンスはあると思います。
11月にはデータセンターが石狩湾新港に設置されました。全国的に見ても大変大規模なものです。データセンターにとって、最も大きなコストは冷房です。冷涼な気候の北海道ではそのコストを大幅にダウンできます。これをセールスポイントに、バックアップ態勢にも有益なデータセンターの誘致をしていきます。
もうひとつは再生可能エネルギーです。資源賦存量は全国でもトップレベルです。ソフトバンクが太陽光発電の実証施設を北海道に2カ所設置してくれることが呼び水になり、いくつもの話が舞い込んでいます。そういうものを私たちはものにしていかないとダメです。また、エネルギーの地産地消もやっていくことが重要です。

=ききて/酒井雅広=