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Interview

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創立60周年 再創成期を目指し“攻めの経営”
?1人でも1社でも多く、お客さまになっていただく
掲載号:2011年9月

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堰八義博 北海道銀行頭取

 北海道銀行は3月5日に創立60周年を迎えた。震災被害に配慮し、大きなイベントは控えたが、本業では昨年から攻めの経営をおこなっている。堰八義博頭取に今年度の取り組みやアグリビジネス支援などについて聞いた。

企業倒産防止に全力を尽くす

――2011年3月期決算は、ほくほくフィナンシャルグループが経常利益372億2000万円、純利益184億400万円で、北海道銀行単体が経常利益141億1300万円、純利益77億6700万円、自己資本比率10.59%でした。この決算をどう捉えていますか。
堰八 史上最低の金利水準が続いており、いまは実質的にゼロ金利です。銀行は基本的に利ざやで収益の大半を上げていますが、この利ざやが極端に縮小しています。低金利下でも、お客さまの資金需要が強く、どんどんおカネを使っていただけるなら、ボリュームで収益を稼がせていただくこともできます。しかしながら、金利が低く、お客さまの資金需要が弱いという状況が数年続いているので、収益はやや縮小しています。
マーケットでも株価が低迷しています。これまでは株価が回復基調にあったので、預金以外の投資信託の運用、保険での運用などにもお客さまはご興味があったのですが、いまは「じっとしていよう」というムードで、フィービジネス分野の収益も縮小しています。
したがって、銀行の収益構造的には、いまが底かなと思います。
ただ一方で、昨年、一昨年とあまり大きな倒産は出ておらず、不良債権の処理コストは、低位安定で推移しています。地元金融機関としては、こういった経済状況の厳しい時期ですから、場合によっては貸出条件を変更するなど、お客さまの事情に積極的に応じています。金融円滑化法に基づく中小企業からの条件変更等の申出応諾率は95%に及びます。こういった政策、それに基づいたわれわれの具体的行動が倒産の減少につながったと思います。
――そこで今期ですが、東日本大震災もありました。北海道経済の先行きと道銀の経営内容はどうなると見通しているでしょうか。
堰八 北海道経済全体を見ると、3・11の震災の影響は決してプラスにはならない。北海道の場合、直接的な震災の被害は漁業、水産関係で数百億円ありましたが、むしろ観光関係を中心に間接的なダメージが大きいと思います。
また、震災直後はサプライチェーン(供給連鎖)の機能不全が生じ、需要があっても生産がそれになかなか応じられないジレンマがありました。これについては6月くらいになってから、かなりのスピードで回復しています。
観光の面でも4月、5月が底でしたが、夏に入って インバウンド(外国人による訪日観光)のお客さま、あるいは国内のお客さまが徐々に戻ってきています。まだ前年比マイナスですが、6月は海外が35%ぐらいのマイナス、国内も15%程度のマイナスで、当初思っていたよりもだいぶ回復度が速い。これは悪い中でも明るい材料です。
震災は日本の国民のライフスタイルやものの考え方に大きな変化をもたらしました。1つはエネルギー問題です。原発事故を契機に、自然エネルギーの利用、それこそメガソーラーの話まで出ています。その実験プラント候補地に北海道という名前が具体的に上がってきました。
また、このところ放射線の問題に伴い食品の安全についても、議論になっています。ただ、道産品については何の問題もありません。将来の日本人の食の確保、自給自足は非常に重要な問題です。一大農業王国である北海道が、将来にわたって日本国民の食の安全安心の供給基地であるべきです。農業はこれからも北海道の成長分野であると思います。

