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Interview

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「政権協力はしない 政策・課題ごとに協力」
後期高齢者医療制度撤廃・派遣法の抜本的改正・農産物輸入に歯止め
掲載号:2009年2月

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志位和夫 共産党委員長

共産党が元気だ。新入党員が毎月800人から1000人も増えており、次期総選挙での躍進が必至だ。衆院で共産党が20議席以上占め、自公も民主も過半数を取れないという事態も予想される。政界のキャスチングボートを握る勢いの共産党の戦略とはいかに…

自公も民主も党利党略で国会運営

--------国会の現状を見て、どう思いますか。
志位  麻生自公政権は、冒頭の解散を狙ったわけですが、うまくいかなくなった。そこで今度は「政局より政策だ」「景気対策だ」と言いだし、何かやらなければな らないということで出してきたのが例の2兆円の給付金。しかし、国民の暮らしや景気対策を本当に真剣に考えたのではなく、選挙目当てなので、国民の皆さん にすぐ見抜かれ、ごうごうたる非難をあびた。最大の目玉にしようと思ったものが、最大の致命傷になった。加えて、総理の資質に関するさまざまな諸問題が出 て、内閣支持率は底なしになった。
麻生政権は1つの党略で動いています。政権の延命です。自民党の政権を何が何でも延命させようと、その一念だけで動いている。
もう一方の民主党も1つの党略で動いています。「政権よこせ」ということだけで動いている。そのため最初にとった戦略が、「何でも協力するから、早く解 散してくれ」という対応です。まず1次補正予算に賛成してしまった。1次補正予算には後期高齢者医療制度の存続を前提にした内容も入っているので、到底賛 成できないはずなのに、賛成して通してしまった。新テロ法についても、衆議院段階では「早く採決しろ」ということを主導しました。まったく政局優先で、非 常に党略的に対応してきた。これがうまくいかなくなると今度は一転して「対決するんだ」と言い始め、「2次補正案を出せ」「出したら、新テロ法の成立に事 実上協力する」ということを言い出した。これも道理の通らない党略的取引です。これも思い通りにいかず、最後に持ち出してきたのが雇用法案です。
 この法案自体の内容を見て私は、「一定の前向きの要素が不十分だけど入っている」「自民党とも共通する内容が入っている」「与野党でよく話し合えば少な くとも部分的には一致点は出てくるはずだ」と考え、そうした方向で各党に働きかけました。派遣切りや期間工切りなどで路頭に迷う人が出ているわけですか ら、こんなときに争っている場合ではなかった。
しかし、民主党は、自分で法案を出しておきながら参院で無茶な強行をやり、衆院で否決してくれといわんばかりの対応をしたのです。否決させることで、与 党の無責任さをあぶり出すという党略でした。国民の雇用不安、暮らしに対する不安を解決しようという立場ではありません。
私たちはずっと「派遣労働は人間使い捨ての労働」と批判してきました。私たちは失業された方の手当てはもちろん必要ですが、なんとしてもまず大量解雇をやめさせないといけないと考えています。
私自身、いすゞやトヨタ、日本経団連とも会談して、そのことを要求しました。麻生首相とも緊急の党首会談を行い、「大企業にお願いしているだけではだめだ。大企業を監督、指導して、大量首切りをやめさせなければならない」と主張しました。
私は今、日本には2つの政党があると思います。日本経団連あるいは大企業、財界にものが言える政党と、日本経団連あるいは大企業、財界からものを言われ る政党です。私たちは企業献金をもらっておりませんから、相手がトヨタだろうが、いすゞだろうが、キヤノンだろうが、日本経団連だろうが、国民の立場、労 働者の立場で、何でもものが言えます。しかし、率直に言って、自民党、民主党は日本経団連に通信簿をつけてもらい、献金を斡旋してもらっている身ですか ら、言えないですよね。逆に向こうからものを言われている。

労働と金融の規制緩和が不景気の元凶

--------景気対策はどうすべきだとお考えですか。
志位  今度の景気悪化の状況はこれまでと非常に違います。極めて急速にストンと落ちている。私は日本の経済の構造があまりにも外需頼みになっており、内需がずっと痛めつけられ冷え込んだままだったことに、原因があると思います。
家計消費は抑えつけられたまま、勤労者の所得は引き上げられず、逆に下がっていました。景気をまともにしようと思ったら、一部の輸出大企業を応援する政治から、庶民の家計、国民の暮らしを応援する政治に転換する必要があります。
具体的に言いますと、まず今の雇用破壊をやめさせるということが大事です。

