「情報を先取り、タブーに挑戦」を編集方針とし、生活者・企業経営者に
最新かつ有益な情報価値をご提供する、北海道の地域政治・経済誌

ロゴ

トップページ > インタビュー

Interview

このエントリーをはてなブックマークに追加

会見すらオープン化できない民主党に
政治主導など望めない
掲載号:2010年12月号

photo

上杉隆 ジャーナリスト

永田町を震撼させる気鋭の政治ジャーナリスト、上杉隆氏。記者クラブ、検察批判、官房機密費等々、日本メディアのタブーを徹底して追及している。そんな上杉氏が間近で見てきた民主党政権の本質。なぜこれほど国民を落胆させたのか、鋭く斬り込む。

政権交代利用して会見のオープン化

――上杉さんは昨年の政権交代で何を一番期待しましたか。
上杉 民主党に期待していたのは2つだけでした。1つは会見のオープン化。ニューヨークタイムズ時代も含めて11年間、この仕事をしていて信じられないのが、フリーランスや海外メディアが記者会見に出られないということ。普通だったらジャーナリストたちが力を合わせて、独裁者だろうが何だろうが、オープンにしろ、説明しろ、会見を開け、と迫ります。ところが日本だけがオープンにしろというと、当事者はいいといっても、新聞やテレビなど既存の記者クラブメディアが開くなという。同業者が反対するという摩訶不思議な構図で、先進国では世界で唯一の体制です。
そこで国民の知る権利、情報公開の見地からも何とかしようということで4、5年前から特派員協会の人たちと一緒に記者クラブの開放を訴えてきました。しかし、クラブ側から変わることはまったく望めないので、これは臨時的に政治の力を使うしかないと。すなわち政権交代です。
――民主党はオープン化に前向きでしたか。
上杉 基本的に民主党の中の人たちは、オープン化の意味を理解している人が多かった。代表経験者の中で当時、私が明確に言っていたのは、鳩山由紀夫さん、小沢一郎さん、岡田克也さんが総理になるのは賛成。菅直人さんと前原誠司さんはダメだと。なぜか。野党時代の記者会見のオープン化に対する姿勢が明確に分かれるんです。
小沢さんは一貫してフリーランスなどにも開放しました。岡田さんも同様です。鳩山さんは私が秘書を務めていた鳩山邦夫さんのお兄さんということで、詳しく会見について話をしている。だから認識も強くて「上杉君、絶対にやるよ」と言っていました。鳩山さんが総理になり、百点満点だとしたら10点にも満たないけれど、岡田外相などがオープンにしました。
i15――オープン化で政権の何がわかると。
上杉 役人との対決で勝っている政治家ということです。霞が関の言いなりにならない。結果として政治力があって、政策も遂行能力がある。つまり評価できると。事実、岡田さんは密約問題を明らかにしました。
小泉純一郎さんが2001年の4月21日に総理に就任して最初にしたことは内閣記者会の改革でした。記者クラブをオープン化し、フリーランスと同時に海外メディアも入れると。既存メディアと大げんかになりました。1カ月弱くらいで決着するんですが、実はわれわれフリーランスは秘書官の飯島勲さんに陳情していたんです。結局、特派員協会から毎回2社、それとスポーツ新聞を3社が入れることになった。
たったそれだけのことで大ごとなんです。あの小泉さん、飯島さんですら、そこまでしかできなかった。
一方で、クラブにぶつかったということで、既存メディア側もビビった。こいつらやってくると。だから長期政権になったのかなと思いますね。
――オープン化すると政治家は強くなると。
上杉 その2年前、私がまだニューヨークタイムズの記者だったころ、石原慎太郎さんが東京都知事就任と同時にオープン化をやっています。このときは半年間もめた。最終的には知事が勝って、1週間に2回開く会見はフルオープン。クラブメディアは、これ以上オープンなことをするのではないかと思って下手に出る。事実として都知事を12年やっています。

