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Interview

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北海道は映像人を魅了する掲載号:2012年11月

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岡田裕介 東映社長

 北海道は東京に次ぐ全国有数の映画ロケ地である。その美しい景観、独特の空気感は、映像人を魅了してやまない。道内各地で何本もの映画を撮影してきた東映。その陣頭指揮をとる岡田裕介社長が、北海道の魅力を語りつくす。

「北の」とつけたのは吉永さんの提案

――2005年公開の「北の零年」に続き、吉永小百合さん主演の「北のカナリアたち」が11月3日から公開されます。
岡田 当社は1999年公開の「鉄道員」(ぽっぽや)もそうですし、北海道を舞台にしたものが多い。やはり北海道は映画に非常に向いているというか、雪、広大な土地、いわゆるスケールの大きな景色を含めて、映画には欠かせない地域だと思っています。昨年は、うちの若手で札幌出身の男が企画してやった「探偵はBARにいる」が大ヒットしました。
――「探偵は―」の次回作の撮影は、もう始まっているそうですね。
岡田 9月25日にクランクイン。札幌・室蘭のロケからスタートしています。
――「北の零年」「北のカナリアたち」は、ともに「北の」と銘打たれていますが、シリーズというわけではないのですか。
岡田 そういうつもりではなかったんですが、最初の「北の零年」は、私がつけたんです。関係者からは、いい題名だと言われました。それで今回の映画を企画するに当たって「北の」がついたほうがいいのではと提案してくれたのは吉永さんなのです。
――前評判は上々のようで。
岡田 出資者のみなさんは絶賛してくれています。私自身もできは悪くないと思っていますが、こればかりは見ていただいた人たちの評価ですから。
i2――岡田さんはこの映画にどのあたりまでかかわられているのですか。
岡田 東映創立60周年記念作品として企画の段階からかかわっています。こういう話をやろうかというところから始まりまして、脚本家の那須真知子さんと一緒にストーリーを練っていく。2人で2年くらいかけました。その途中途中で、こういう話でどうかというのを吉永さんに提案させていただいて出演交渉。吉永さんも前向きでした。あるとき吉永さんのほうから連絡があり、今回の物語はある小説にすごく似ているという指摘でした。それは吉永さんが読んでいた湊かなえさんの「往復書簡」という小説でした。内容についてはまったくの偶然だったんですけれど、後々問題に発展する可能性もないわけではない。われわれは湊さんの許可をいただいて、脚本を逆に「往復書簡」の内容に似せていくことにしました。そういうことで今回、湊さんには「原案」という形で名前を連ねていただいています。
そして、監督に阪本順治さん、撮影に木村大作さんを〝組閣〟するところまでかかわり、あとはプロデューサーに全部預けました。
――その間、2年くらい。
岡田 そうですね。60周年記念作品ですから吉永さんに出演していただきたいということで、実はこの作品の前にも4、5本、提案させてもらったのですが、なかなか首を縦に振ってくれない。やっとOKになったのが「北のカナリアたち」でした。
――「北の零年」からは7年ぶりですか。
岡田 その間に08年公開の「まぼろしの邪馬台国」が1本ありますね。
――吉永さんの人気は、とくに中高年の男性には根強いものがありますよね。
岡田 そうですね。男優では高倉健さんの「あなたへ」がヒットしている。こういう国民的俳優の活躍が続けば、映画業界全体として大変ありがたい。

北海道で撮った映像は本州と色が違う

――映像人には北海道の風景を撮りたいという欲求はあるのでしょうか。
岡田 あります。北海道全体に言えることですが、産業を起こさなくてはいけません。北海道は農業だと言われますが、手っ取り早く産業になるのは観光だと思います。すでに素材はそろっているからです。そこに映画界はお手伝いできる。逆に道民のみなさんからは協力していただきたい。
映像人にとって北海道で撮るメリットはみんなが実感しています。撮った画が全然違うんです。同じフィルムでもフランスで撮った映像と日本で撮った映像は、色が違って出る。湿度なのか何なのか、とにかく違うんです。それは北海道にもいえます。やっぱり本州で撮る色とは何かが違う。それは映画に撮った北海道の風景、色を観客は敏感に感じるということです。
――「北のカナリアたち」でも、そうした北海道の色が出ていますか。
岡田 もちろんです。今回のロケ地の場所を知らない人は、たくさんいると思います。利尻、礼文。道外の人が正確な位置を示せる人はそう多くはないでしょう。しかし、われわれは今まで知られていなかった地域を全国に紹介できるし、それが新たな観光資源にも変わるかもしれない。
――利尻、礼文を選んだのは。
岡田 実は最初、釧路湿原の画が面白いと思って、私自身も現地に行って見て回りました。湿原ですから当たり前のことなんですが、本当に歩くのも大変。遠くから写真を撮るぶんにはいいんでしょうけど、俳優があそこで演技するのは無理だとわかりました。
それからだんだん北へ行って網走。でも網走だとやっぱり「網走番外地」シリーズの健さんになる。そんなこんなで稚内まで行きました。それならついでに利尻、礼文まで行ってみるかと。これがなかなかいい。
――それでここだと。
岡田 私が決めたんです。あとは監督、カメラマンの判断。彼らが、ここではできないということになれば、別の場所を探すしかないのですが、2人とも島の景色に魅了されたのでしょう。すんなり決まりました。
――かなり厳しそうな撮影だったようですが。
岡田 私は季節のいいときしか見ずに決めてしまったんです。それで冬に1回、行ってみようと。北海道の人は「利尻、礼文の冬は避けたほうがいい」みたいなアドバイスをくれていたんですが、逆に「よし、やってやろう」という感じになった。
……しかし、ひどかったですね。〝どないなってんだ、この寒さ〟って感じでね。ちょっと、ひとランク上の寒さというか、単なる気温だけではなく、体感温度が全然違う。風の冷たさ、重さ。 何か違うんです。寂しいんですよ。なんともいえない寂しさがある。面白いもので、映画にはそういうものが出るんです。逆にテレビには出ない。
今年は豪雪でロケ地まで行くのも一苦労。連絡船はすぐ止まって帰りたくても帰れない。俳優、スタッフはかなり大変な思いをして撮影に臨んでいました。
今年は豪雪でロケ地まで行くのも一苦労。連絡船はすぐ止まって帰りたくても帰れない。俳優、スタッフはかなり大変な思いをして撮影に臨んでいました。
――最後に見どころを。
岡田 やはり利尻、礼文を見てもらいたいのと同時に、優しく泣ける映画になったと思います。見終わってすがすがしくなったり、また頑張ろうと思ったり。それがささやかな映画の魅力でもあり役割だと思います。

=ききて/=