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Interview

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「日本医療大学」で真のノーマライゼーションを
実現させる
掲載号:2013年12月

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対馬徳昭 つしま医療福祉グループ代表

 来春、札幌に新しい大学が開校する。その名も「日本医療大学」。旧つしま記念学園が経営している専門学校「日本福祉看護・診療放射線学院」の看護学科を発展・継承したものだ。なぜいま大学なのか。対馬徳昭代表に聞いた。

高度化・多様化する看護師の役割

――10月31日、文部科学省から正式に大学の設置許可証が渡されましたね。
対馬 長かった。外部の人からは「短期間でよく」などと言われますが、結構時間はかかっています。
――それにしても大学の名前がすごい。札幌でも北海道でもなく、日本です。
対馬 札幌も北海道も使われていますから。
――日本はなかった。
対馬 日本科学大学はあっても日本医療大学はなかった。もともとは「日本福祉医療大学」で申請していたんです。これまでやっている専門学校が「日本福祉学院」「日本福祉リハビリテーション学院」「日本福祉看護・診療放射線学院」で、全部「日本福祉」がつく。最初の日本福祉学院を開校してから25年、日本福祉の名は定着しているんですが、審査の途中で「看護のカリキュラムの中に福祉が入っている部分は少ないでしょう」という指摘を受けた。受験者に迷いが生じるので「福祉」を取れという指導なんです。最初はひどい指導だなと思いましたが、一晩寝て翌朝考えてみたら、いいねと。
――逆にすっきりした。
対馬 シンプル・イズ・ベスト。これを機に11月1日、先の専門学校3つを運営している学校法人名を変更しました。これまでは「つしま記念学園」でしたが、これからは法人名も「日本医療大学」。以前から法人名と大学名を統一しようと思っていました。
――学校法人日本医療大学が、大学と専門学校を運営すると。
対馬 そうです。あわせてグループ名も「ジャパンケアグループ」から「つしま医療福祉グループ」に変更しました。事業をスタートさせて今年がちょうど30年の節目。それにジャパンケアグループの中に「株式会社ジャパンケアサービス」はもう入っていない。知らない人にこれを説明するのが結構大変です。そんな2つの理由で、グループ名も11月1日に変更した。
i2――創業したジャパンケアサービスとのつながりは何もない。
対馬 2011年4月にジャパンケアサービスの会長兼CEOを退任しています。その際、最高顧問を3年やってくれという要請もありましたが、創業者が長くいるのは新しい組織のためにならない。それで辞退させてもらいました。昨年3月、メッセージのTOBで持ち株もすべて譲渡しています。だから本当に何もありません。
――つしま医療福祉グループの構成はどうなっているのですか。
対馬 8法人あります。先の学校法人のほか、社会福祉法人ノテ福祉会、一般財団法人つしま医療福祉研究財団、NPO法人ノテ自立支援サポートセンター、以下株式会社でアンデルセンコープ、アンデルセンフーズ、つしまファーム、つしまマネージメントです。
――話は戻りますが、大学構想はいつから。
対馬 5年前です。このとき看護のカリキュラムが大幅に変わりました。修業年限は3年で変化はないのですが、学ぶべきことのボリューム感でいうと4年制でもいいくらいの内容。とくに高齢者看護のところが厚くなりました。
――日本福祉看護・診療放射線学院の看護学科は4年制の専門学校です。それではダメだったんですか。
対馬 日進月歩の医療現場で、看護師に求められる役割は高度化・多様化しています。その一方で、看護師不足も深刻化している。国は看護基礎教育の充実を図るためカリキュラムを見直し、10年4月に施行された改正保健師助産師看護師法では、看護師の国家資格受験資格の筆頭に4年制大学卒業者が明記されました。こうした流れに対応するには、やはり大学化は必要だと決断しました。
――看護師の養成校は道内にたくさんあります。少子化が進む中で学生の確保は難しくありませんか。
対馬 日本医療大学は、保健師の資格を同時に付与するようなカリキュラムを導入しないし、助産師を選べるようにもなっていません。とにかく看護の基礎教育をきちんとやる。自ら学ぶ力を育てることを趣旨にすえ、幅広い視野で教養や高い倫理観、豊かな人間性を身につける。そして、高度医療やチーム医療にたずさわる専門性、協働性を備えた看護師を養成します。大学は質の高い人材を社会に送り出すという責任があります。1期生が卒業する4年後をめどに、認知症の専門的教育研究に取り組む大学院を開設したいと考えています。
――建学の精神は。
対馬 「ヒューマニティー(人間尊重、人間愛)に育まれる人間力」です。教育理念は「人間尊重を基盤とした人間力を備えた医療人の育成」になります。

