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Interview

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「建設業は地域貢献産業。無駄な事業はない」掲載号:2009年7月

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岩田 圭剛 岩田地崎建設社長/北海道建設業協会会長

いずれ業界のトップに」と言われ、待望久しかった岩田圭剛氏が、北海道建設業協会の会長に就任した。建設業が不景気にあえいでいるときだけに、フレッシュな感覚で業界のかじ取りを行い、リーダーシップを発揮することが期待されている。

法令順守を業界で徹底していく

――5月21日、北海道建設業協会会長に就任しました。新会長の抱負を聞かせてください。
岩田 38年にわたって伊藤義郎前会長が業界発展にご尽力なされた後を、図らずも私が受け継ぐことになりました。伊藤前会長は建設業の位置づけを大きく高めた大功労者です。伊藤前会長をはじめ、先人のみなさまのご苦労にまず、感謝を申し上げたいと思います。
建設業が大変な状況に置かれている折、伊藤前会長に比べ私は力不足で、人脈、識見、経験、その他、本当に至らないところだらけです。会員のみなさんの意見 をよく聞いて、業界の果たしてきた役割を再確認しながら、業界の発展のみならず、地域の発展、ひいては北海道の発展のために尽くしていきたいと考えていま す。
――昨年11月末、伊藤さんが道建協の会長を辞任し、この間、盛永孝之副会長が会長代行を務めてきました。なぜ半年前にすぐ新会長を決めなかったのですか。
岩田 昨年、役員の改選があり、伊藤前会長が再選されたばかりでした。昨年11月時点ではまだ任期途中だということもあり、代行という形をとったわけです。しかし、ここにきて「業界の現状が厳しいのだから、きちんと会長を決めて対応すべきだ」という声が強くなりました。
――談合防止は業界が真っ先にやらなければならない課題だと思います。
岩田 私どもを含めて業界全体として猛省すべき問題だと真摯(しんし)に受け止めています。
このたび、北海道建設業協会では「行動憲章」を新しく改訂しました。その中で法令順守、コンプライアンスの徹底を第一にうたっています。
批判は甘んじて受けるしかありません。ただ、私としては「今後の私たちの行動を見ていてください。信頼回復に努め、必ずやみなさんの期待に応えます」という気持ちです。
i6 ――「建設業を取り巻く環境は非常に厳しい」ということですが、具体的にはどんな状況なのですか。
岩田 公共投資はピーク時に比べるとほぼ46%ぐらいにまで落ち込んでいます。今期は政府が大型の補正予算をつけてくれていますが、いずれにしてもマイナスシーリングという傾向には変わりがありません。
北海道は公共事業に依存している建設業者が多いものですから、大変に厳しい状況です。そのうえ、昨年来の世界同時不況の影響で、民間工事が本当にパッタリと止まってしまいました。
高向巖札幌商工会議所会頭(道商連会頭)からもよく「建設業は大変だ」とおっしゃっていただいてますが、まったくその通りなのです。特に地方は民間の工事はほとんどない状態ですから、なおさら苦しいと思います。
また、たまにある民間工事も、このような状況ですので過当競争になっています。
建設業者は経営努力を目いっぱいして、タオルを絞るにいいだけ絞っているので、「さらに絞れ」と言われても、限界を超えつつあるというのが現状です。
この半年間でわれわれの会員が約20社、倒産したり廃業してしまいました。

あまりにも厳しい建設業の現状

――本州業者との競争も厳しくなっていると思いますが、道建協として行政機関などに要望していることはありますか。
岩田 本州業者さんは大手が多いのですが、大手も競争が厳しいので、どんどん下の方に影響を及ぼしているのだと思います。ただ、ダンピングといいますか、過当競争を是正するための解決策はなかなか見つけられずにいます。
そうした中で私たちがお願いしているのは、入札の最低制限価格の底上げです。予定価格を大幅に下回るような最低制限価格が設定されているにもかかわらず、発注者サイドが決めた最低制限価格に入札価格が誘導、集中してしまっているのが現状です。
予定価格の80%から85%というのは、私たちの利益を度外視した数字です。ただ、仕事がないので仕方なく、そんな価格でも仕事を取りに行かざるを得ない状況なのです。
本当は90%でも厳しいのですが、最低限、予定価格の90%に最低制限価格を設定していただきたい。いま長崎県や佐賀県など8県が最低制限価格を90% に上げています。なぜそうなったかというと、落札価格が予定価格の90%を上回った工事と下回った工事を比較してみると、品質や事故率で違いがあると判断 したからです。あまりに低い価格での工事が増えると、そういった問題も発生しているというのが現実です。
――落札率が低くなればなるほど税金の無駄遣いが減り、談合もなくなり、いいことだらけだというのが、世間の風潮です。だが、それだけを追い求めたのでは、業者の体力を奪うし、技術力や安全安心が損なわれかねないということですね。

