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Interview

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スーパーマーケットを産業として確立する 血が通い、
地域ニーズ・生活習慣に合った新しいチェーンストア
掲載号:2009年10月

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横山清 日本セルフ・サービス協会会長 

(よこやま・きよし)
1935年5月15日芦別市生まれ。60年北海道大学水産学部卒業。85年大丸スーパー(現アークス)社長。89年、丸友産業と合併し、社名をラルズに変更。2002年、福原と経営統合しアークスを設立。社長に就任。09年8月27日から日本セルフ・サービス協会会長日本セルフ・サービス協会会長〉

新しい日本セルフ・サービス協会の初代会長に、横山清アークス社長が就任した。旧日本セルフ・サービス協会と全国スーパーマーケット協会が統合してできた国内最大の食品スーパー業界団体だ。横山会長に協会の運営方針と今後の展望を聞いた。

業界の諸問題を解決するために統合

――新しい協会は加盟481社、売り上げ規模で11兆円という流通業界最大の組織になりました。発足に至る経緯を教えてください。
横山 私自身、最初はスーパーなんてものは、八百屋と魚屋と肉屋を集めて一緒にしたぐらいにしか考えていなかった。「スーパー」なんていうだけに、スッと出てパッと消えると思っていた。
スーパーというものはもうからないし忙しい。何とかせないかんと。けれども、北海道にいるだけでは、どうしても情報に疎くなる。それで旧日本セルフ・サービス協会(セル協)に入りました。40年以上前のことです。当時、セル協は唯一の業界団体でした。
おカネがない、人もいないと言いながらも、ぼちぼちと続いてきて、人を少しずつ育ててきた。ただ、スーパーが認知されてくればくるほど、みんな口をそろえて言うのは「士農工商」、「商」は一番下だと…
――イオンの岡田卓也名誉会長もそう言ってました。
横山 岡田さんのところは、何百年もたっている呉服屋さんから始まったのにそう言っています。私は本当に何もないところから始まった。
私の前任の社長だった中山大五郎さんも狸小路の商人でしたから、商人根性がありました。ただ、昔ながらの店とスーパーとでは考え方がちょっと違う。中山さんは優れた人でしたが、“狸小路”を起点にものを見ていた。私が「郊外の畑の中に200坪くらいのスーパーをつくる」と進言したら、「お前、頭がおかしくなったんじゃないか」って言われたものです。当時の常識では、商業立地といえば中心市街地でしたからね。
――確かにそうでした。 
横山 そうこうしているうちに大手GMSを中心に日本チェーンストア協会をつくり、セル協も、ひところは中小企業だけが残っていた。一方で私どもも加盟しているCGCグループのメンバーの人たちが中心になって全国スーパーマーケット協会(全国協)をつくったのですが、代がかわって「やっぱり一緒になるべきだ」と、統合の道を模索しはじめた。
こういう時代ですから、消費税の問題とか、パート社員の社会保険の問題だとかいろいろあります。圧力団体になる気はさらさらありませんが、そういうことを含めて業界を確固たるものにするためには、まとまっていかなければならないという結論に達したのです。
それでセル協が全国スーパーマーケット協会を吸収合併するという形で統合した。社団法人の登記上の問題でそうなっただけで、実質は対等合併です。