アグリビジネス支援に本腰

――6月27日に伊達市でおこなった講演で、アグリビジネスの支援を強化し、農業法人、新規就農者の資金需要に応えるという話をしたそうですね。
堰八 かつては地方銀行が農業分野に入っていくことは少なかった。(農業団体には)系統があり、商社機能、金融機能も備えていますからね。ところがいまは、法律も改正になって、全く関係なかった分野の方々でも、農業生産法人を中心に農業への新規参入が可能になっています。
北海道は農業生産法人の数が一番多いのですから、われわれ市中金融機関も農業をビジネス、1つの企業として捉えて、お役に立つ機会がずいぶん拡大してきました。当行はアグリビジネスを積極的に支援するため、本部の中に「アグリビジネス推進室」という専門セクションを設けています。また、行内には、公的資格である農業経営アドバイザーを取得した行員が20名おり、これは全国の銀行でトップです。
アグリビジネスに対する融資は100億を超えていますが、これを近い将来、数倍にまで拡大したいと考えています。
i3――このほかの今年の取り組みを教えてください。
堰八 昨年の4月から3年間の中期経営計画に入っており、今年はちょうどその真ん中にあたります。この計画を一言で言うと「1人でも多く、1社でも多く、道銀のお取引先を増やしていく」、これがコンセプトなのです。昨年や今年入った新入職員から支店長、役員まで、みんなこれを合言葉に取り組んでいます。
残念ながら平成の時代に入ってから私どもは厳しい経営を強いられましたが、おかげさまで一昨年、やっと公的資金を完済しました。その後、道銀の新たな歴史が始まる、つまり「再創成期」に入ったと思います。
それまではどうしてもリストラ中心に頑張ってきました。すべての経営資源も最小限でやってきました。それはそれで良かったと思いますが、これから中長期的に道銀が成長していくために一番大事なことは、お取引先の裾野を増やしていくことです。それが「1人でも1社でも多くのお取引先を」ということです。しかも、お取り引きの量ではなく、数にこだわりたい。
個人でいうと、給与振込口座を道銀に開設してもらうこと。年金を道銀で受け取ってくださる方もどんどん増やしたい。法人でいえば、口座を持ってくれるだけでもいいんですよ。一番いいのはご融資を使ってくれること。そして為替も道銀に扱わせてもらいたい。
銀行の3大業務は、預金業務、融資業務、為替業務と銀行法に書いてあるんです。預金、貸出は一生懸命やっていましたが、為替業務で道銀を使っていただきたいというお願いをしばらくしていませんでした。
銀行業務の原点に返って、融資もお願いしよう、預金もお願いしよう、為替もお願いしよう。取引先の裾野を増やしていきましょう。これが中期経営計画のコンセプトです。成果はすでに出ています。法人取引先は1年間で800社純増しました。
そのためには、単なるお願いベースではダメなんです。いろんなお客さまのさまざまなニーズに応えていかなければなりません。例えば、お客さまから「こんな事業展開をしたいんだが、道銀にいいアドバイスはあるか」「パートナーを探してもらえないか」と聞かれたら、相手を探し、マッチングをし、そして融資に発展させる。いろんなコンサルティング機能を発揮して初めて、新規のお客さまを獲得できるんです。
そのためには人材を育てていかなければなりません。私どもはピークで3500人いた正社員を、ボトムで1700人まで減らしました。それをいま、あるべき姿に徐々に戻しています。契約社員から昨年、約500人、一般職の正社員に登用しました。
総合職の新入行員には、3年間で法人の融資、お取り引きをしっかり覚えてもらうため、配属先の営業店では定員外として、みっちり勉強させます。1年目は預金、為替などの窓口業務をおこない、2年目からは法人融資、法人渉外を学び、3年目で預金も為替も融資もできる一人前にする。4年目には転勤させます。
――かなりアクティブな感じがします。しかも、不良債権処理をまずおこなって、高収益体質を確立し、それから営業拡大に打って出たということですね。
堰八 よく銀行は「寝ている間も金利が入っていいな」と言われますが、一方で資金供給する中では残念ながら倒産するところも出てきます。こういうリスクを抱えて業務をやっているということもあるんですね。株式会社北海道銀行ではあるけれど、極めて公共性の高い仕事をしているんだ、社会インフラを担っているんだと思っています。  社会貢献、CSRもしていかなければなりません。そういった意味で、フットサルの「エスポラーダ北海道」、カーリングの「北海道銀行フォルティウス」の支援などのスポーツ振興、文化振興をおこなっています。

ロシアで仕事をするなら道銀

――道内企業の海外進出へのサポートはどのようにおこないますか。
堰八 ベースは北海道のお客さまが海外に進出するときのサポートです。では北海道銀行が拠点を海外のどこに置くべきかといえば、やはり南ではなく北です。そこで私たちは遼寧省の瀋陽に事務所を開設し、北京の札幌市の事務所に行員を派遣しています。そして、ロシアのサハリン州ユジノサハリンスクに事務所を構え、大陸のウラジオストク、ハバロフスク等もカバーしています。
ロシアとの商取引は確かに難しい面もありますが、経済交流や教育、文化の交流は続けていかなければなりません。そういった意味で民間が旗振り役をやることも大事です。
北の端にある地方銀行の北海道銀行が、少しずつ道をつけていきたいと考えています。
いまロシア極東との間では、農業の分野でも面白い仕事ができそうです。何しろ広大な土地が無限にあるのですから。向こうは農業技術、酪農技術のニーズが非常に高いのです。うまく技術提供をして、例えば安い飼料を北海道に輸出させ、それを使った食肉を逆に輸出することも考えられています。
寒冷地住宅、自動車ディーラー、建設資材会社も進出しています。
当行はロシアの大手銀行と提携をしており、ルーブル建ての送金では、日本の国内銀行で私たちが1番便利です。メガバンクよりもです。これは北海道銀行の隠れた特色になっています。
――3月5日に創立60周年を迎えましたね。記念事業はしないのですか。
堰八 やろうと思っていた矢先に、3・11の大震災が起きてしまいました。道内の主要都市で、感謝の集い的なものと記念講演会をやり、いままでのお取り引きに感謝すると同時に、「これからも道銀をよろしく」と直接お客さまに申し上げる予定だったのですが、中止しました。その代わり5000万円を日本赤十字社に寄付いたしました。
そのほかでは、北前船寄港イベントへの特別協賛、札響のヨーロッパ特別公演に500万円の寄付をおこないました。来年2月には絵画の道銀コレクションの展覧会を開催します。

=ききて/酒井雅広=