一般、特別208兆円を総組み替え

――もう1つの期待は。
上杉 予算の総組み替えです。記者クラブが裏だとしたら、表の部分は予算の総組み替え。小沢さんは4年ほど前、「ホテルイースト21東京」で大演説をぶったことがあるんです。そのときに言ったのが、一般会計、特別会計の合算208兆円を総組み替えするということでした。それが今日に至る行政刷新会議、事業仕分け、国家戦略局の予算編成の部分なんです。
i16私はこれを聞いて、とんでもないことを言ったなと思いました。もしできたらこれは一挙に日本の政治システム、社会システムが変わる。つまりこれまで道路予算に6兆円使っていたものを半減したとすると、余った3兆円は省内の奪い合いで、6兆円の額は基本的に変わらない。ところがこれを1回ゼロベースにして、単年度でいったん3兆円にして、残りの3兆円を保健・医療とか、教育とか、省庁間を飛び越えてもいいことにする。これが総組み替えなわけです。さらに社会資本整備事業費とか年金特別会計なども、合わせてガラガラポンしてしまおうと。
年金特会だけで55兆円、社会資本事業整備費が3兆円、地方税の配布金で19兆円。それだけでも合算していろいろな形で使うとなれば、相当なインパクトを持ちます。霞が関はしょせん人事と金。つまり予算の編成権を100
%奪う。それは予算に伴う人事権も奪うことになります。つまり予算がゼロになった省庁は人がいらなくなるということですから。
――記者クラブが表裏一体というのは。
上杉 全省庁には記者クラブがぶら下がっています。情報操作をして政権がやろうとすることに逆スピンをかけてくる。それをやらせないためにもオープン化が必要なんです。
――結局、鳩山政権で会見をオープン化したのは。
上杉 鳩山さんは、ややぐずつきながらも最初の記者クラブの会見は一部だけ開けました。9月の政権発足でいきなり裏切られた。結果、オープン化したのは岡田外相、亀井静香金融・郵政改革担当相、少し遅れて原口一博総務相、仙石由人さんのあとを継いだ枝野幸男行政刷新担当相。役人を抱えている総務、外務、金融庁の大臣がやったのは立派だと思う。
――菅内閣でオープン化しているのは。
上杉 馬淵澄夫国土交通相だけと言っていいでしょうね。開いているのは一切報じられない。前原さんに代わった外務省は会見時間を短縮しました。オープンの会見時間を減らせば、クラブ側は都合がいい。自分たちの時間が増えるから。金融・郵政改革担当相の自見庄三郎さんは亀井さんのスタイルを踏襲しているんですが、役人の文書を読んでいるだけ。総務省は片山善博大臣になって完全にクローズになりました。
i17――民主党政権は官僚に取り込まれていると。
上杉 象徴的なのが官房機密費の問題です。政権をとっていないときは全部オープンしろとあれだけ言っていたのに、官邸に入った瞬間、平野博文前官房長官は「官房機密費って何ですか」ととぼける。政治主導などまったく望めない。この政権は終わったなと思いました。
官邸というのは政権と官僚との最大の接点。霞が関は官邸に注力します。そこに各省庁からエース級を送り込んで政権を骨抜きにし、コントロールするわけです。そこに記者クラブという情報操作機関もある。
鳩山総理が指示しても官房長官会見は1秒たりともオープンになりませんでした。仙石さんも同様です。官房機密費の公開も政権の本気度を知るいい指針で、これを開けたら官僚に勝てるでしょうね。要するに官僚の最大の武器だし、記者クラブも武器なわけです。そこをぶっつぶした瞬間に勝てるでしょうね。

日本でしか通用しないお子さま外交

――尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件の政府の対応をどう思いましたか。
上杉 問題は3つあると思う。1つは船長以下14人つかまえて13人帰したこと。船も返した。これは大失敗です。なぜなら、公務執行妨害だといっているけど、明らかな領海侵犯事案。だったら全員身柄を拘束できます。ある意味、人質を取ったわけです。その当日バラバラになった船員を個別に聴取して、証言の矛盾点を中国側に突きつける。交渉のカードになりました。
2つめは衝突の際のビデオです。公開しなかった。本当に前原外相が言ったような状況だったら、お得意のリークをすればいいんです。記者クラブでもNHKでもいい。日本のメディアがダメならBBCでもCNNでも海外メディアにリークすればいいだけの話です。彼らは喜んで放送します。日本政府は、こんなのが出たのは許せないと言う。これがまさに外交のスピンコントロールです。
――中国はやってますね。
上杉 レアアース輸出禁止だと。しかし、あれは中国政府は発表していない。誰一人も。当たり前です。発表したらWTO協定違反。だからリークしたわけです。ニューヨークタイムズ、CNNなど3社といわれている。これは間違いなくしているでしょう。それでみんな騒ぐわけ。実際に中国政府当局にあてると、知りませんと。まさにこれが外交。優位な地位に行くわけです。  リークもできないで、情報公開もしなかった。その時点で負けです。少なくとも世界が見ているのは事実関係だけ。船長を途中で釈放した。ビデオがあるといっても出してこない。日本は何かを隠している。日本が悪いのではないかと見られている。
――3点目は。
上杉 指揮権発動をしなかったこと。船長を帰したときに法務大臣が指揮権を発動したと言えばすっきりしました。これは法務大臣の指揮権によって政治介入をして、検察につかまっている船長を高度な政治判断によって保釈した。検察の判断ではないと言えば、すべて済みました。
指揮権発動が何か悪いことのように思われていますが、別に外交だから政治介入することは悪いことではない。そうすれば検察の問題だというようなインチキを言わないで、堂々と外交をやったと言えばいい。仮にそれで批判が出たら、これは法務大臣の専権だから、大臣を罷免して責任を取らせる。そうすれば政府も国民も助かるわけです。
――この3つ、どれもやりませんでした。
上杉 前原外交なのか、菅外交なのか岡田外交なのかわからないけれども、お人よしにもほどがあります。世界的に見たら愚の骨頂。これが菅政権の、日本でしか通用しない“ままごと外交”以下の“お子さま外交” の象徴ですよ。

=ききて/鈴木正紀=