「情報を先取り、タブーに挑戦」を編集方針とし、生活者・企業経営者に
最新かつ有益な情報価値をご提供する、北海道の地域政治・経済誌

ロゴ

トップページ > インタビュー

Interview

このエントリーをはてなブックマークに追加

「民主党らしさを発揮した2010年度予算案」
マニフェストは4年間で実行すればいい
掲載号:2010年2月号

photo

横路 孝弘 衆院議長

三権の長のうち、2人が北海道から出ている。その1人が衆院議長の横路孝弘氏だ。議長や副議長は「政局は語ってはいけないが、政治は大いに語ってもいい」という。そこで日本の政治と民主党政権について大所高所からの意見を聞いた。

沖縄密約は日米で話し合うべき問題

――当時、横路さんが国会で追及した沖縄返還にかかわる密約の存在が明らかになりましたね。どんな感想を持っていますか。
横路  密約といっても中身はいろいろあるわけです。一番大きな問題になっているのは核の持ち込みで す。日本は核兵器を「つくらず」「持たず」「持ち込ませず」という非核3原則を国是としています。佐藤(栄作)さんはそれでノーベル平和賞をもらいまし た。ところが、今回の核持ち込み密約文書は当時のニクソン大統領と別室でサインしたものです。従来から日米関係では秘密裏に議論されてきた問題です。
第7艦隊を含めてアメリカ軍の艦船は核兵器を積んでいますから、国会では「日本に寄港する際にわざわざ核を外してくるのか」「持ち込んでいるのではないか」という追及がなされ、議論されてきたわけです。
私の父親(節雄=衆院議員)が国会で質問したことがあるんですよ。それが最近、アメリカの公文書館で発見されました。その中身は、大平(正芳)さんが外 務大臣の時に予算委員会の分科会(1964年2月)で、「こういうアメリカの艦船が入っている。これは通常、核を持っている艦船だ。外してから入港するこ とはあり得ないのではないか」と質問したところ、「核を搭載した艦船の立ち寄り、持ち込みは認めない」と大平さんが答弁した。それをみたアメリカ大使館の 職員が機密電報で、「日本の国会でこういう論議が行われた。非常に重要な問題だ。注意を喚起する」という電文を国務長官あてに送っていたのです。その電報 を見つけた人が私にコピーをプレゼントしてくれました。その電文には、「非常に正しい観点での質問で日本政府はたじたじだ」とも書かれていました。
今度、佐藤信二さん(栄作氏の次男で元国会議員)のところで発見された文書はもっと明確なものでしょう。ただ、問題なのはそれが本当に政府間で行われた ものなのか、それとも首脳間で簡単にメモしたものなのかということですね。アメリカではまだこの文書は発見されていません。しかし、佐藤さんは非核3原則 でノーベル平和賞をもらっているのに、これがばれたら大変だというので、どこにも出さないでしまっていたんでしょうね。貴重なる歴史的文書ですよ。
i2?  この扱いをどうするかということは、これから日米間で話し合っていかなければならない問題だと思います。沖縄の問題は結局のところ、在日米軍と日米安保 の運用の話なのです。戦後六十数年たっているわけですから、そろそろ地位協定の改定と米軍基地の縮小を、日本政府としてしっかり主張し、アメリカと協議す る時期にきていると思います。
民主党が誕生したときの基本方針は、「常時駐留なき安全保障」です。基地は提供します。何かあったときはいつでもお使いください。しかし、普段は日本で はなく、アメリカにお引き取りください。日本に駐留してきたときに必要な武器弾薬などはきちんと保管します。だから、保管する部隊などは残って結構です。
――鳩山由紀夫さんもそう言ってましたものね。
横路  当然、鳩山さんにもその思いはあると思います。小沢(一郎)さんが、「在日米軍は第7艦隊が あればいいんだ」と言っているのも、軍事的にアジア情勢をみると間違っていないんですよ。日本に外国からの侵略があった場合、防衛するのは日本の自衛隊な わけですよ。いま在日米軍がその防衛に関与することはないわけです。在日米軍はほとんど攻撃部隊です。海兵隊も三沢のF16もそうです。本当に困ったこと になったときはアメリカ本土の第1軍団傘下の部隊が来ることになっています。  戦後60年以上たっているのに、占領下と同じような状態が続いている国は世界にない。問題なのは地位協定です。日本にいるアメリカ兵のさまざまな行動に 対して、日本の法律を適応すべきだというのが、私たちの主張です。

