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Interview

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丸井支援!伊勢丹の”決意”掲載号:2009年4月

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橋本 幹雄 伊勢丹会長

経営破たんした丸井今井から、支援スポンサーになることを要請されているのが、伊勢丹だ。同社がどのような支援策を提案してくるのかが、非常に注目されている。そこで伊勢丹の橋本幹雄会長に、丸井再建にかける意気込みなどを聞いた。(3月7日現在)

丸井今井の真の再生が必要

――経営破たんした丸井今井は適用を申請した民事再生法に基づき、スポンサー型の再生を目指しています。丸井は2月3 日に行った債権者集会でも、伊勢丹を想定してスポンサー支援を要請していると明言しています。その後、高島屋がスポンサー企業候補に名乗りを上げました が、伊勢丹の“丸井支援”という姿勢は変わらないと思います。伊勢丹は丸井という企業の現状をどのようにみていますか。
橋本 丸井今井に限ったことではなく、日本全国の百貨店、特に地方の店舗は地域経済の実情や雇用の状況 などを反映し、厳しい状況に置かれていると思います。北海道・札幌も例外ではありません。そういう中にあって、道内の都市では郊外に大きな商業施設ができ たり、札幌では同業の大丸百貨店が札幌駅に出店するという状況があり、全体的に競争が激しくなっていました。そのような状況は全国どこも濃淡の差はあって も同じだと思いますね。
――道内のみならず全国の百貨店の月別売上高も対前年比でおおむね二けた減が続いているようです。したがって、丸井今 井が固有の問題のみに起因して売り上げを落としているのではないということは分かります。しかし、丸井今井は2度の私的整理を経ているわけで、今度が3度 目の破たん・再建なわけです。どこかに根本的な敗因があるのではないでしょうか。
橋本 結果論からいえば、「こうなる以前に私的整理ではなく法的整理をしておけば良かった」という意見 はあるのでしょうが、私どもはいま、それについてコメントする立場にありません。ただ、今度が3回目ということを考えますと、少なくても甘い再建案、安易 な再建案が許される状況ではないと思います。
まさに「企業として生き残れるかどうかのギリギリのところに丸井今井はある」と考えた方がいい。したがって、今度の場合は前とは置かれた状況がかなり 違うと思います。一段と厳しい中での再建策をつくらなければなりません。そのために「私たちに何ができるのか」ということを考えているところです。
hashimoto2――伊勢丹は丸井今井がこういう事態に至る前から資本業務提携をしており、人も送り込んでいます。そのため一部には「伊勢丹がかかわっていたのに、なぜ丸井はダメになったのだ」「伊勢丹流は北海道で通用しないのではないか」という声もあるようですが…
橋本それについて私どもがとやかく言うつもりはありませんが、営業を含めた改革というのは「人が行った から、すぐ良くなりました」というものではないと思います。当社が力不足と言われればそれまでですが、そういう安易な状況でもないと思います。仕事の仕 方、商品、サービスなど、いろいろなことを総合的に変えていくためには、ある程度の時間がかかると認識しています。
営業本部長に就任した人間を中心に伊勢丹が数人派遣したからといって、すぐに丸井今井の業績が劇的に変わるというのは難しかったと思います。ただ、現場 ではいままでとは違うことがいろいろ出ていると聞いています。「まだ結果が出てないじゃないか」と言われればそれまでですが、今回は発展途上中に(サブプ ライムローン破たんに端を発する世界不況の影響で)あまりに急激な売り上げ低下に襲われたということだと思います。
――改革途上になったということを考えれば、引き続き伊勢丹の支援で再建を図るのが、分かりやすい道筋なのかなと思いますね。
橋本私どもの基本的なスタンスは、いずれにしてもいままで業務支援という形で、営業の継続を前提の中で 支援をしてきました。この姿勢はまったく以前と変わりません。「(伊勢丹は丸井今井支援を)いままで通りやります」ということを前提に、今度は丸井さんか ら「スポンサーになってください」という依頼を受け、「当社ならどういうことができるのか」ということを社内的に検討しています。

三越札幌店と協力 大通地区を活性化

――札幌の丸井今井本店のすぐ近くには三越札幌店があります。三越と丸井はいままでライバルでした。しかし、もし丸井 今井が伊勢丹のスポンサー支援を受けるということになれば、同じ三越伊勢丹ホールディングス傘下の店舗ということになります。札幌駅周辺に対抗して大通・ 南1条地区の活性化・集客アップに向け、協力態勢を組むことも大いに考えられるのではないでしょうか。
橋本 私どもの出した案が仮に認められたという立場になったら、大通地区全体としての活性化を図ってい きたい。三越と丸井今井とが連携し何かをできるというのが、一番理想的だと思います。おそらく札幌市全体のことを考えれば、“札幌駅1極集中”が望ましい のかどうかという論議があるところでしょう。それよりも(札幌市内の中心部商店街が)面で広がっている方が市全体としてはいい話だと思います。
――来年、大通と札幌駅が地下通路でつながります。そうなるとお客さんの流れもまた変化するのではないでしょうか。
橋本 つながった場合は大通と札幌駅の距離感をいまほどは感じなくなるでしょうね。街のためには、大通と札幌駅という2極があって人が往来するというのはいいことです。
――三越札幌店と丸井今井本店一条館が面している南1条通に地下通路を通そうという構想があり、うまくいくと10年後にも完成するそうです。
橋本 丸井今井にとっても、地域全体にとっても買い物をするお客さまが回遊できるというのは、非常にプラスになると思います。冬の間は特に地下を歩く人が多いですしね。
丸井今井本店は地下鉄が3本通っており、それなりの拠点性があると思いますが、札幌駅も大きな拠点なので、そこから交通機関に乗らなくても歩いて来られるというのは、大きな利点になります。