岩田 北海道で建設業にかかわる普通作業員の労務賃金は、全国47都道府県中47番目です。いろんな 職種があるのですが、ほとんどが四十何番目です。本当に低い金額になっています。作業員の方々にしわ寄せがいってしまっているわけです。建設業が決しても うかっているわけではありません。自分の足を食べているタコ足状態ですよ。  ――地元業者の育成・保護という観点も必要です。地元発注工事や工事金額によっては、地場優先ということがあってもいいと思います。
岩田 私たち建設業は社会資本整備の建設・維持を図り、地域の雇用を守り、地域の経済を支えてきたと自負しています。私たちは暴利をむさぼろうとしているわけではありません。適正な利益とまでは言いませんが、多少の利益をいただけなければ、そういったこともできなくなります。
札幌市の業者の中には「除雪はできない」というところが出ているようです。安全安心ということでいえば、災害時の対応など、地域の安全安心を担ってきた建設業者が、今後も担えるような経営環境をつくってほしいと思いますね。
正確に調べたわけではありませんが、道内の三十数カ所の商工会議所会頭が建設業者です。副会頭まで含めれば、ほぼすべての会議所の中枢に建設業者が入っています。建設業協会会長で観光協会会長という人もいます。地域の中で中核となって頑張っている業種なのです。
ところが、そんな余裕がだんだんなくなっているというのが残念ですね。
――受注量が半分くらいに減っている建設会社も少なくありません。それでよく生きていられますね。
岩田 変な話、「もうやめたい」と思っている方もいらっしゃいます。「いまなら資産を売却すれば、みなさんに迷惑をかけなくてすむ」ということですね。ところが、資産がなかなか売却できず、「やめるにやめられない」という話まで出ています。
――明るい話は…
岩田 う~ん、難しいなぁ…。  ――どうすれば、業績が上向きますか。
岩田 それがわかればねぇ…。
いま、入札に際して、地域の貢献度などの地域要件を入れた総合評価方式の拡充を行政にお願いしています。地域の安全安心を守ってきた地元の建設業者が、今後とも地域貢献を果たせるような仕組みをぜひとも考えていただきたいと思います。

文化、歴史をつくってきたと自負

――線引きが非常に難しいですね。下手すると談合だと言われかねないし、一方で地元業者の育成も図らなければならない。
岩田 公正公平な競争がもちろん大前提なわけです。ただ、地域の方々で公正な競争ができるような形がとれれば、と思っています。発注サイドの各地区の行政の方にも、かなりご努力をいただいています。
――道建協としては、コンプライアンスのほかに重要視していることはありますか。
岩田 行動憲章の中には法令順守に加え、品質の確保、人材・技術の継承、環境問

題への対応を重視するということが書いてあります。それらのことを基本にやっていきたいと思います。
もちろん品質はもっとも大事なことですし、安全にも力を入れていかなければなりません。
来年が改選なので、組織も含めていろいろ考えていきたいと思います。
――行政に注文は?
岩田 とにかく予算を確保していただきたい。大変厳しいですからね、道も国も…。
小泉構造改革以来、5%、5%と削られています。社会資本整備をもっと長期的な観点から考えることはできないのかなと思いますね。
今回の国の補正にしても、短期ではなく何年か続けていただかないと、本当の景気回復は難しいのではないでしょうか。
北海道は特に社会資本整備が遅れています。新幹線にしても、まだ来ていません。高速道路も全国の整備率が七十数%なのに、北海道は47%くらいです。函館までだってまだ通じていないんですよ。
観光にしてもそうですが、北海道の基幹産業である農業も、日本の農業基地としての役割を高めていくためには、建設業の役割が欠かせないと思います。
例えば、石狩川の護岸工事をしてきた結果、川床が下がり、石狩川水系の水位も下がったわけです。それで土壌改善が進み農地が広がったのです。
私たち建設業の仕事は、文化もつくっています。歴史もつくっているんです。それだけの仕事をしてきたんだという自負があります。「自信を持って仕事をしようよ」と言いたいですね。
――開発局の廃止論に対しては、どんな考えをもっていますか。
岩田 北海道には特殊な事情があるので、北海道開発計画が策定され、北海道特例などもあるわけです。 北海道の厳しさ、特殊性、そして日本の中における北海道の位置づけを考えているからだと思います。北海道が担うべき役割を果たしていくためには、やはり専 門の行政機関があってしかるべきです。
本州の政治家の中には「北海道の道路は広すぎる」とおっしゃる方がいますが、「冬を見てくださいよ」と言いたいですね。積雪で道路は狭くなるんですよ。 そういうことが考慮されずに、「日本全国一律」というのは果たして公平公正なのでしょうか。開発局がなぜ必要か、しっかりと訴えていくべきだと思います。
また、さまざまな課題についても、私たちの側からも積極的に提案し、発信していきたいと考えています。

=ききて/<取材日4月30日> 酒井雅弘=