私は党本部で昨日、トヨタの本社の幹部と1時間余り会談しました。トヨタは今度の決算で経常損益が1500億円の赤字になるということですが、内部留保 が13兆8000億円もあります。株主への配当は、中間配当だけで2078億円です。去年と同じ中間配当をやっています。
私が「内部留保を0.2%取り崩しただけで今のリストラ計画をやめさせられるじゃないですか」とただすと、トヨタの幹部は「そういう考えはありません」 「これは価値観の違いです」と言いました。  共同通信が大手の自動車、電機・精密機械メーカー16社の株主配当について配信しましたが、増配が16社中5社、配当維持が5社、未決定が6社です。減 配を決めているのが1社もないんですよ。従業員の方はどんどん切って、配当は減らさない、逆に増やしていく。これは、おかしい。資本主義としても堕落です よ。
--------アメリカ型ではこれが普通なんでしょうね。
志位でも、それをやった結果がGMじゃないですか。GMは技術開発のおカネまで削って配当に回した という。ものづくりの本業の方は赤字続きで、金融部門で稼いでこっちは黒字で、なんとか帳尻を合わせていた。ところが、金融部門が赤字になると経営が崩壊 してしまった。株主至上主義の行き着く先は、今のアメリカが示している。
--------まさに金融資本主義ここに極まれりですね。
志位  金融というものがあまりにも資本主義の中で肥大化しすぎてしまった実態は、世界的に大きな問題だと思います。
アメリカでどうしてああいうことが起こってしまったかといえば、80年代90年代ずっと一貫して金融の自由化、金融の規制緩和をやってきた。その最大の 象徴はグラス・スティーガル法を廃止してしまったことです。その結果、銀行業と証券業の境目がなくなり、金融機関のすべてが相互参入し、投機的な商売に乗 り出してきた。そこから大変な金融バブルが始まり、しかもサブプライムローンのようないかさま商売がはびこり、いくところまでいった結果の大破たんです。
--------日本も小泉改革で、証券と金融の垣根をなくし、派遣業法で労働のありかたの垣根をゆるくした。
志位  派遣について言いますと、1999年に派遣労働の原則自由化というのをやっているんですよ。これが最大の転換点だったと思うんですね。さらに小泉内閣の ときの04年、製造業にまで解禁した。この2つの自由化で、派遣労働がバッと広がったわけです。一方で労働の規制緩和でやった。それと同時並行で金融の規 制緩和をアメリカのモノマネでやった。日本でも証券と銀行の垣根をなくしていく。そして海外から投機マネーをどんどん呼び寄せた。そのために、いま東証の 取引の6~7割は外資です。その多くはヘッジファンドですよ。今の日本の証券市場は、そういう投機マネーに支配されてしまっている。そうすると市場の圧力 が働いて、今度は各企業にリストラを強制する力になっているわけです。
つまり証券市場から、リストラやった企業は株価は上がる、人減らしやった企業は株価が上がる、株の配当増やした企業は株価が上がる、減らした企業は下が る―という圧力がかかるわけですね。こうしてリストラ競争をあおりたてる金融的な圧力がかかっている。派遣切り、期間工切りというのは、金融の規制緩和と 表裏一体になっていると思います。 これからは規制緩和一辺倒からまともなルールをつくるという強化の方向に向かわないと、日本の経済としても成り立たな いと思います。

麻生政権は政治的、組織的にも解体状況

--------麻生内閣の命運はいつ尽きると読んでいますか。
志位  麻生内閣は政治的にも組織的にも解体状況だと思います。そういう意味では、命運はつきている。将棋で言えば詰んでいる。しかし、そうであっても政権にしがみつくという延命の党略だけは、まだ残っています。ですから、予測しても意味がないんですよ。
切羽詰まった問題は解決しながら、国民の苦しみをできるだけ取り除くという点で力を尽くしながら、解散に追いつめていくという姿勢が大事だと思います。
--------党勢が上げ潮ですね。
志位頑張りいかんでは今度はチャンスの選挙だと思っています。力を尽くし、知恵も尽くせば、前進、躍進が可能だと思っています。だが、「自民か民主か」と選択肢を狭める力も働きますから、決して甘いものではない。自分で風を起こし、力を尽くさなければ、いい結果は出ません。
--------共産党が衆院で20議席以上取れば、政局に与える影響度は大きいと思います。そのときはどんな姿勢で臨みますか。
志位  自民党とはもちろんですけど、民主党との間でも、私たちは政権の協力をする条件はありません。消費税の問題でもいずれは引き上げは避けられないという立 場に民主党は立っていますし、憲法の問題でも9条を変えるという立場に立っており、国の基本のところで立場が違いますから、「政権の協力をする条件がな い」とはっきり申し上げておきます。
その上でですが、私たちを前進、躍進させていただいたら、私たちの方から積極的な提言をいろいろやっていきたいと考えています。例えば、(1)後期高齢 者医療制度を撤廃するという提案を出す(2)働者派遣法を抜本改正し、使い捨て労働をなくす(3)農業の問題では外国からの食料の輸入にストップをかける という方向で、軌道転換を図る―など、具体的な提案をしていこうと思っています。
提案をし、協力できる政党とは協力していく。つまり課題ごと、政策ごとに協力できるものは協力する。しかも、私たちの方から大いに提案させていただいて、一致点で一緒にやろうじゃないかとアプローチしたい。
共産党を伸ばしてもらえたら、そういうふうに実際に政治を動かせる、いろんな場面が生まれてくると思っています。また、そういう対応をしていきたい。

=ききて/08年12月25日取材 酒井雅広=