丸井今井と伊勢丹は長い付き合い

――丸井今井を支援する上で、伊勢丹が中軸に据えていることは何ですか。
橋本 丸井今井さんとは全日本デパートメントストアーズ開発機構(A・D・O)の加盟店としても長いお 付き合いですし、出資をして人も送り込んでという形になってからも3年半ほどたちました。したがって、人的にも会社的にも関係がありますので、私どもとし ては「丸井今井にぜひぜひ頑張ってもらいたい」と考えていますし、「丸井今井に残ってほしい」「できる限りの応援をしたい」という気持ちは十分あります。
――丸井今井を今後、どんな店にしていきたいと考えていますか。
橋本 結果として、いままでのお客さまが少しずつ増えているわけではなく、逆に減っているわけです。いままでのお客さまは当然として、新しいお客さまにも来ていただけるようにしなければなりません。
1月29日に民事再生法適用を申請した後、地元のお客さまが応援するという意味もあって来店したり、「頑張れよ」とおっしゃっていただき、買い物をして くださいました。そういうことから考えますと、丸井今井を応援しようというお客さまのお気持ちを大事にしながら、頑張っていけるような店にしなければなら ない思っています。
――婦人服だとか、紳士物とか、宝飾、化粧品、家庭雑貨など、品ぞろえの面でも変化が出るでしょうか。
橋本 具体的な中身については、まだはっきり言える状況ではありません。ただ、2007年に行った紳士 部門などの改革は、タイミングが悪かったため、結果として数字に結びつかなかったということもありますが、私どもが経営にかかわっていくならば当然、商品 構成も手直しをしていかなければなりません。それは普段から行わなければならないことだと思います。
 ――地方店はどうなりますか。
橋本 どの店をどうするということは言えませんが、一般的に言うと非常に厳しい状況にあることは間違いありません。
ですから、私どもがどういう支援案(再建案)を出すにしても、安易な結論は出しません。「こういうことで丸井今井の存続を図っていきたい」という案を出 すつもりでいますから、どこの店舗を残す、残さないの結論は、結果的に丸井今井が今後とも存続し得るか否かを前提に考えていくことになります。

安易な再建案ではまた迷惑をかけ

――いままでに2回再建に失敗しているわけで、3回目の失敗はいくらなんでも許されません。そういう意味では、企業と して存続できるようにリスクを冷静に計算しなければなりませんね。地域感情や従業員の雇用を優先するあまり、後に「ああいう甘い再建案を講じたから、また つぶれたんだ」ということになっては元も子もありませんから。
橋本 地方店舗の問題も、将来的に丸井今井という会社がきちんと存立できるという中での話だと思います。
丸井今井という全体の会社そのものが残れないようでは困ります。当面はいいという安易な考えの再建案ではなく、「こういう形で残るんだ」と提案できる範囲の中でやることになると思いますね。
――高島屋が手を挙げたことによって、丸井今井と三越がライバル関係で大通地区を盛り上げていくのか、または協力して活性化を図るのか、という2つの道が提示されることになったわけですね。
橋本 当社は丸井今井さんとかなり長い付き合いがあって、同社が1月29日民事再生手続き開始となった直後に支援要請を受けたという経緯があります。したがって、丸井今井さんとも親しく、経営の実態も知っております。
「高島屋さんが出てきたことで、提案の内容が変わるのか」という質問を記者の皆さんから受けますが、そういうことはありません。当社は依頼されたことを受け、「こういうことだったら再建、支援していくことができますよ」と提案させていただくだけです。  丸井今井さんが存続することを私どもは願っているわけですが、私どもの経営が揺らぐようではいけません。私どものホールディングスの株主さんたちにも「支援して良かったね」と言われなければなりません。
――伊勢丹は福岡の岩田屋の再建に成功していますが、キーポイントは何だったのですか。
橋本 丸井今井とよく似ていますが、岩田屋というブランド力があり、顧客にも支持されていました。そし て地元の有力企業が何社も岩田屋を助けようと努力されました。ですから、私どもだけが汗をかいたのではなく、地元のお客さま、金融機関を含めた企業の皆さ んが一体となってサポートし、そこに私どもが参加できたことが大きかったと思います。
丸井今井の経営破たんで取引先の皆さんにはご負担をおかけしています。しかし、今後また皆さんに迷惑をおかけすることがないようにすることが、最も大事なことだと考えています。

=ききて/酒井雅広=