福祉先進国デンマークに衝撃受ける

――注目の学長ですが。
対馬 札幌医科大学医療人育成センター長の傳野隆一教授です。来年3月に定年退官して、4月から学長に就いていただきます。
――旧知の方ですか。
対馬 そういうわけではありません。いろんなリサーチをしていく中で出会いました。医師ですが看護に大変理解があり、医学界の実績も申し分ありません。看護の学科は、医師が教えるところも多い。実際、看護の教育を医師としてやってきた経験もある。ぜひともと学長を引き受けていただきたいとお願いしました。
私は大学が1クール4年を終えたあと、現行の専門学校を条件が整い次第、大学に移行したい。医療系の学校が多いので、学長は医師でと考えていました。
――傳野さんは快諾を。
対馬 承諾書をいただき、札医大の学長から了解を得ています。
――教員は。
対馬 全部で28人ですが、来年4月に全員が集まるわけではありません。3年間かけて28人が集まる。
――校舎は。
対馬 看護の専門学校の校舎を活用しながら、大学の設備基準で不足している設備を改修したり増築したりしている最中です。大学の教員が入る研究棟は年内に完成の予定です。
――定員は。
対馬 80人です。
――専門学校から編入は。
対馬 ありません。
――看護の専門学校はなくなるんですね。
対馬 学生募集はしていません。来年春になると2、3、4年生が残り、全員が卒業するまで3年間かかることになります。
――人材育成を始めて25年ですか……。
対馬 きっかけは30年前に開設した特別養護老人ホーム「幸栄の里」です。開設の翌月には日本でもまだ数少ないデイサービスセンターをオープンさせました。通ってくる在宅の高齢者の話を聞くと、多くの人が住み慣れた家で暮らしたいと言いました。そのためには在宅でも暮らせるサービスと人材育成が必要だと考えるに至りました。
ちょうどそのころ、日本で初めてデンマークの先進的な高齢者ケア、在宅ケアが新聞で紹介されました。私は衝撃を受け、居ても立ってもいられず、その記事を書いた記者に東京に会いに行きました。ここに書いてあることは本当なのか。もちろん本当ですと。そして、その記者からデンマークの施設などを紹介してもらい、毎年訪問するようになりました。
緑豊かな北欧の国デンマークでは、人々が安心して年を重ね、高齢期においても生きがいと誇りを持って暮らしていました。それは「障害者が特別視されることなく、地域で生活する個人として、一般社会に参加し、行動できるようにするべきである」というノーマライゼーションの考え方に基づいたものです。年齢や障害の有無にかかわらず、誰もが自由で独立した社会的存在として尊重される。そんな高度で総合的な福祉制度が確立されているからでした。私はその思想を日本で実現するために、地域包括ケアシステムの構築に着手し、89年には介護福祉士養成の日本福祉学院を立ち上げました。
95年には在宅介護の現場からの声を受けて、病気や事故で中途障害をもった高齢者などの機能回復をサポートする理学療法士、作業療法士養成の専門学校、日本福祉リハビリテーション学院を開校。翌96年には医療ニーズの高い在宅高齢者をケアする看護師を養成するために日本福祉看護学院を開校しました。
――運営する専門学校の卒業者の数は。
対馬 5000人を超えています。福祉先進国を見てもやはり介護専門職の役割は大きいですし、脳血栓や脳梗塞で後遺症が残った高齢者のリハビリテーションのニーズは高い。在宅できちんとリハビリテーションができる理学療法士、作業療法士の養成が必要です。最終的に在宅の要は看護師です。だから看護師も養成しました。ただ学校を出てすぐ在宅はムリです。本学で看護の基礎をしっかり学んで、病院で臨床経験を積む。それから在宅の看護師になる。リハビリスタッフも同じです。だからすべては在宅のためなのです。

知的障害者の社会的自立を支援

――住み慣れた地域や家で暮らし続けたいという願いをかなえたいですね。
対馬 デンマークの高齢者ケアには3つの原則があります。「自己決定の尊重」「継続性の尊重」「残存能力の活用」です。介護が必要な状態になっても安心して生活できる社会づくりの拠点と、生活・教育・就労の複合的コミュニティーゾーンとしてつくったのが、大学を設置する札幌市清田区の「アンデルセン福祉村」です。デンマークの代表的な童話作家のアンデルセンにちなんで命名しました。
ここには、ノテ福祉会が運営する介護老人保健施設、通所リハビリテーション、特別養護老人ホーム、認知症対応型通所介護、ケアハウスなどの施設と、専門学校を含む教育施設が集積しています。看護の現場と教育の場が一体となっています。学生には実習の枠組みにとらわれず、昼休みなどに施設を訪れ、お年寄りと話をしたり、一緒に花の世話をしたり、自然な触れ合いの中から多くのことを学び取ってもらいたい。こうしたところが本学の特徴であり個性だと思います。
――学生に期待することは何でしょう。
対馬 つしま医療福祉グループは、高齢者介護はもとより、知的障がい者の社会的自立を支援するということもスローガンに掲げています。アンデルセン福祉村の中に施設入所者や利用者の食事をつくるセントラルキッチンを設け、ここで30人くらいの知的障がい者を雇用する準備も進めています。さらにはノテ福祉会が運営している各施設でも雇用を進めたい。結果として、3年以内に300人程度の知的障がい者を雇用したいと思っています。
私たちは真のノーマライゼーションを実現させるべく挑戦しています。学生たちには、高齢者や障がいを持つ人との日常があるキャンパスの中で、ノーマライゼーションのあり方を肌身で理解してほしい。そして、それを地域社会で実践できる人間として、巣立ってもらえたらと思います。

=ききて/鈴木正紀=