スーパーマーケットを確たる産業に

――横山会長はセル協で名誉会長、全国協では理事長を務めていました。
横山 スーパーマーケットというのは、食品が売り物の75%を占めるセルフサービスの店ですからね。協会役員は他協会の役員を兼職している人が多い。例えば日本スーパーマーケット協会名誉会長(今年7月まで会長)の清水信次さんは、全国協の名誉会長です。
――日本スーパーマーケット協会もゆくゆくは一緒になるのでしょうか。
横山 清水さんも統合には非常に熱心で「やがて一緒に」ということだったのですが、あそこは今年設立10周年なんですよ。だから、10周年をやって、清水さんからヤオコーの川野(幸夫会長)さんに引き継いで当面、川野体制で行くということになったわけです。
ただ、川野さんとは「やがては一緒になりましょう」と話しています。彼もスーパーマーケットを産業として確固たるものにしたいという意志を持っています。思いは一緒ですよ。
――これから競争がさらに厳しくなってくる時代。協会加盟企業同士の合併、業界再編が進むということはないのですか。
横山 高い生産性を保っている、効率がいい、商品や技術開発にある程度の投資ができるという企業は、苛烈な競争を経て生き残ったところです。自動車産業もそうだし、家電やIT、製鉄にしてもそうでしょう。
そういう面からいくと、流通業もまさしくその通りで、いま、何百年も続いている百貨店が苛烈な競争にさらされています。恐らく政令指定都市にしか残らないと言われているくらいです。食品スーパーも同じく競争は非常に厳しい。
――再編で寡占化を進め、ガリバーになって生き残るということですか。
横山 ちょっと違います。確かに生き残って大きくなれば人材は集まるし、売り上げも何兆円という規模に膨らみ、情報を世界に発信していけます。ただ、ゴールがあるのかといえば、ないんですよ。これだけは、はっきりしています。
われわれが模索しているのは、ひょっとすると、まったく新しい道をたどって、新境地を切り開くことかもしれません。新しい形のチェーンストア、あるいはスーパーマーケットカンパニーと言いますかね。外から見たら何も変わっていないのだけれども、中身はまったく違う。サイボーグみたいにね。だからといって、きちっと血が通っており、しかも地域のニーズや生活習慣にぴったりと合っていなければならない。
いまの時代、企業誘致をしても、何千人も雇う店や工場はできやしません。しかし、3人、5人の中小企業が100集まれば300人、500人の雇用が成り立って、豊かでなくても家計が保たれて、健康保険にも入れるし、失業保険ももらえる。それが地域の活力を支えていける形態です。
大もうけはできないが、地域から必要とされる。スーパーマーケット産業に就職して、人生の目的を達成したいという若者がどんどん出てくるような産業になることを目指しています。

業界再編の手本となる八ケ岳連峰制

――いまのアークスの形態が、お手本になるのではないですか。グループ傘下企業が、それぞれの地域に密着して独自性を発揮し、それでいてアークスという旗の下にまとまっています。
横山 いままでは富士山型の企業合同であり合併でした。ところがうちは八ケ岳連峰といって、富士山型 ではありません。ただ、共通の課題、商品の仕入れとか情報システムなどは共通化し、生産性を上げています。重視されるのは商圏内でのシェアです。スーパー というのは商圏内で圧倒的なシェアとなる「クリティカル・マス」を獲得すれば、売上高10億円でも1兆円の競合店に対抗できます。
――アークスの経営内容を教えて下さい。
横山 今年の9月1日を起点に中期計画、年商3000億円を達成する1000日計画というのを立てま した。「アークス1000日プラン」といいます。2012年5月が、ちょうど1000日で、11年度の決算が終わり、12年度に入るわけです。5月という のは株主総会です。その時にまで目標を達成する計画です。
――本州の企業から力を借りたいと、オファーがかかってきていませんか。
横山 かかってきています。中小企業で中堅どころの人たちというのはいま、方向性を求めています。
私どものやり方に興味を持たれて「アークスグループの成功例をご教授願いたい」とか「グループに入りたい」と言ってくるところがありましたが、そう簡単にはいきませんよ。
私としては、まずは道内でのシェアを30%まで高めなければと思っています。そうなれば年商5000億円近くになります。1000日プランを成し遂げ、3000億円を超すと、5000億円の方向性が見えるのではないでしょうか。
地域やお客さまのために尽くす産業を目指す。それには謙虚さや、思いやりの気持ちが必要で、こういうものを私は「愛」だと思う。これからも「愛」をもって仕事をしていきたいと思っています。

=ききて/坂井=