辺野古案誕生のデタラメな理由

いまでも交通事故だとか小さな事件について日本政府は、公訴提起する権利を放棄しています。これが地位協定の秘密文書として存在しています。法務省がつ くったアメリカ軍兵士の犯罪にかかわる処理の仕方を書いた分厚い本に記されているのです。それがたまたま神田の古本屋で売りに出ているのを国会図書館が手 に入れた。それに気がついた法務省は「公開することはまかりならん」とストップをかけた。それでいま裁判をやってもめています。
――普天間の移転問題で、鳩山内閣は迷走しているような印象も受けますが…
横路  普天間問題で鳩山内閣の対応はどうも鈍いなんて言うけれど、自民党政権の下でも13年間も何も手が付けられなかった。もともとは普天間基地は撤去するはずだった。アメリカ兵の犯罪が相次ぐなど、「基地の痛みを沖縄県民に負担させすぎだ」ということになったからです。
i3?  だから、沖縄県民の負担軽減を目的に米軍基地の整理縮小・統合を協議する沖縄施設・区域日米特別行動委員会(SACO)が1995年11月に設立され、96年12月に普天間飛行場など11施設の全面、一部返還を盛り込んだ最終報告を発表したのです。
ところが、そこに米軍再編の話がアメリカから出てきて、普天間問題に絡んでしまった。この2つは本来は別々の問題です。また、橋本龍太郎首相時代に、沖 縄県知事が太田昌秀さんから稲嶺恵一さんに代わり、自民党を中心とする沖縄の政界から、「沖縄の経済が疲弊しているので、県内に新しい基地をつくろう」と いう声がでてきた。
一番地域経済へ効果があるのはどこかということで、辺野古になった。海に浮き滑走路を造って、海上基地をつくる計画が立てられた。鉄鋼業界はそれでいい ですが、土木の砂利の業界はメリットがない。そこで基地を岸に寄せて両方の業界に顔が立つようにしたといわれているのです。県内に移転するのなら、沖縄の 負担は軽減されません。
――日米関係は気まずくなりませんか。
横路  お互いに話し合って新しい関係を築いていけばいいんですよ。いまアメリカやヨーロッパが困っ ている問題が2つあります。イランとアフガニスタンです。この2カ国が一番信頼している国はどこかといえば、日本なんです。なぜか。「ほかの欧米各国は野 心があるが、日本は何の野心もない」と感じてくれているからです。日本外交というのはこういったことを軸にして、トータルに考え、沖縄問題でもアメリカと 交渉すればいいのです。
――鳩山内閣は民主党らしさを発揮していますか。
横路  大いに発揮してますよ。事業仕分けで予算編成の過程が公開されました。おカネの使い方も変わ りました。公共事業が減り、社会保障の予算が増えています。マニフェストも4年間かけて、しっかりと実行されると考えています。  日本の景気が悪いのは鳩山内閣のせいではなく、小泉構造改革のもたらしたものであることははっきりしています。地方の予算をカット、教育予算のカット、 社会保障予算のカットで、地方を疲弊させたからです。経済対策で自民党がやってきたのは公共事業、金融対策ですが、この2つとももう効き目は非常に小さく なっています。
i4?  そこで民主党は社会保障を充実することによって、個人への所得移転を進めることで、消費を高め、経済を良くしていこうとしています。それが「コンクリー トから人へ」と言っている中身です。教育と社会保障を増やすということで、診療報酬の改定、子ども手当、高校授業料の無償化などの政策を打ち出していま す。これでおカネが流れるようになれば、効果がわかると思います。だから、当面の課題は補正予算と本予算をできるだけ早く成立させ、民主党政権下で初めて 行われた予算に基づくおカネが地域に流れていくことが大事なのです。
日本の国のかたちの問題点は2つあります。1つは、
1940年体制と言われているもので、戦争を遂行するために日本政府は石炭にしても鉄にしても、あらゆる物資の生産をコントロールしました。生産物の配分 や価格もコントロールした。あらゆる業界に業界団体をつくり、役人を天下りさせた。それを通してコントロールしたのです。これが戦後も今日まで続いていま す。業界団体ができ、役人が天下り、自民党の政治家が関与するという構造が続いているのです。
だから日本の予算では、一般会計のうち6割がほかの会計への繰り入れです。空港特会、道路整備特会などです。3割は補助金と委託金を地方自治体や民間の 委託団体に出しています。つまり国の一般会計の9割は自分たちで仕事をしているのではなく、ほかにおカネを出して仕事をさせている構造なのです。そして多 くの公益法人があり、天下りと予算の受け皿になっているのです。そういう意味では本体はほとんど仕事をしていない。
鳩山内閣がいまやっていることの1つは、それを処理することです。税金の使い方をよりもっと正しくしようとしているわけです。

道路・ダムの予算配分は40年同じ

もう1つは、明治以来の日本の国の大きな問題点なのですが、国の官僚に技術者が多い。国土交通省も農林水産省も厚生労働省も、そのほかのほとんどの役所 も、技官、医官などの技術者が6割から7割います。しかも、人事が1本ではなく、事務系と技術系の人事は別です。こんなことは1つの組織の中でおかしい。
そのうえ、国交省でいうと、道路は道路、ダムはダム、下水は下水と、公共事業ごとに力を持った人間がいて、そこの人事を管理している。その上にOBがい て、OBの上には出身大学がある。明治以来、大学の講座とつながって技術者がたくさんいるのです。こんな先進国は世界中にほとんどありません。
全体の公共事業の中で、例えば道路、ダム、下水の配分はこの40年間変わっていません。なぜか。人(技術者)がいるからなんです。人を養うために見合った事業量を確保している。
いま公共事業をバッサリ削るというのは、その背後にある技術者集団が本当は直轄事業以外必要ないからなのです。中央政府で多くの技術者は、地方の事業の図面チェックをしています。公共事業を一括して地方に交付すれば、中央省庁も少ない人員でやれるのです。  この2つが続いている国のかたちに、鳩山内閣は手を付けようとしています。国民のみなさんにもっと中身を説明すれば、わかっていただけると思います。
――民主党や鳩山内閣は「小沢主導」と言われています。どう思いますか。
横路  内閣と党と議会のそれぞれの責任者がいるわけですから、それぞれの責任においてやっていると思います。まあ、小沢さんは政権政党の大幹事長なのですから、自重されることを期待しています。
(1月7日現在)

=ききて/酒井雅広=